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福田俊男

新たに始まる別世界「新4K8K衛星放送」
開始目前にした正念場へ全力で啓発に臨む
一般社団法人 放送サービス高度化推進協会
理事長
福田 俊男
Toshio Fukuda

「新4K8K衛星放送」の12月1日スタートまで3カ月を切った。周知活動や関連するビジネス活性化へのフックとするための一丸となった取り組みもまさに正念場を迎える。それらの推進役として重責を担うのが一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)。福田俊男理事長に放送開始直前の意気込みを聞く。
インタビュアー/竹内 純 Senka21編集長  写真/柴田のりよし

受信ガイドと番宣映像で
店頭からの発信力を強化

7月23日にBS右旋での4K8K試験放送が計画通り終了となりました。本放送のスタートもすぐそこまで迫っています。

福田完全移行となった地デジとは異なり、今回の「新4K8K衛星放送」は新たなチャンネルの追加となります。左旋放送が新規に加わることもあり、皆さんには「新しいことが始まる」と捉えていただくのが一番わかりやすいのではないかと思います。キャッチフレーズも、地デジ開始に向けたときには「さあ、テレビ新時代」を謳い取り組みましたが、今回は「別世界、はじまる」を掲げて新しさをアピールしています。

認定放送事業者は11社、右旋・左旋合わせて19ものチャンネルが新しく始まりますから、試験放送は極めて重要な位置づけにありました。NHKさんが一昨年8月から、当協会がNHKさんから設備を借りて同じ年の12月から開始し、本放送に向けた放送設備の導入、技術試験、運用訓練など、運用ノウハウの習熟などについて大きな知見と成果を得ることができました。試験放送でつくられたテストストリーム等はメーカー側にも配布され、メーカーでも様々な検証が行われています。

12月1日の放送開始までの期間にも、さらに、各放送局が個別に円滑な運用に向けた試験を実施しています。制作した4K、8Kの番組が実際のオンエアではどのように見えるのか。試験放送ではそうした検証も行われており、受け手側に魅力ある番組をお届けするための撮影の技法やノウハウについても知見を深めています。期間中には、NHKさんが力を入れる8Kパブリックビューイングなどの大きなイベントも催され、いろいろな形で多くの人に4K8Kに親しんでいただく機会を提供することができました。

これから、視聴者の方に実際にご家庭で見ていただくための周知活動がますます重要になってきます。4K対応テレビをすでにお持ちの方に対し、視聴するためには外付けチューナーなど準備が必要となること。左旋の受信に伴う設備改修などの周知。また、4K放送はすでにケーブルやCS、IPTVで始まっており、そうした番組を楽しまれている方にも誤解がないようにしなければなりません。イベントでの展開や各放送事業者に推進キャラクターの深田恭子さんのスポットを提供するなど、周知活動にさらに力を入れて進めて参ります。

10月には「CEATEC」、11月には「Inter BEE」といったイベントでの展示も予定されています。

福田開始を目前に控えたイベントとなり、対応機器を一堂に展示するなど力を入れてアピールしていきます。NHKさんでは今年度の予算は、4K8K放送の周知に力を入れていくことが予算採択の際の総務省からの付帯意見にもなっています。われわれもあらゆる露出のチャンスを逃さずに取り組んでいきたいと思います。

何より注目されるのは、やはりどんなコンテンツが見られるのかですね。

福田店頭では「新4K8K衛星放送ってどんな番組が見られるんですか」というお客様からの質問も増えてきています。そこで、各局でどのような番組の放送が予定されているのか、番組タイトルをまとめた「番組ガイド」のリーフレットを準備しており、CEATECを皮切りにお届けしていく予定です。なかでも特に重視しているのが家電店の売り場からの情報発信力の強化です。「番組ガイド」の配布はもちろん、各社の30秒番組PRを1本化した映像も用意し、量販店にお配りしています。CEATECでは改訂版の新しいバージョンをお届けできる予定で、さらに放送開始が近づくのに伴い、深田恭子さんのスポットとともに新しいバージョンを順次お届けして参ります。「こんなものが放送されますよ」ということを、店頭では番組ガイドと番宣映像の両方で確認することができるわけです。店頭ではまた、新しい放送を視聴するために必要な機器も同時に確認することができます。「4K放送ってキレイだな」「この番組を12月にやるんだ」とお客様に是非、目を止めていただき、勢いを加速していく効果的な周知施策として位置づけていきます。

新たな扉を開く「左旋」
スタートが何より肝心

冒頭のお言葉にもありましたが、新しく「左旋」の放送が開始されます。宅内設備の改修が必要となるなど、導入へのハードルが一段高くなり、今回の周知活動においても、もっとも理解いただくのが難しい点のひとつだと思われます。そのようななか、その支援策のひとつとなる中間周波数漏洩対策事業の補助金が一旦停止となっています。

福田左旋の仕組みそのものは右旋が反対になったものでそう難しいものではありません。しかし、はじめて導入されるものなので、やはり準備には手間と時間を要します。放送事業者のみなさんとも一緒になり、相当念入りな準備が必要という覚悟で臨んでいます。そこでは、どんなコンテンツが見られるかはもちろんですが、左旋の放送をご覧いただくためのアンテナ、ブースター、分配器などの受信インフラについての周知を徹底していかなければなりません。無限大とは言いませんが、チャンネルの数が大幅に増えるという意味で、新しいページを開いていくものですから、やはりスタートが肝心です。

左旋の受信インフラを整備する中間周波数漏洩対策事業につきましては、周知活動が奏功し、当初予算を超える申し込みをいただきました。特に集合住宅で受信に向けたチェックをしていただくと、対策が必要となるケースが少なくなく、当初の見積が少なかったのではないかとのご指摘もいただきました。改めて、皆さんの関心の高さを認識させられる想いです。現在、今年度予算での増額に向けた協議を総務省さんと行っているところで、9月末には集合住宅を含めた助成金が増額される予定で、再開のタイミングに合わせてさらに周知を進めていく予定です。

左旋対応の機器を作っているアンテナメーカーや最前線で販売する量販店や電器店、ホームセンターとの連携も重要になります。また、マンションの管理業協会には分譲マンションでの左旋対応や改修をお願い、提案して参ります。大規模マンションでは相当の額となることが予想され、用意周到な準備が不可欠となります。一方、視聴者の皆様には、ご自身のお住いにおける対応の確認をしていただきたいと思います。集合住宅であれば、管理組合に問い合わせて、確認をしていただくことになります。そうした作業にも急ピッチで取り組んでいます。

先日、スカパーとNTT東西さんが、フレッツ・テレビを用いて、宅内改修を必要とせずに左旋の視聴を可能にするシステムを発表しました。

福田それぞれの事業者がそれぞれの立場で努力をされている表れであり、頭の下がる思いです。大きな課題と指摘される宅内設備の改修を必要としない、視聴環境の新たな選択肢となります。新しい放送の普及の後押しをする、ケーブルなどを含めた再放送サービスにおける新しいアイデアとして大いに期待しています。左旋の放送を活用して、未開の荒野を拓いていくことを、今回のひとつの意義として強く認識しています。

問われるコンテンツ力
知恵比べの時代に突入

福田俊男
新たな活路を見いだす起点
お客様にリーチする力も必要

地デジ化からの買い替えのタイミングで800万〜900万台市場の回復が予想されていたテレビ市場ですが、スマートフォンの台頭や若者のテレビ離れなどで取り巻く環境は大きく変わり、今後は500万〜600万台で推移するのではないかとの声も多く聞かれます。テレビの楽しみ方が大きく変わっていく中で、新4K8K衛星放送の登場は、市場喚起の突破口を見いだす大きなきっかけとしても位置づけられるのではないでしょうか。

福田わたしたち放送関係者は、テレビ画面は放送する番組を映すためだけのものだとこれまでは考えてきました。しかし、通信をはじめとする間口が広がり、また、コンテンツを切り取って見るデバイスも増えるなど、取り巻く環境はあっという間に激変しました。放送される番組が、今ではかつて想像できなかったいろいろなスタイルで視聴されているわけで、決して番組の価値が低くなり、見られなくなってしまったわけではありません。テレビ各局はNHKやキー局を中心に、依然、コンテンツを供給する一大工場であり、年間およそ7000億円もの制作費が投じられています。

新4K8K衛星放送のスタートを、日本ケーブルテレビ連盟さんがビジネスチャンスと位置付け、新たな突破口を見いだそうとされているように、既成概念に捉われることなく、これから視聴者にどのようにリーチしていくのかがますます問われています。通信事業者やケーブル事業者との連携も重要になってきますし、一方では、お互いの知恵比べが試される時代が来たとも言えますね。

関連する業界が一丸となることで、まさに、市場活性化の呼び水としていかなければなりませんが、開始までいよいよ3ヵ月を切りました。

福田6月1日に「新4K8K衛星放送 開始半年前セレモニー」を開催しました。11の放送事業者のうち、NHKさんを除いて10社からは代表者として社長の皆さんが揃ってご出席され、壇上で開局に向けた意気込みを熱弁されました。会場をどっと沸かせるなど想像を超える盛り上がりが見られ、チャンスがあれば放送開始前に是非もう一度、皆さんが意気込みを示して、市場を奮い立たせていきたいですね。

12月1日の最終コーナーへ向けて、また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年が普及へのひとつの節目と目されています。意気込みをお願いします。

福田今回は全体が4Kへ移行するわけではなく、4K8Kという新しい放送が加わることになります。開始1年くらいをひとつの目安に、コンテンツをどれだけ魅力的なものに強化していくことができるか、その真価が常に問われることになります。主役はその重責を担った放送事業者の皆さん。また、スポーツイベントが認知を拡大していく上でも大変大きな効果があると実証されており、牽引役として、そうした場も有効に活用していきます。

総務省が発表した「4K8K推進のためのロードマップ」では、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の数多くの中継が4K・8Kで放送されている」「全国各地におけるパブリックビューイングにより、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の感動が会場のみでなく全国で共有されている」「4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K番組を楽しんでいる」と目指すべき姿が明記されています。果たして当初の目論見通りに進むのか、疑問視する声も聞こえてきますが、いざ始まってみれば意外にスムーズに進展するのではないかという期待も持っています。総務省も旗振り役として全力投球されています。とにかく気を緩めることなく、一歩一歩前へ進んでいきます。

JEITA(電子情報技術産業協会)、全国電機商業組合連合会、大手家電流通協会の各団体には、A-PABの賛助会員としても名を連ねていただき、まさに“我が事”として取り組んでいただいています。なかでも魅力あるコンテンツとともに、全体のインフラの中で重要な位置を占めるのが、お客様との接点となる店頭になります。先ほどお話しした他にも、ポスターなど多彩な販促物を用意しています。店頭における訴求力、説明力、販売力が、まさに今後の普及の大きな力になると確信しています。

◆PROFILE◆

福田 俊男 Toshio Fukuda
1947年7月1日生まれ。山口県出身。1970年3月 慶応義塾大学卒業。4月 株式会社日本教育テレビ(現 株式会社テレビ朝日ホールディングス)入社。報道局ニューヨーク支局長や常務取締役を経て、2010年4月 社団法人日本民間放送連盟(現 一般社団法人日本民間放送連盟)専務理事、2012年6月 社団法人デジタル放送推進協会(現 一般社団法人 放送サービス高度化推進協会 A-PAB)理事長(現)、2017年6月 株式会社テレビ朝日ホールディングス 特別顧問(現)、株式会社テレビ朝日 特別顧問(現)。好きな言葉は「明けない夜はない」。

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