五味俊明氏

“もっといい写真を撮りたい”というニーズに
E-P1という強力なメッセージで応える
オリンパス(株)
常務執行役員
オリンパスイメージング(株)
取締役
国内営業本部長
五味俊明氏
Toshiaki Gomi

市場成長が鈍り、新たな付加価値が求められて久しいデジタルカメラ市場に、新市場創造の可能性を感じさせる意欲機が投入された。従来とは一線を画す小型化、軽量化を果したレンズ交換式一眼カメラ“オリンパス・ペン”「E-P1」だ。業界に先駆けカメラのデジタル化に取り組んできたオリンパスが、満を持して打ち出す「マイクロ一眼」が持つ可能性や狙い、新市場創造にかける意気込みについて、同社国内営業本部長の五味氏に話を伺った。

デジタル化により拡がる
新しい世界を追求する

E-P1で発信する
強力なメッセージ

── 御社はデジタル専用設計となる「フォーサーズシステム規格」を業界に先駆け策定し、デジタル化が進展する市場においてライブビュー機能やボディ内手ブレ補正機構など、現在のデジタルカメラのスタンダードとなるエポックな機能にいち早く取り組まれてきました。

そして昨年には、フォーサーズシステム規格の拡張規格である「マイクロフォーサーズシステム規格」を発表し、この度満を持して第一号機となるオリンパス・ペン「E-P1」を発売されました。非常に革新的な意欲作ですね。

五味氏五味ありがとうございます。お陰様で発売前の予約も私達の予想を大きく上回り、発売後も多くのご販売店で品薄状態となるなど、順調な滑り出しに強い手応えを感じています。

オリンパスはデジタル一眼市場においては後発メーカーでありチャレンジャーです。エポックな機能にいち早く挑戦し、お客様に提供してきたという自負はありますが、先行メーカーの後塵を拝すという状況からなかなか抜け出せずにいたというのが正直なところです。そのような状況下で、市場やお客様に対して私達ができることは何なのかを改めて考え、私達の役割や市場におけるポジショニングをもう一度見つめ直した結果生まれたのがE-P1であり、非常に嬉しい思いです。

現在、ワールドワイドにおけるデジタルカメラの年間出荷台数は、コモディティ化の進展により若干停滞気味とはいえコンパクトデジタルカメラで1億台。好調といわれて久しいデジタル一眼はその10分の1程度の1000万台ほどの規模で推移しています。デジタル一眼は、かつてフィルム時代の一眼市場と同様に、ある一定のラインまでは成長を遂げたものの、そのラインをなかなか超えることができないでいます。私達はこれをなんらかの形で打開していかなければ、今以上の市場成長は望めないと感じていました。

一方、コンパクトデジタルカメラを購入されているお客様の中には、“もっといい写真を撮りたい”との強い欲求を持ち、デジタル一眼の購入を検討している方が相当数いらっしゃいます。しかもその数は決して少なくはなく、弊社の実施した調査によれば、コンパクトデジタルカメラ市場全体のおよそ20%にも上っています。このステップアップを望まれている潜在需要を顕在化することが市場の活性化につながることは明確ですが、ここで壁となりデジタル一眼の購入をためらわせているのが“大きい”“重い”“難しそう”というデジタル一眼の持つイメージです。そこで私達はまずこのマイナスイメージを払拭しなければならないとの考えから、マイクロフォーサーズシステム規格の立ち上げ、およびE-P1のコンセプト作りをスタートさせたのです。

マイクロフォーサーズシステム規格により得られるメリットは数多くありますが、カメラ本体の大幅な小型化、軽量化はその最たるものです。第一号機となるE-P1はそのメリットを最大限に追求したものでなければならない。規格の発表から商品の発売まで、お客様を長らくお待たせしてしまいましたが、非常に小型で軽量、簡単な操作でキレイな写真が撮れるカメラに仕上げることができました。オリンパスらしいコンセプトを創り上げるためには、発売の遅れも止む無しと判断させていただき、練りに練ったことで完成度の高い商品に仕上げることができたと自負しています。これまでデジタル一眼の購入に踏み切れなかったお客様に対して、強力なメッセージとなったのではないかと感じております。

デジタル化の追求が
差別化につながる

── 昨年来の不況の中、デジタルカメラ市場も微減傾向が続いており、デジタル一眼へのステップアップを望む、いわゆる“デジタル一眼予備軍”の取り込みについては、各社が積極的な姿勢を示しています。そのような中で、マイクロフォーサーズシステムやE-P1が持つ決定的な差別化はどこにあるとお考えですか。

五味まず、マイクロフォーサーズシステムの大きな特長の一つに、ミラーレス構造であることが挙げられます。それは、つまりフランジバック(マウントから撮像素子までの距離)を従来に比べ非常に短く設計できるということ。ミラーボックスが不可欠なこれまでの一眼の構造では、フランジバックを短くすることは物理的に不可能であり、ここにこだわっている限りはカメラボディの大幅な小型化、軽量化は難しいのです。E-P1の最大の差異化は、マイクロフォーサーズシステム規格の恩恵により実現したこのミラーレス構造の採用にあります。従来とは一線を画す小型化、軽量化を実現したこの新たな取り組みや、打ち出したコンセプトはお客様にもわかりやすく、ラインナップ拡充を図る上でも効いてくる部分だと考えています。今後しばらくは、マイクロフォーサーズシステムを採用しているオリンパスとパナソニックさんの非常にとがった、特長的な魅力となっていくと感じています。

カメラはこれまでの長い歴史の中で切磋琢磨を続け、機械としての完成度を高めてきました。それが昨今のデジタル化の大きな波により変わりつつあります。フィルムがCCDやCMOSに置き換わり、オートフォーカスもイメージャーAFにより電子化され、E-P1ではミラーボックスそのものがなくなりました。つまりデジタル化の進展につれ、機械的に動くメカニカルな部分が少なくなっているということです。この傾向は今後より一層進んでいくと感じています。例えばシャッターユニットですが、コンパクトデジタルカメラではデジタル一眼を凌ぐような高速なシャッタースピードがすでに実現されており、デジタル一眼においても今後どのように発展していくのかは未知数です。

このように、デジタル化により新たに生まれる世界は確実に拡がっているのです。私達はその新しい世界において、どのようなアプリケーションが実現できるのか、どのような楽しみ方をお客様に提供できるのかを研究し、追求していくことこそが使命だと感じております。

デジタル専用規格として策定したフォーサーズシステム規格はもちろんですが、新たに策定したマイクロフォーサーズシステム規格や、今回発売したE-P1で示した新しい方向性をどんどん追いかけていきたい。延いてはそれがオリンパス独自の差別化につながると確信しています。

── より多くのお客様に新たな世界を知っていただくためにも、ラインナップの構築にも期待がかかります。また市場を拡げるという意味合いからもフォーサーズシステム規格、マイクロフォーサーズ規格への賛同メーカーの活動や、新たなメーカーの参画にも注目が集まるところですね。

五味氏五味そうですね。まだ第一号機を出したばかりではありますが、おっしゃる通りラインナップの拡充は強く意識しています。E-P1のように規格を発表してから長いことお待たせするようなことはなく、なるべく早い時期にラインナップを揃えていくことは今後の課題の一つ。すでにラインナップを組まれ展開されているパナソニックさんと力を合わせ、システム群としての充実も図り、新たな市場を創っていきたいと意気込んでいます。

一方、賛同メーカー様等についてですが、フォーサーズシステム規格、マイクロフォーサーズシステム規格ともに、オープン規格ですので、全てのメーカー様にお声かけはしていますが、まずは私達が両規格により得られるメリットを具体例として示していかなければなりません。今回E-P1を発売し、ようやくその環境が整ったと考えていますので、これからの取り組みにご期待いただきたいと思います。

また、レンズ専業メーカーでは、シグマさんがフォーサーズシステム規格に賛同されており、既に商品開発に取り組まれていますが、サードパーティーから発売されているマウントアダプターが充実しているのも両規格の大きな魅力です。他社マウントのレンズや、オールドレンズなど、お客様がすでにお持ちのレンズ資産を無駄にすることなくご活用いただけることは大きなメリットになっていますし、お客様の幅を拡げるという面からも積極的にアピールしていきたい部分です。

新ジャンルの創造により
市場の発展を目指す

── パナソニックはマイクロフォーサーズシステムに準拠した「DMCーGH1」を、“ハイビジョン一眼”として打ち出しており、動画撮影機能をアピールしています。一方、御社はE―P1を“マイクロ一眼”と呼称し、動画撮影機能をあえてアピールせず小型、軽量化を全面に押し出しています。両社のスタンスは若干異なるように感じますがいかがでしょうか。

五味私達にとっての動画の位置付けは静止画の延長線上にあるもの。デジタル一眼に動画撮影機能が搭載された際、実際にテレビにつないで撮影された動画を見たのですが、本当に美しい画が撮れることに驚きました。もちろん動画撮影機能は今後のデジタル一眼にとって、なくてはならない機能になると考えていますし、実際にそうなっていくことは市場動向からも明白です。

しかし、これはあくまで個人的な意見ですが、静止画一枚が持つ力は非常に大きく、それを見る人に対し与えるインパクトは侮れないものがあります。動画撮影機能は付加価値の一つとしてとして今後も積極的に追及していきますが、私達はカメラメーカーとして一枚の静止画の持つ力にこだわり大切にし続けたいと考えています。そういった意味でも当社とパナソニックさんは両社の個性を活かした動画対応となっているのではないでしょうか。

── わかりました。それでは御社の今後の展開とE-P1への意気込み、販売店様へのメッセージをいただけますでしょうか。

五味E-P1はコンパクトデジタルカメラからのステップアップ需要を拡げる大きな可能性を持った商品です。弊社がWEBサイトを通じ把握できた予約購入者の分析結果では、全体の3分の1は新規のお客様となっており、E-P1で発信した私達のメッセージは、従来のオリンパスファンや、フォーサーズシステムのユーザー、デジタル一眼を本格的にお使いになっているカメラファンの方に加えて、新たなお客様にも確実に届いています。販促活動についても、一部の販売店様では発売前にデモ機を置かせていただき、実機にじっくりと触れ、吟味していただいた上で予約をいただくなど、新しい取り組みを色々と試すことができました。これまでのオリンパスにはない新たな取り組みに、営業の現場も自信をつけています。

しかしながらE-P1が本当に狙う、デジタル一眼の購入を見送りコンパクトデジタルカメラを購入されているお客様にご購入いただけているかというと、それはまだまだこれからです。今後、販売チャネルの開拓や、価格的な面でのニーズに応えられる上下の商品展開、裾野を拡げるという点からカメラ専門誌に加え、一般誌やMONO誌への出稿など、従来にはない販促活動を積極的に取り組んで参りますので、お力添えいただければ幸いです。

デジタル一眼市場で戦っていると、どうしてもマーケットシェアの話は避けては通れませんが、E-P1の企画、開発にあたってはあえて一切考えるのをやめました。それはE-P1は全く新しいカテゴリーの商品であり、他社様のカメラをお使いのお客様にも訴求できる力を持っているとの考えからです。前述したマウントアダプターがいい例ですが、E-P1の強みはプラスアルファのカメラ、サブカメラとしても魅力を発揮するカメラであるということ。レンズやアクセサリーなど、メーカーの枠に捉われずに拡がる世界を提供していきたい。現在市場に集まっているお客様を各社で取り合うのではなく、そのパイを拡げることにより2000万台、3000万台のデジタル一眼市場を切り開いていきたいと思います。

◆PROFILE◆

五味俊明氏 Toshiaki Gomi
1979年オリンパス光学工業(株)入社。2000年4月映像営業部長に就任。2001年4月DI企画営業部長。2002年5月映像販売本部長。2004年4月映像販売本部長兼映像企画本部長。2004年6月オリンパス(株)執行役員に就任。2004年10月オリンパスイメージング(株) 取締役 映像販売本部長兼映像企画本部長。2005年6月オリンパスイメージング(株) 取締役 営業本部長。2007年6月オリンパス鰹務執行役員(現任)。2009年7月オリンパスイメージング(株)取締役国内営業本部長に就任(現任)