空間の有効活用を可能にするスリムタイプスピーカー

プラズマディスプレイや液晶プロジェクターなど比較的コンパクトなホームシアターシステムを考慮に入れたスピーカーが求められている。空間の有効活用ということになれば、スタイルはスリムになってこざるを得ない。このシリーズはそうしたニーズに応えるラインナップである。

フロントのSC-T3Lはトールボーイ、センターのC3LとリアのA3Lはコンパクトなブックシェルフだが、使用ユニットはいずれも同一だ。5.7cmグライファイバーコーン2基によるダブルウーファーとドーム型スーパートゥイーターによる2ウェイ仮想同軸構成。2つのウーファーをプッシュプルで駆動する独自のP.P.D.D.方式を採用している。キャビネットはいずれも幅70mmのアルミ製。剛性を高めながらスリムなスタイルを実現する。さらに上下をMDF材でサンドイッチしたハイブリッド構成だ。サブウーファーは特殊ゴムエッジ採用の16cmコーン。台形の形状として強度と定在波の排除を確実にしている。なおここでは同じくデノンのDVDプレーヤーDVD-770SDとAVレシーバーAVR-770SDを試聴に使用した。

シャープで反応の鋭敏な出方である。「ハリー・ポッターと秘密の部屋」はセリフにくせがなく比較的穏やかに表現され、ニュートラルな感触を保っている。室内の小さな音がきめ細かく捉えられ、街頭の雑踏なども丹念に拾い上げた印象だ。金属音などが鋭利で曇った音調がない。低域も明快に決まって力感がある。レンジの広い鳴り方と言える。「ロード・オブ・ザ・リング〜旅の仲間」では自然音の出方が繊細な響きを含んでいる。セリフはことさら肉厚な感触を強調せず濁りを排除する。地下空間の響きは遠近感がよく、場面の緊迫感が高い。ワイドレンジな再現性を生かして使いこなしたいシステムである。

（text：井上千岳）