近頃オーディオに力を注いでいるソニーからシンプルでオーソドックスなSACD/CDプレーヤーが登場した。ことさら特別な機能はなく、シンプルであることが最大の特徴だ。回路はもちろん最新のICを搭載している。実測重量は7.5kg。内部は簡素で空間が目立つ。最新のICは集積化が進んでいるので、部品点数は驚くほど少ないのだ。メインの基板は10cm角程度と小さい。電源は従来のトランス方式。トランスのサイズは大きくはないが、贅沢にもアナログとデジタルで別系統になっている。

音質の印象を述べると、オーケストラはやや薄味で重量感はもう一歩だが、高弦の切れが良く低弦の音程もクリアだ。エコーの広がりが明確で抜けがいい。シンバルは繊細できめが細かく優しい鳴り方。ブラスの厚みはもう少し欲しいところ。音像は僅かに滲むが音場のつながりはいい。ジャズは透明感がありハイエンドは特にさわやかだ。脂っこさや熱気といった要素は不得手。古いジャズもヘルシーメニュー風に鳴る。バイブのアタックは角が鋭くカチッとした印象。バスドラの力感はもう一歩だが、芯があり鮮明な低音。ピアノのスケール感は控えめで小振りな表現になる。右手のアタックは硬質。左手はやや薄い。エコーの広がりが良く音場は広い。切れがある中にも優しさを感じさせる。ボーカルはやや距離感があり優しさを感じさせる。ピアニッシモのそこはかとない雰囲気がいい。中高域の清涼感とハイエンドの繊細感が持ち味である。小編成クラシックや女声ボーカルに向いている。

（市川二朗／「AVレビュー（2007年1月号）」より転載）