「スーパー・アルティメイト・アッテネーター」を採用

ラックスマンの最高級コントロールアンプは「パワーアンプドライバー」と位置付けられている。単に信号をセレクトし、パワーアンプに適した信号レベルにする、というだけでなく、パワーアンプをダイナミックに駆動するという意識が明瞭なのである。

第一の特徴は「スーパー・アルティメイト・アッテネーター」を採用したことだ。最多でも1回路2個の抵抗しか経由しないLパッド型の4連抵抗切り替え式だ。抵抗は超ローノイズのカスタム品を計456個使用。アンプ系はCSSC、つまり全段直結ピュアコンプリメンタリー構成のシングルスタガーサーキットを採用。これは裸状態において超広帯域であり、位相補正の少ない回路になっているということ。ODβ回路は、直流域を安定させるDCサーボを使わずに、自然な音色バランスと躍動感を確保するようにしたNFB方式だ。

出力段はコントロールアンプなのに2段ダーリントン接続して、裸の出力インピーダンスを低く（大きな電流出力を取り出し可能に）している。ハイイナーシャ電源は、瞬時電流供給能力に優れた大容量コンデンサーにより、定電圧部のNFB量を減らしたもの。従来のC-10所有者に対して、フラットアンプ基板とアッテネーターの交換によるバージョンアップサービスを実施しているのも朗報だ。

見掛けの解像感を訴求する方向ではなく、減衰音の表情が濃密だ。それに大型の円盤オルゴールのような音源では、真鍮色の波紋が見えるほど俊敏な応答性を見せる。肉声は体躯の響きが影のように寄り添い、タンゴのような滋味のある歌声にほの暗い情念が刻まれる様子が生き写し風。実直のようでいて懐の深い音だ。必要ならば強い筋力を誇示するのだが、官能美に耽溺するような成熟の世界こそ愛でたい。

（text：吉田伊織）