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注目モデルテストレポート

安価ながら豊かな音場表現力と高い完成度を持つスピーカー

文/岩井喬プロフィール

製品写真

アンドリュー・ジョーンズがチューニングを行ったハイCPモデル

パイオニアから発売された小型2ウェイスピーカー「S-CN301-LR」は、非常にコンパクトかつリーズナブルなブックシェルフモデルであるが、EXシリーズやTADのスピーカー開発で辣腕をふるっている同社(USA)のチーフスピーカーエンジニア、アンドリュー・ジョーンズによるチューニング、ネットワーク回路設計が実施された、本格志向のスピーカーである。2chピュアオーディオ用のエントリー向けプリメインアンプ「A-30」「A-10」と組み合わせての使用にも最適だ。

小型2ウェイスピーカー S-CN301-LR
新製法採用で木目の揃った高級感ある外観を実現

ユニットはエッジ幅を最適化して40kHzまでの広帯域再生を可能とさせたワイドロールエッジ2cmドームトゥイーターと、ロングストローク仕様の高強度グラスファイバー振動板による10cmウーファーによる構成で、背面側にバスレフポート(ポート両端にはフレア形状のリングを配して濁りのない低域再生を行う)が設けられている。

トゥイーター振動板の周囲にはショートホーン形状のダイレクターが用いられており、安定した定位再現力とクロスオーバー帯域でのスムーズな音の繋がりを実現させている。

特に注目したいのはアンドリュー・ジョーンズの経験や知識に裏付けられた高品位ネットワークである。カスタムチューニングの高品位フィルムコンデンサーのほか、磁性材によるひずみを排除し、音抜けの良い優れた空間再生能力を発揮する空芯チョークコイルを採用しているのである。この価格帯の製品でウーファー側回路に空芯コイルを用いた製品は多くなく、C/Pの高さがうかがえるポイントといえるだろう。

さらにエンクロージャーについても見ていこう。引き締まったブラックフェイスを形成するフロントバッフル板には21mmの肉厚MDFを用いることでユニットからの不要振動を抑え込んでいる。そしてもう一つ本機の目玉となるキャビネットの仕上げであるが、天然木を規則的に貼り合わせて塗装を行うことで均一な木目柄を作り出すという新製法を用いており、低価格機であることを感じさせない高級感あるフィニッシュを獲得している。

この新製法によって、使用する木材の幅が広がるとともに、木目が揃わないことによる模様のばらつきを抑え、選別の手間や材料の廃棄といったデメリットを解消し、エコにも役立てているという。スピーカーターミナルについても端子板を用いず、剛性や振動面、音質面の観点から、裏板に直接固定できる金メッキ真鍮製の直出し仕様を採用した。

■「S-CN301-LR」の音質をチェック!

今回は「A-30」と「A-10」に「S-CN301-LR」を組み合わせて試聴を行うが、まずはこのプリメインアンプ2機種に「N-50」を接続し、ハイレゾ音源との相性についても確認してみようと思う。なお再生デバイスはS/Nの高いダイレクトなフラッシュメモリー環境を選択。「N-50」フロントパネルにWAVデータを収録したUSBメモリーを接続して試聴を行った。

はじめに「A-10」と「N-50」「S-CN301-LR」との組み合わせである。クラシックではすっきりとした爽快な空間の広がりと、適度に引き締めたローエンドによって見通しの良いオーケストラが展開。管弦楽器の粒立ちも潤い良く細やかに感じられる。ジャズではS/Nの良い音場へかっちりとした輪郭を持つピアノや澄んだ響きを見せるチェロが居並び、女性ボーカルは素直でのびやかに描かれる。口元にはほのかなハリが見られ、ウェットな艶も感じさせる。

ロックでは全体に音像が引き締まり、エレキのリフもエッジが立つ。ハイレゾ音源(96kHz/24bit)では一層クリアな描写となり、ボーカルや楽器の質感に滑らかさが加わる。音場の余韻に瑞々しい響きも感じられ、入門機らしからぬ空間表現の高さを見ることができた。

続いて「N-50」に「A-30」と「S-CN301-LR」を組み合わせたサウンドであるが、「A-10」に較べ中低域の豊かさが増し、重心が下がるとともにアタックの力強さもより向上している。クラシックでは管弦楽器のふくよかさが加わり、倍音成分の艶やハリも程良く乗ってホールトーンもより華やかで豊かなものとなっている。ティンパニの打感はキレと伸びやかさのバランスが良く、オーケストラの広がり、奥行きともにクラスを超える豊かな音場を感じることができた。S/Nや解像感も高めで、ピアニッシモの微細な粒立ちの表現も捉えやすくなっている。

ジャズにおいてはピアノのハーモニクスが豊かに響き、リッチな余韻感が得られるとともに、厚みのあるベースのゆったりとした安定感あるサウンドを楽しめる。低域のレンジ感も拡大しているようで、一段沈み込んだ胴鳴りはプレイニュアンスもより深く捉えられる。女性ボーカルの音像は肉付きが良くなり、口元のハリも一層艶やかで輪郭も滑らかだ。ロックではリズム隊のヌケ良いアタックとエレキの太く粘りのあるディストーションサウンドが分厚く描かれ、ライドシンバルのクリアさも一際輝いている。

ハイレゾ音源においては、音場の奥行き感が一層深まり、音像のリアルな存在感が引き立ってくる。ボーカルの肉付きはナチュラルなふくよかさを持ち、ピアノは芯の強さとともに滑らかなリリースのリッチさをより際立たせている。粒子の細かい余韻のグラデーションもリアルで、密度感を程良く感じられるサウンドとなっている。

■バランス良く高レベルな再生能力。初めてのオーディオシステムにうってつけ

最後にアンバランスではあるが、高級SACDプレーヤーである「アキュフェーズDP-600」を接続し、SACDのサウンドも確認してみた。「A-10」環境では広がりや高さ方向に対しても自然な空間表現が得られるほか、楽器の輪郭は一層引き締まってカリッとした腰高な描写となる。余韻の表現もストレートなもので、付帯感のない鮮やかで透明感の高いサウンドだ。低域はキレ良く程良い弾力を見せ、バランス良い伸びやかな音色を聴かせてくれた。

そして「A-30」環境においてであるが、こちらは密度の高いサウンド傾向となり、広がりの表現はスムーズで、余韻のグラデーションは一層深みを増す。声の厚みや管弦楽器の重厚さ、弦楽器の倍音成分の豊かさにおいても自然なリアルさとして捉えることができる。ボトムがふっくらとする分、ややボーカルの口元は広がる傾向にはあるが、すっきりと抜け良く伸びる音色の素直さは数段上のクラスのアンプやスピーカーで感じられるレベルのものであると感じる。

「A-30」「A-10」のオーソドックスながら高解像度で豊かな音楽再生を実現する設計思想の素晴らしさも存分に味わうことができたが、入門クラスながらも空芯コイルなどの奢った作りとした「S-CN301-LR」の音場表現力の豊かさ、完成度の高さに驚かされた。ともに初めてのオーディオ環境構築にはうってつけのハイC/Pモデルといえるだろう。

スペック

【SPEC】●形式:位相反転式ブックシェルフ型 ●スピーカー構成:2ウェイ方式 ウーファー:10 cmコーン型 トゥイーター:2.0 cmドーム型 ●インピーダンス:6 Ω ●再生周波数帯域:45 Hz 〜 40 kHz ●最大入力:100 W (JEITA) ●外形寸法(1本):135W× 230H× 220Dm ●質量(1本):2.9 kg

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