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「サウンドサイネージ」という新概念を創出

ヤマハ、“ささやく広告”を実現する超薄型平面スピーカー「TLFスピーカー」を製品化

公開日 2011/07/05 17:55 ファイル・ウェブ編集部
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ヤマハ(株)は、薄さ1.5mmでフレキシブルに形状を変形できる平面型スピーカー「TLFスピーカー」を商品化する。本日行われた記者発表会では、同社のサウンドネットワーク事業部 事業部長 長谷川豊氏と、同TLF推進室 企画担当部長 室井國昌氏が登壇し、同製品の開発概要を説明した。

TLFスピーカーを使用した説明図


長谷川豊氏

室井國昌氏
TLFスピーカーは、デジタルサイネージにおける「音声による情報提供」を可能とするため、ヤマハが提唱する「サウンドサイネージ(音響看板)」という概念を実現するスピーカー。昨年のCEATECでは、ボーカロイドをフィーチャーした“音の出るポスター”として公開していた(関連ニュース)。“TLF”という名称は、「Thin(薄い)」「Light(軽い)」「Flexible(柔軟)」という、同スピーカーが持つ各特性の頭文字から付けられている。


TLFスピーカー本体

付属の専用アンプモジュール
「“サウンドサイネージ”は、私たちが提唱する新しい概念で、ひとことで言えば“音声による的確な情報提供媒体”」と語る長谷川氏。これまで、デジタルサイネージは文字や映像など視覚に訴える利用法が中心で、音声はあまり注目されていなかった。長谷川氏はその理由として「従来の音響技術では情報伝達の範囲が限られたり、聴覚の特性を活かす利用技術がなかったことが挙げられる」とし、「今回ヤマハの長年にわたる音響技術の研究成果を応用して、そういった課題をクリアした」と説明。「私たちはサウンドサイネージという新しい電子概念をこの業界に作り上げたい。今回のTLFスピーカーは、私たちが音に着目して展開する電子媒体の第一弾」と述べ、さらなる展開の広がりも示唆した。


「サウンドサイネージ」はヤマハの登録商標

TLFスピーカーの特長
室井氏は「TLFスピーカー実現の大きなポイントは、静電スピーカーを採用したこと」と説明。静電スピーカーは、2枚の電極の間に電圧を掛けると互いに引き合う力が発生する、静電力の原理でスピーカーを駆動するもの。これにより約1.5mmという薄さと軽量性、省電力性を実現した。また一般的なダイナミックスピーカーは音を球面波で発するが、TLFスピーカーは平面波で発するため、音が拡散せず、指向性と遠達性の高さを両立できるという。


室井氏はTLFスピーカー実現のポイントの1つを「静電スピーカーを採用したこと」と説明

スピーカー表面全体から平面波として音が発せられるので、指向性が高い
同氏は、「従来技術では、サイネージから音を発すると周囲に広がって騒音になり、遠くなるほど聴こえにくくなるという課題があった。TLFスピーカーは、狙ったゾーンに最小限で音声を届けることができ、遠達性があるため遠くても聴こえる。また、環境音に溶け込まず自分に対して囁かれているように聴こえる点も特徴で、デジタルサイネージに適した特性がある」と説明する。なお、再生周波数帯域は400Hz〜4kHzとのこと。


狙ったゾーンに最小限で音を届けることができ、遠達性にも優れている

室井氏とTLFスピーカー
形状を折り曲げることができるフレキシブルさもポイントで、様々なかたちのサイネージに対応できる。室井氏は「ポスターを貼った場所の裏にラジカセを置いて音を出す、というのではなく、視覚情報と音声情報が同じところから出てくるのがポイント。また、壁のある場所では反射音としても耳に届く。視覚と聴覚が協調したインパクトのある訴求が行える」と述べた。

なお、本製品のビジネスモデルについて長谷川氏は、「ヤマハは楽器やAV機器などのコンシューマー製品を主に手がけてきたが、今回はビジネス向けの製品である点が大きく異なる。ヤマハブランドのついた完成品を販売店で売るのではなく、パートナー企業様向けに提供し、最終的に必要なソリューションをご自身で完成させていただくものだ」と説明。印刷業界、販促業界、コンテンツプロバイダー等と協議しながら、音声による的確な情報提供をコアとしたサウンドサイネージビジネスを推進していくとし、10月上旬に105,000円(税込)でパートナー企業向けに100セットのサンプル出荷を予定している。発売は12月になる見込みだという。


TLFスピーカーのビジネスモデル概略図

これまでにアサヒ飲料や日テレなどの企業と提携し、サウンドサイネージの実証実験を行ってきた。写真はアサヒ飲料の「十六茶」
スピーカーは一般的なポスターサイズのA0版とB1版を用意し、専用のアンプモジュールとオプション延長ケーブルが付属するセットになる。なお、メーカー保証は1年を考えており、基本的には屋内使用を想定した製品であるという。

なお、同社説明員によれば、今回はデジタルサイネージ向けの製品として展開するが、様子を見てコンシューマー向け製品への技術展開も考えたい意向とのことだ。

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