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液晶“テレビ”と“パネル”で世界一目指す ー シャープ・ソニー両社長が会見

2008/02/26
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握手する中鉢社長と片山社長

両者が並んで会見を行った
既にお伝えしたように、ソニー(株)とシャープ(株)は、シャープが大阪府堺市に建設中の第10世代マザーガラスを採用する液晶パネル工場を分社化し、合弁会社を設立することで、両社の意向を確認する「意向確認覚書」を交わしたと発表した。

本日夜、ソニー代表執行役社長の中鉢良治氏、シャープ代表取締役社長の片山幹雄氏が共同会見を行った。中鉢氏は液晶テレビセットで世界一を目指す考えを表明し、一方の片山氏は、液晶パネルメーカーとして世界一となる意気込みを強調した。

■シャープは液晶パネルで世界ナンバーワンを目指す


シャープ代表取締役社長の片山幹雄氏
はじめに、片山社長が今回の協議について説明を行った。現時点で決まっていることとして、2009年4月を目途に両社出資の合弁会社を設立すること、合弁会社の出資比率はシャープが66%、ソニーが34%とすること、新工場の稼働時期は2009年度中を目指すこと、また液晶パネルやモジュールは出資比率に応じて両社に供給することなどを説明した。また、工場の稼働時期については「稼働時期を可能な限り前倒ししたい」と述べ、当初計画の2010年3月よりも早まる可能性を示唆した。

片山氏はまた、堺新工場について「液晶産業が新世代に入ったことを象徴する工場」と表現。「素材メーカーも入居することで最先端のパネルやモジュールを生産していく。世界有数のテレビメーカーであるソニーさんと組むことで、画質、コスト競争力が一段と進化し、日本の液晶産業そのものの強化につながる。世界ナンバーワンを目指していきたい」と述べた。

自社ブランドの液晶テレビについては、「ブラウン管から液晶テレビへの置き換え、大画面化など、常にトレンドの先鞭を付けてきた。今後、当社は液晶の新たなステージを迎える」とし、「世界の隅々にまでAQUOSを浸透させていく。ソニーと良い意味で競い合い、切磋琢磨していけると考えている」と語った。

■液晶テレビセットメーカーとして世界一を目指すソニー


ソニー代表執行役社長の中鉢良治氏
続いて、ソニーの中鉢氏が今回の協議について説明。「ソニーの今後の成長を支える製品群の中で、最大の鍵が液晶テレビであり、今後の成長のためにはサプライチェーンの進化、パネルの安定調達が最重要課題だった。今回の合意は、ソニーが世界一のテレビメーカーを目指すのに重要な布石となる」と指摘。

また、BRAVIAについては「2004年の導入から世界中でビジネスが伸張しており、2007年度は1,000万台の出荷を見込んでいる。液晶テレビの世界需要については、2008年度が1億台に成長すると予想している。このような環境の中、ソニーとして、2008年度に全世界で15〜20%のシェア目指していく」と述べ、大幅な販売増を宣言。

ソニーが韓国サムスン電子と共同で運営している合弁会社、S-LCDについては、「S-LCDでは第7世代、第8世代のパネルを生産しており、今後もS-LCDを液晶モジュールの基幹供給源と位置づける」と説明。その上で、「液晶テレビの市場変化は激しく、もう一つの基幹供給源を確保すべく検討を進めていた。そして今回、戦略的なパートナーとしてシャープさんを選ばせていただいた。シャープの堺工場では、当初は40インチクラスを中心に製造するが、さらなる大型サイズも手掛けていきたい」とし、「今回の合意で、S-LCDと合わせて二つの供給源を確保でき、安定した調達体制を構築できた。世界一の液晶テレビメーカーを目指していく」と述べた。

以下、会見で行われた主な質疑応答を紹介する。

Q:(シャープに)堺工場は当初、3,800億円の投資を予定していたが、今回の合弁での投資分担はどういう配分になるのか。また、合弁に至った理由として、投資負担の軽減という考えはあったか。
A:(片山)確かに、堺工場の投資額は、土地代を含め3,800億円と発表していた。投資額の配分は、土地代を除いた金額で行うが、具体的な金額はこれから協議していく。投資負担の軽減については、今後さらなる投資が必要になる可能性もあり、シャープ1社でやるよりも、ソニーさんと一緒にやる方が投資をしやすくなると考えた。

Q:(ソニーに)第10世代工場について、サムスンからS-LCDで一緒にやろうと声がかかったらどうするか。
A:(中鉢)第10世代については、需要とバランスの関係で判断していきたい。

Q:今回の合意に至った背景としては、投資負担の軽減という理由が一番大きかったのか?
A:(片山)ソニーは世界の液晶テレビのトップブランドメーカーと認識している。投資負担の軽減も大きいが、安定して工場を動かせるメリットも意識した。

Q:(シャープに)昨年末、東芝とのパネル供給契約を交わしているが、今回の合意で、シャープへの供給量は3分の2になる。この問題はどうなるのか。
A:東芝さんとの契約は、堺工場に限定したものではない。亀山工場からの供給も含まれている。堺工場に限定すると、3分の2の供給となるので、その中から東芝さんに供給させていただく。

Q:(シャープに)AQUOSの最大のセールスポイントは優秀なパネルだと思うが、これを外販することで、AQUOSの販売に悪影響を与えるのではないか。
A:(片山)確かに、同じ土俵で戦うのは非常に厳しいと認識している。画像エンジンなど高画質化技術で差別化していきたい。

Q:(ソニーに)中鉢社長は日頃から内製化比率を上げたいと発言しているが、今回供給を受けるのはパネルモジュール。パネルのみの供給を受ける可能性はあるのか。
A:(中鉢)確かに、当初供給を受けるのはパネルモジュール。ただし、将来的にパネルだけを調達してモジュール化することも考えている。

Q:(ソニーに)テレビで赤字を多く出したこともあったが、エレクトロニクスの営業利益5%は達成できるか。また、テレビの損益は改善するか。
A:(中鉢)エレキについては、4%の営業利益を計画しており、5%という計画は立てていない。4%については達成できると思う。テレビの損益については、BRAVIAの差異化を進めることや、サプライチェーンの強化などで改善していきたい。

Q:S-LCDは、ソニーとサムスンが共同開発することでいい製品を作っているが、今回の協業をもうすこし進め、共同開発まで行く可能性はあるか。
A:(中鉢)今回の合弁会社は、パネル製造を目的とした会社であり、原則としては、パネル開発は新会社からシャープに委託するかたちになると思う。ただし将来的には、部材の共同開発などを行う可能性があるだろうと考えている。

Q:どちらから今回の話を呼びかけたのか、いつ頃から話が進んだのか。
A:(片山)昨年の秋くらいから両社で話を始めた。シャープとしてもパートナーが欲しかったということがあった。両社のトップ同士が会う機会があり、話が進んだ。

Q:(ソニーに)現在、BRAVIAは70V型が最大サイズだが、堺工場から供給を受けたら、もっと大きなサイズのモデルも発売する可能性はあるか。
A:(中鉢)当初は40型を中心に製造していく。もちろん大型化も可能なので、市場動向を見ながら検討したい。

Q:(ソニーに)垂直統合的に行う事業領域と、そうでないものの線引きはどうなっているのか。
A:(中鉢)ビデオカメラなどは垂直統合の典型。水平分業の典型はVAIOで、製造もEMSなどを使っている。ソニーではこのほか、3つの生産スタイルを持っている。テレビについては、たしかにパネルの供給は受けるが、映像処理技術や商品企画、ネット接続機能などで付加価値を提供できると考えいてる。

Q:両社は液晶テレビでガチンコで戦っている。本当にWIN-WINの関係になるのか?
A:(片山)二社でやることでコスト的にプラスになる。新たな技術開発が行われることで、コスト競争力を高めていけると信じている。

Q:液晶テレビメーカーとパネルメーカーの利益が相反することはないか?
A:(中鉢)これまで、S-LCDと2004年から事業を一緒にやってきた。一方でソニーとサムスンは、世界中でシェア争いを続けている。だがS-LCDは利益を上げているし、ソニーも、少なくとも第3四半期の液晶ビジネスは利益を上げている。テレビメーカーとパネルメーカーの利益は両立しうるものと考えている。

Q:(ソニーへ)サムスンと第10世代工場を造ることは考えなかったのか?
A:(中鉢)コメントを差し控えたい。

Q:(シャープへ)2対1という出資比率は今後変わらないのか。
A:(片山)契約により、出資比率は変わらない。ほかの出資者を募ることも無い。

Q:気が早いが、第10世代工場の次の工場について、両社が組む可能性はあるか。
A:(片山)現在は10世代工場の立ち上げで精一杯。次のことは考えていない。

(Phile-web編集部)

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