THX Select2に準拠 フロントサラウンドにも対応
ケンウッドのAVアンプにはデジタル増幅タイプと従来型のアナログタイプという二通りのラインがあるが、これは後者の最新モデルで、KRF-X9080Dの上級機である。ルーカスフィルムのTHX
Select2に準拠。スピーカーのオートセットアップと音場による最適なイコライジングを行うアダプティブEQを搭載する。アナログデバイゼズ社製32bitDSPによって高精度な信号処理を実現。電源回路と増幅回路をシンプルにまた密接に結びつけるアドバンスト・グランドラインの採用で、ノイズを低減している。また、精密なフロントサラウンドを提供するドルビーバーチャルスピーカーを採用している。
ごくオーソドックスな音調というとどこか詰まらない印象があるが、本当はそうではない。あらゆる音が正しく均等に鳴って初めてそういう再現が可能なわけで、その意味で本機は極めて正統的。映画の音を過不足なく、しかも自然な抑揚で描き出す。音色にくせがなく、どんな場面でもナチュラルな感触を失わない。『HERO』の戦場のシーンは武器や兵士の雑踏音がきめ細かく分解されてわかりやすく、矢の飛来音は鋭さに細かなニュアンスを含んでいる。『マスター・アンド・コマンダー』は遠くの人声や波の音などの遠近感がよく、砲撃音も十分な力感とスピードを持つ。高品位な音質である。
価格からいえばエントリーレベルになるのだろうが、実力はそれ以上の価格帯にも匹敵する。音の出方が自然で立ち上がりも速く、エネルギーにも不足がない。解像度が高く、透明な厚みにも優れた音調である。中級クラスのスピーカーと組み合わせるのにも好適だ。