IFA2018はここに注目! ー メッセ・ベルリン代表に聞く今年の見所

今年も8月31日から、世界最大級のエレクトロニクスショーであるIFAがドイツの首都・ベルリンで開催される。映像・音響、スマート家電にIoTの最も先端を行く製品やサービスに加えて、今年は初めてオートモーティブがIFAの展示分野に加わることになった。また、6月にはIFAの姉妹イベントとなる「CE Week」がアメリカのニューヨークで開催された。

過去10年間を振り返ってみても右肩上がりの成長を続けるIFAが新たな取り組みに挑戦し続ける理由を、IFAを主催するメッセ・ベルリン社のイエンズ・ハイテッカー氏とディリク・コスロフスキー氏に訊ねた。 (TEXT/山本 敦)

メッセ・ベルリン
IFAグローバル統轄本部長 イエンズ・ハイテッカー氏(写真右)
IFAグローバル・シニア・エグゼクティブ・マネージャー ディリク・コスロフスキー氏(写真左)

日本のブランドや先進技術に世界が再び注目している

今年の4月にイタリア・ローマで320人を超えるジャーナリストを集めて開催されたIFAグローバル・プレスカンファレンスには、日本からシャープが出展。欧州・ロシア市場向けに商品として発売する70型の8K/HDR液晶モニター「LV-70X500E」を披露。シャープの復活を強くアピールした。

2018年のIFAグローバルプレスカンファレンスにシャープが出展。欧州で発売する8K液晶モニター「LV-70X500E」を展示し、今後の8K戦略を堂々とアピールした

日本の技術は先進的でありながら、その向かう方向がグローバルスタンダードとズレていた頃には、“ガラパゴス化している”と揶揄されていたこともあった。やがてエレクトロニクス市場の競争が国際化してくると、日本のブランドの経験値不足が弱点として露呈して困難な時期を迎えることになった。

「グローバルな競争を闘い抜くためには、国際基準に合った戦略を立てることとネットワークの構築、それを活かすことが大事」とハイテッカー氏は指摘する。シャープはフォンハイという良きパートナーを迎えたことで、グローバル市場での競争力が飛躍的に高まったという印象をハイテッカー氏は持っているようだ。

シャープは昨年、久しぶりにIFAに大きなブースを構えて8KやIoTの戦略商品とサービスの全容を紹介して大いに注目を浴びた。「このシャープの成功が多くの日本の企業がIFAに目を向けるきっかけになってほしい」とハイテッカー氏は期待感を寄せている。

IFAのグローバル戦略を語るハイテッカー氏

今年のグローバル・プレスカンファレンスでもシャープが徹底してアピールした「8K戦略」はヨーロッパの市場にも響くのだろうか。ハイテッカー氏の見解を訊ねた。

「近い将来には特に、映像製作現場で8K解像度のマスター制作環境が整ってくると言われています。シャープがディスプレイだけでなく、カムコーダーも含めて8K対応のソリューションを揃えてきたことを頼もしく感じている欧州のプロフェッショナルも多いと思います。

8Kはコンテンツがないからしばらくは普及しないだろうという冷めた見方もありますが、むかしと違って今のテレビは放送だけでなく、パッケージソフトにPC、動画配信など様々なコンテンツに出会える窓です。これから様々な視聴形態の8Kコンテンツが増えてくると楽観的に考えてもいいのではないでしょうか」

IFAに新しく加わる自動車のテーマ展示「Shift Automotive」の内容とは

昨年のIFAから始まった、エレクトロニクスの先進テクノロジーとスタートアップのショーケース「IFA NEXT」は、今年も同じ「Hall 26」で開催を予定している。今年はさらにその規模が大きくなり、日本の注目企業も出展しそうだ。

IFAの本開催期間の終盤となる4日・5日には、メッセ・ベルリンにとって初めての試みとなる自動車をテーマにしたイベント「Shift Automotive」が開催される。会場はメッセ・ベルリンの「Hall 26」だ。

Shift Automotiveは毎年春にスイスのジュネーブで開催される「サロン・アンテルナショナル・ド・ロト(通称:ジュネーブモーターショー)」と共同企画されたイベントだ。IFAとジュネーブモーターショーの時期に合わせて年2回開催される。

「自動車産業のパートナーから“IFAに出展したい”という強い声は以前から多くいただいてきました。ところが、会場の展示スペースがこのところは常にオーバーブッキングだったことや、自動車そのものをIFAの会場に展示することはコンセプトにそぐわないと考えていたため、何か相応しい形で加わってもらえる機会をずっと模索してきました。

セミナーとパネルセッションが中心の『IFA+SUMMIT』には、2014年のスタート当初からオートモーティブ業界のトップリーダーに多く参加をいただいていました。ジュネーブモーターショーの関係者の方たちと知り合い、ディスカッションを深めてきたことで、今回最良のタイミングでShift Automotiveのキックオフが実現できることになりそうです」

IFAに初めてオートモーティブの出展分野が加わる。Shift Automotiveは9月4日・5日の2日間にわたって開催を予定する

IFAはこれまでにもコンシューマーエレクトロニクス中心の視点から、コネクテッドデバイスの最新トピックスを柔軟に取り込んできた。いま、インターネットを介してつながる自動車とエレクトロニクスの将来に、業界から熱い視線が投げかけられている。

「Shift Audomotiveでは様々な視点の中から、特にコンシューマーエレクトロニクスとの関連性でオートモーティブの最新事情に鋭く切り込んでいきたいと思います。Shift Automotiveは会期がIFAの後半に差し掛かるため、ジャーナリストの方々には先にコンシューマーエレクトロニクスやホームアプライアンスの話題を整理した後に、頭をリフレッシュして自動車の出展に注目してもらえるのでは」とハイテッカー氏は期待感を語っている。

実際にはどんな出展社がShift Automotiveに集まるのだろうか。コスロフスキー氏は「まだ発表することは控えたい」としながら、イメージとしては昨年のIFA NEXTがそうだったように、大手企業とスタートアップが境界線を取り払って1つの会場(Hall 26)の中で賑やかにブースを構えることになりそうだ。展示の“見せ方”にも一工夫を凝らしたいとコスロフスキー氏が説明を付け加える。

「例えば自動運転の技術はテクノロジーや法整備の観点に話題が集まりがちですが、同時に社会貢献やドライバーの安全、家庭内のコンシューマーエレクトロニクスとの連携など、様々な視点から現状を知ることが大切です。様々な視点からオートモーティブのトレンドを俯瞰できるイベントにしたいですね」

2019年に向けて展示スペースを増築中

なお自動車以外で、今年のIFAにはどんなブランドの参加が決まっているのだろうか。ハイテッカー氏は「春の時点で私が把握している限り、昨年のIFAに出展した大手企業は参加を継続していただけそうです」と語っている。

メッセ・ベルリンの敷地内には現在、新しい多機能・多目的ホールをHall 27の近くに建設する計画も進んでいる。このスペースは展示と会議の両方に活用される予定だ。完成すれば約10,000平方メートルのスペースが追加されることになる。オープンは2019年5月を予定する。ハイテッカー氏は他のホールとの動線も意識しながら、Hall 27を来場者にとって訪問しやすい展示スペースにしたいと意気込む。

今年もIFA NEXTは規模を拡大して開催される予定。日本のあの有名な企業も参加するかもしれない

CE ChinaとCE Weekを開催する理由

ハイテッカー氏とコスロフスキー氏はともに、「今後もIFAのグローバル化に力を注いでいきたい」と口を揃える。3年前に中国のシンセンでスタートしたコンシューマーエレクトロニクスショーの「CE China」に続いて、今年は6月にアメリカのニューヨークで新しいイベント「CE Week」を立ち上げる。

IFAがエレクトロニクス市場に対する強い影響力を持つことは、IFAに参加する出展社がグローバル市場にチャレンジする際のバックアップに一役買うためでもあるとコスロフスキー氏が強調している。

「IFAをグローバルなイベントとしてさらにステータスを高めていくためには、世界のメジャーなエレクトロニクス市場でより一層の存在感を打ち出す必要があります。いま欧州のほか、世界の代表的な市場は中国を中心としたアジアとアメリカです。それぞれの地域性に根ざしたノウハウを取得して、ネットワークを築くためには現地でイベントを開催するべきと考えました。

3年前にCE Chinaをスタートして、中国の流通・小売業界とも深い関係を持つことができたことで、IFAの中国・アジア市場への影響力は次第に高まっています。CE Weekについてもアメリカ市場で同様の効果を生むことを期待しています。まずはBtoB向けのエレクトロニクスショーとして、厳選されたブランドとアメリカの流通・小売業界との結びつきを固めます」

筆者は5月上旬にシンセンで開催されたCE Chinaを取材した際に、ハイテッカー氏に中国市場の手応えを訊く機会を得た。ハイテッカー氏は元もと、世界最大規模を誇る中国の市場はいま「中流階級」の成長によって、エレクトロニクスに限らず、生活を豊かにするアイテムへの消費意欲が一段と旺盛になりつつあると語っている。また、人々のクオリティに対する目線が一段と厳しくなっていることから、欧米や日本のプレミアムブランドがCE Chinaを足がかりに中国市場で躍進を遂げる最良のタイミングがいま訪れていると指摘する。

6月にはアメリカで姉妹イベント「CE Week」を初開催。欧州のIFA、中国のCE ChinaとともにグローバルプラットフォームとしてのIFAの魅力を出展社、トレードビジターへ訴えていく

CE Chinaでは今年から新たに「IFA Retail University」という企画展示をスタートさせた。CE Chinaに出展するブランドやスタートアップを10社以上募り、1日の中で密度の濃いプレゼンテーションを交代制で実施した。新しい試みの狙いをコスロフスキー氏が次のように語っている。

「出展社にとっては流通・小売業界からの来場者とダイレクトなつながりを持てる最良の機会となります。一方でトレードビジターの方々にとっても、CE Chinaの出展社に関する深い情報を集めて、可能性を肌で感じるためにはIFA Retail Universityへの参加がとても有効であると考えています。

今年のCE Chinaでは、中国で最大規模といわれる大手家電小売り企業のSuning(蘇寧電器)グループの協力が得られたことで、IFA Retail Universityに多くの来場者が足を運んでくれました。この経験から培ったノウハウとネットワークを強力なツールとして、他のショーにも活かしていくことが、私たちのこれからの課題です」

グローバルローンチのサポートはIFAにおまかせ

IFA Retail Universityにはドイツの若いスタートアップ「Yamazoki(ヤマゾキ)」も参加していた。彼らにとってはCE Chinaに出展する大きな狙いのひとつは、アジアの販売代理店を獲得することだったという。CE Chinaのホールにブースを構え、IFA Retail Universityでプレゼンテーションの機会を得たことが、彼らに良い成果をもたらしたようだ。今後日本のスタートアップもCE Chinaというプラットフォームを活かして世界進出を実現できるのではないだろうか。ハイテッカー氏も日本からの参加者に期待を寄せている。

2018年のCE Chinaから初めて開催されたIFA Retail Universityは大盛況。CE Chinaに出展する企業・スタートアップによる熱のこもったピッチセッションが1日のあいだに凝縮して開催された

「IFAやCE Chinaはスタートアップの皆様にも、それぞれのビジネスサイズに合わせて、最も効率よく出展の効果を最大化できるツールを用意しています。それぞれのイベントには世界各国から大勢のジャーナリストが集まってくるので、情報発信の場としても有効に活用いただけるのではないでしょうか」

出展社にとっては今後IFAだけでなく、姉妹イベントであるCE ChinaとCE Weekもパッケージにして商品やサービスをアピールできる機会もほしくなるところだ。コスロフスキー氏は“出展パッケージ”の展開についてもその可能性を示唆している。

「私たちも3つのショウに出展いただく効果をうまくシンクロさせながら、ご提案する方法を考えたいと思っています。あるいは4月にジャーナリストを集めて開催するIFA GPCも提案の中に加えても良いかもしれないですね」コスロフスキー氏は各々のニーズに合わせたカスタマイズ提案も組み込みながら、IFAに多くの魅力的な展示を集めたいとした。実現すれば毎年IFAに足を運ぶ来場者、ジャーナリストにとっても関心をそそる話題のひとつになりそうだ。


◆IFAに関する問い合わせ先
メッセ・ベルリン日本代表部
TEL/03-6426-5628
FAX/03-6426-5629
Mail/info@messe-berlin.jp

 

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