躍動したスタートアップと日本企業 − メッセ・ベルリン、ハイテッカー氏が語る「IFA後の期待感」

世界最大のコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA2017」が9月1日から6日まで、ドイツ・ベルリンで開催された。来年のIFAに向けた手応えなどを、イベントを主催するメッセ・ベルリン社のIFAグローバル統括本部長 イエンズ・ハイテッカー氏にうかがった。

メッセ・ベルリン社 IFAグローバル統括本部長 イエンズ・ハイテッカー氏

かつてないほどのグローバルステージに成長を遂げたIFA

まずはIFA2017の実績について統計データの速報が届いたので、昨年の実績と照らし合わせながらお伝えしよう。

ビジター総数は昨年の24万人超から、今年は25.3万人にまた大きく伸びた。本会場であるメッセ・ベルリンの敷地外で実施されるBtoB向けのトレードショー「IFA Global Markets」を拡張したこともあり、実質展示面積については15万平米からおよそ16万平米に拡大した。全展示スペースの空き枠が申込みの受付開始とほぼ同時に埋まってしまうほど、出展者からの引き合いは強いという。

今年のIFAもまた来場者数が大きく伸びた

出展社数は、レポートの数字を見ると昨年の1,800以上からほぼ変わっていないが、その理由は「展示のクオリティ」も重視しながら募集を行っているからだろう。とはいえ、今年は「IFA Global Markets」のスペース拡大や、新しい試みとなる特別企画展示ホール「IFA NEXT」もスタートしているので、最終的な統計数字は上方修正されるかもしれない。時期をあらためてハイテッカー氏に確認を取りたいと思う。

会期中の取引額は、昨年の約45億ユーロから、今年は47億ユーロ(約6,200億円)に伸びるものと見込まれる。IFAは欧州を代表するエレクトロニクス関連のトレードショーでもあるので、期間中は全ヨーロッパ、あるいはアメリカや日本を含むアジアの国々から多くのトレードビジターが会場に足を運ぶ。人数の統計についてはまだ明らかにされていないが、今年のトレードビジターについては、半数以上がドイツ国外からの参加者だったことが今までに見られない傾向であるようだ。

報道関係者も国際化が進み、今年は70カ国以上から2,800人の来場があった。ドイツ国内の報道関係者も6,000人以上に上り、活況を呈するIFA2017の様子が世界中に伝えられた。

今年のIFAが、大成功を遂げたと言われていた昨年のIFA2016よりもさらに熱気を帯びていたことは、本インタビューを実施したIFA2017後半戦の時期、すでにハイテッカー氏は肌で感じていたようだ。

「IFAはかつてないほどのグローバルステージに成長を遂げた実感があります。近年は特に初めてIFAに訪れて、満足いただいた方々が『すごかったよ!』と口コミで魅力を伝えてくれる効果も効いているように思います」。ハイテッカー氏の表情が和んだ。

来場者とスタートアップを結びつける「IFA NEXT」の狙いと手応え

今年のIFAからメッセ・ベルリンの会場内でも特にキャパシティの大きな「ホール26」を使って、エレクトロニクスに関連するスタートアップや先端技術を集めたコンセプト展示「IFA NEXT」がスタートした。

従来「IFA TechWatch」の中で実施されていた展示と、出展企業のVIPが登壇するキーノートスピーチ、セミナー・ディベート形式を中心に「エレクトロニクスの未来を語り合う」ことをテーマに実施されるイベント「IFA+Summit」が、みな同じ場所に集まったことで来場者の注目を引きつけたこともある。

日本からも、CEREVOがAlexaと連携する“ロボットデスクライト”「Lumigent」のプロトタイプや、スタートアップのXenomaが着られるIoTシャツ「e-skin」をIFA NEXTの会場に出展していた。一人ひとりをつかまえて取材したわけではないが、日本からのトレードビジターも欧州スタートアップのユニークな出展を視察するため多く足を運んでいたようだ。ハイテッカー氏がIFA NEXT開催の狙いと手応えを次のように語っている。

CEREVOは開発を進める、Alexaに連動するロボットライト「Lumigent」のコンセプトモデルを披露。Alexa対応機器の多様な展開をみせた
IFA NEXTに出展した日本のスタートアップ、Xenomaは着られるIoTシャツ「e-skin」を展示。e-skinを着てゲーム画面の中のキャラクターを操作する実演を紹介した

「元もとIFAは、コンシューマーエレクトロニクスに白物家電など、セグメントごとにきっちりとレイヤーを分けて、来場者にそれぞれのイノベーションをわかりやすくみせることに力を入れてきました。さらに、近年では機器どうしがインターネットやクラウドサービスを通じてつながる“コネクティビティ”を体感できる仕掛けも採り入れています。今年はそのレイヤー構造に少し広がりを持たせました。大別すると全体で3つのレイヤー構成になっています。

ひとつはIFAメイン会場であるメッセ・ベルリン全体に“ブランド・オンリー”というコンセプトを張り巡らせて、次の商戦シーズンに向けた期待の最新商品を強くアピールする見せ方をしています。これは、一般来場者からトレードビジターまで、誰にでも来場いただけるオープンなイベントであるIFAの強みを最大限活用したものです。

もう一つはIFA Global Marketです。生産・調達関連のエキスパートを集めた『ヨーロッパ最大のソーシングショー』をコンセプトに掲げて、昨年から実施しているイベントですが、今年はその規模・クオリティともに一段と充実させました。ベルリン市内の大規模なイベントスペースを使って、会期中盤の3日から6日までの4日間に渡って実施します。エレクトロニクス産業の屋台骨を支える企業が数多く集まってくれることが、間違いなくIFAの存在価値をさらに引き立たせています」

今年で2回目の開催となるIFA Global Markets。アジアを中心としたOEM/ODM企業が数多く出展する

「最後にもう一つの新しいレイヤーが、イノベーションをコンセプトにしたIFA NEXTです。スタートアップの募集にはここ数年間も力を入れてきましたが、今年はIFA TechWatchから実施形態を変えて、IFA NEXTととしてコンセプトを固めたゾーンをつくりました。130のスタートアップ、70の企業に参加いただき、IFAキーノートやIFA+SUMMITとの連携を強くしたことが成功を呼び込んだのだと思います」

IFAに集まるイノベーションを、新しいコンセプト展示「IFA NEXT」に集中させたことが奏功した
10年先のエレクトロニクスの未来を語り合うことをコンセプトに開催されている「IFA+Summit」も盛況だった

「オープンな雰囲気のホールのレイアウト構成も助けになって、出展社と来場者、出展社どうしを結びつける良いネットワーキングの場としても機能していると思います」

オープンな雰囲気が好評のソニーブース

来年以降のIFAでは、一歩先を行くスマートホームの未来を提案

今年のIFAでは、Google AssistantやAmazon Alexaなど、AIアシスタントを搭載する「スマートスピーカー」が注目されたことで、IFAの出展社がテーマに掲げてきた「コネクティビティ」の姿がより明快に姿を現した。ヨーロッパの先進国ではスマート家電やIoTデバイスが次々と商品化されており、スマートホームをビジネスの柱に育てていこうとする、大手を中心とした家電メーカーや通信事業者などサービスプロバイダーの思惑が今年は特に強く伝わってきたように思う。「エレクトロニクスのコネクティビティを見せること」をメインテーマに掲げてきたIFAの戦略に、やっと業界のトレンドが追いついたのかもしれない。ハイテッカー氏に手応えを訊ねた。

AIアシスタントを搭載するスマートスピーカーが今年IFAで注目の的となった

「IFAで“コネクティビティ”を推してきた戦略は正しかったと自信を深めています。コネクティビティそのものは、音楽コンテンツのマルチルーム再生、ポータブルデバイスと連携した動画コンテンツのシームレスな視聴体験など、IFAがカバーするコンシューマーエレクトロニクスの分野ではかなり前に実現していたことですが、ここ数年でホームアプライアンスのインターネット家電にも浸透してきたことで、ますます便利になる生活が顕在化してきたように私も感じています。今年はIFAに沢山のスマート家電が商品として出てきたことも人々の関心を強く引きつけました」

「一昨年あたりから申し上げているように、私はこれからのスマート家電はインターネットにつながるだけでなく、クラウドと連携したディープラーニングやAIの技術と結びつくことで、さらに進化していくことが大事だと考えています。人が多くのコネクテッド家電につながるようになると最初は便利に感じるかもしれませんが、すぐにひとりの人間ではその情報が処理仕切れなくなってスマート家電が『本当に便利なのか?』と疑わしく感じられてくるかもしれません。

オーバーフローしがちな膨大な情報を、機器に組み込まれているAIが下処理をして提供してくれたら、いよいよリビングやキッチンがスマートになる実感が押し寄せてくるのではないでしょうか。来年以降のIFAでは、そんな一歩先を行くスマートホームの未来をより鮮明にお見せできると思います」

今年はシャープが久しぶりにIFAに戻ってきた。例年同様に大きなブースを構えたソニーやパナソニックは言うまでもなく、日本から出展する多くの企業が強い存在感を放ったIFAだった。

シャープは8Kテレビ、スマートフォンの展示が注目された
黒物・白物まで多彩な商品ラインナップをみせたパナソニック

「日本のブランドは、私たちヨーロッパのコンシューマーから見ればいつでもマーケットのトップランナーであることに今も昔も変わりはありません。いま企業経営の面では様々なことが背景に起きていることは存じ上げていますが、経営体制が国際化することによってグローバル企業として躍進を遂げてきたブランドは、ドイツ、アメリカにも数多くあります。グローバルな視点から見ればごく当たり前で不思議なことではありません。私は日本の企業がこれからますます強くなると期待する者の一人です」

来年の「IFA2018」は8月31日から9月5日までの6日間に渡って開催されることも決まった。「IFAをますます充実したイベントにしていきたい」と語る、ハイテッカー氏の具体的なプランについては、また近くインタンビューできる機会に掘り下げてみたい。


◆IFAに関する問い合わせ先
メッセ・ベルリン日本代表部
TEL/03-6426-5628
FAX/03-6426-5629
Mail/info@messe-berlin.jp

 

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