長坂 展生

AVの市場はこれからも明るいものになる
訴求の原点に返って、体感を推進していく
株式会社アバック
代表取締役社長
長坂 展生
Nobuo Nagasaka

AVとホームシアターの専門店アバックが、全国への出店に取り組んでいる。お客様を掘り起こして体感の場を広げ、ホームシアターの楽しさを啓蒙する。意欲的な活動を推進する同社社長の長坂氏が、強い意気込みを語る。
インタビュアー/徳田ゆかり Senka21編集長  写真/君嶋寛慶

体感の場づくりへ
全国への出店を加速

── 長坂社長には1年ぶりにご登場いただきました。アバックの出店がますます加速していますね。

長坂アバックの会員様がホームシアターやオーディオをいつでも体験できるよう、全国に店舗を広げていくつもりです。この1年で岡崎店、名古屋店、仙台店がオープンし、2月25日にオープンする鳥取店が加わって、18店になっています。まだまだ近隣にアバックの店舗がなくご不便をおかけしている会員様が多くおられますので出店を進めて参りたいと思っています。

出店にあたって、ゼロの状態から立ち上げる場合もあれば、ホームシアターやオーディオをやっておられるお店にアバックのグループに加わっていただいたフランチャイズのケースもあります。岡崎店や鳥取店がそうですね。鳥取店の場合は、カーオーディオとホームオーディオのウェイブトゥポートさんというお店でホームシアターを強化したいというお話があり、アバックが協力させていただきました。店名をアバック鳥取店として、店舗や人材はそのまま、ウェイブトゥポートさんのカーオーディオの営業も継続します。ホームシアターのノウハウはアバックが支援させていただき、研修も行いました。ホームシアタールームも新たに設置しています。

また、アバックが間に入ることによって取り扱うことができるブランドも増え、ご提案の幅も広がります。従来のカーオーディオとホームオーディオのお客様に、近隣地域のアバック会員様が加わって、お客様数も増えます。アバックにとっても、その地域の会員様に対して身近なホームシアター体験の場をご提供できることになります。メーカーさんにとっても、アバックを通じて商品展開できる店舗数や地域を増やせることになります。製品の詳細な説明や開発ストーリーなどの深い内容をお客様に対してもきちんと発信できるよう、メーカーイベントなどの支援もお願いして、しっかりと展開して参ります。

長坂 展生
お客様が体験できる場はどの地域にも絶対に必要
ギアを上げて全国に店舗網を広げていく

── 地域のお店も、お客様も、そしてアバックさんも、メーカーさんも、皆にメリットがもたらされますね。

長坂お客様が体験できる場はどの地域にも絶対に必要ですが、新しい店を出すには人の確保も教育も時間がかかります。地域に浸透してお客様を抱え、活躍されてきたお店と組んでのフランチャイズ展開は、非常に魅力的です。今後の出店にあたって、各地域で活躍されてきたお店にぜひご協力をお願いしたいのです。もともとしっかりした売り場をお持ちのお店と組むフランチャイズ方式の他に、業務委託という方法もあります。アバックがつくった店の運営を委託して、売上げのある割合を業務委託料としてお支払いする形です。請け負う方は人材の確保と業務を自らの裁量で行っていただくことになります。

フランチャイズでも業務委託でも、店はあくまでもアバックです。商品を仕入れて、お客様を店に呼ぶのはアバックが支援いたします。来店されたお客様に対してのクロージングは、個々のお店が腕を振るいます。特にインストールの分野は本部でコントロールするものではなく、インストーラーとお客様との信用で成り立つもの。店やインストーラーが個性を発揮し、活躍することになります。

── 全国のお客様の期待に応えるため、店舗網は早急につくる必要があるわけですね。

長坂日本全国にアバックの会員様がいらっしゃるのに店がない地域がたくさんあって、我々は困っています。そこでもし、我々にご協力いただけるお店があれば、ぜひ一緒にやらせていただきたいのです。ご商売が転換期にあるとか、新たに事業を始めたい思いがおありでしたら、お互いにとってメリットがあると思います。AVの業界でお店の減少をできるだけ止め、日本全国にお客様の体験場所を増やしていけたらと考えます。

AVの市場はこれから、全国で啓蒙活動を行わなければ先細っていくばかり、すると地方に商品が流れにくくなってしまいます。特にフラグシップの商品は、お客様は体験して購入を検討されます。体験の場がなくなるほどお客様にご提案するチャンスが減ってしまう。するとメーカーさんが物を市場に出さなくなり、悪循環となり全体のパイが小さくなってしまう。だからこそ全国津々浦々にリアル店舗を出し、店舗網を張り巡らせる必要があるのです。

全国に販売店はありますが、地域によってはメーカーさんとの交流が途絶えてしまっているケースもあるかもしれません。アバックが一緒にやらせていただくことで取り扱える商品の種類や数が増え、お客様に対するご提案の数も拡がります。アバックの考え方に感じてくださるものがあれば、全国の販売店さんにぜひご協力をいただきたいと思っています。

長坂 展生

新たなお客様の育成へ
全国を掘り起こし
ホームシアターを知らしめる

── 全国に拡がるアバックのお店ですが、地域や店舗によって展開の違いはありますか。

長坂お客様へのアプローチは基本的に全国一緒で地域によって違いはございません。ホームシアターインストールや物販の基地となる“本丸”の店と、新しいお客様にキャッチアップするために住宅展示場で展開する店といった違いはございます。店舗によって値段が違うのは、お客様にとっておかしなことですから、ネットも含めてそれはないように心がけております。交渉の上の値引きは、個々のスタッフの裁量として柔軟にやっていますが。

店舗展開の基本的な考えは、まずリアルショップありきということ。お客様が来店してくださって、見て、聴いて、体感して楽しんで、いいものだと実感してくださった上で買っていただく。それが最優先です。近隣にアバックの店舗がなくご来店が難しいお客様にご来店いただく仮想店舗と考え運営しております。電話通販部署に店舗同様の商品知識を持ったスタッフを専任でおいております。ご来店いただけないお客様により詳しい商品情報をお届けし、ご来店いただけないデメリットを少しでも改善できたらと思っております。

単品物販だけでなく、今はホームシアターを主軸に、カルチャーを訴求する方向性を強く打ち出しています。今の日本の人口構成はご年配の方が多く、人口そのものがどんどん減っている。この状況は致し方ないと思います。若年層の支持はポータブル機器とイヤホン・ヘッドホンといったライトなオーディオに集まっています。こうした市場環境でAVの専門店を運営していく上で、お客様を新たに育てる必要性を強く感じています。

家を新築するタイミングを大きなチャンスと捉えて、そこでホームシアターを訴求します。住宅展示場での展開はそのための取り組みです。家を新築される30代〜40代の方々がシアターに開眼されれば、その先30年〜40年楽しんでくださる可能性が生まれます。年配の方の中にもオーディオ・ビジュアル体験がない方がたくさんおられ、そこにもチャンスがあると考えます。そこでのホームシアターの訴求は、AV機器の魅力というよりも、シアターで楽しめることをアピールすることが重要。ホームシアターのカルチャーを推進していく考え方です。

今まさに仙台、名古屋、鳥取といった店舗のあるエリアの地方紙を使って、ホームシアターのさまざまな楽しみ方を知っていただく内容の折り込みチラシを入れています。プッシュ型、プル型という販促の考え方がありますが、WEB検索などがプル型、対して新聞折り込みはプッシュ型です。情報をこちらからお届けするもので、何も知らないお客様がそれによって初めてホームシアターを知る。WEBでは、お客様自らが検索のアクションを起こさないと情報にたどり着けません。「ホームシアター」検索でアバックの情報は出ますが、それはお客様がホームシアターという言葉を認識していることが前提です。

我々は、ホームシアターの存在自体を知らない方に、情報をお届けしたいのです。こんな楽しいことがありますよ、一度お店にいらしてください、と。そういうアクションがまず必要で、積み重ねていけば裾野が広がるはずだと考えています。

お客様を創る取り組みとして、これまで首都圏でしかやってこなかったことを全国で面展開することで接点は増やせます。全国にいらっしゃるアバックのWEB-SHOPの会員様のほかにも、まだまだ、もっとお客様を掘り起こせると思っています。だからWEBではアプローチできない方に、新聞折り込みなどでリーチしようとしているのです。新しいエリアに出店し、新聞折り込みをお届けする。それでホームシアターを初めて知る方がご来店してくださる。そういうことをやっていきたいと思っています。

価格訴求の時代は終わり
啓蒙活動で原点に返る

── 今後の展開も楽しみですね。

長坂 AVは成長産業ではないと言われますが、全くそんなことはないと強く思います。視点によっては減衰を感じられるかもしれませんが、カルチャーとしてホームシアターはまだまだ成長できます。むしろ啓蒙活動がまだ十分にできていない。だからそれをアバックがやるつもりです。AVの市場を支えるのは、たくさんのマニアのお客様。そのお客様に対する展開はアバックの基本であり、絶対に手を緩めてはなりませんが、さらにインストールの切り口でホームシアターのお客様を常に創っていきます。これは後々に向けての種蒔きでもあります。

これまではいい商品をマニアのお客様にお見せすれば売れました。だから我々としても、メーカーさんがいい商品をつくってくださるのを期待して待っているだけでした。それではいけないと思います。いい商品は、マニアの方だけでなくもっといろいろな方にお見せする工夫をしていかなくては。そして新しいお客様を創っていく活動は、メーカーさん頼りではなく、アバックが率先してやっていかなくてはと思います。

価格先導でモノを売っていたAVの市場ですが、原点に返ってお客様にいい体験をしていただくことが必要と思います。昨今ではリアルショップを頑張っている店に対して、メーカーさんの技術支援などが強化されているように感じます。大変心強く思います。価格だけの訴求で業界は皆痛い目に遭いましたが、もうそれは通用しない。お客様に体感していただく、原点を忘れずに頑張っていきたい。AVの市場は明るい、まだまだやれることはたくさんあります。アバックもしっかりとやって参ります。

◆PROFILE◆

長坂 展生氏 Nobuo Nagasaka
1975年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。2002年2月(株)アバック入社、インストールビジネスに長年携わる。2006年2月 グランドアバック新宿営業部 部長就任。2009年2月(株)アバック代表取締役社長に就任、現在に至る。

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