勝村治司氏

ハイエンドオーディオを徹底的に追及し
たしかな手応えで新たなステージを目指す
エソテリック株式会社
代表取締役社長
勝村治司氏
Haruji Katsumura

ハイエンド市場で強い存在感を放つエソテリック。こだわりを貫いた国内生産を礎に、フラグシップ「グランディオーソ」を始めラインナップの枠を広げる。国内、そして海外へとファン層を広げる同社の意気込みを、勝村社長が語る。

アンプをアピールする
ラインナップ完成

── 御社は今年もすばらしい製品群を発表、大きな賞を受賞されました。あらためて各製品の位置づけをご紹介ください。

勝村国産の枠を越えたワールドクラスのフラグシップモデルとして、「グランディオーソ」シリーズを構築して参りました。その名称は、イタリア語の音楽記号で「壮大な」「堂々と」といった意味を表します。2年前に発売したモノーラルパワーアンプのM1を皮切りに、昨年金賞をいただいたプリアンプのC1、セパレートSACDプレーヤーのP1、D1、そして今年受賞したステレオパワーアンプのS1、これら情熱を傾けたラインナップを大変高くご評価いただいたことはありがたく、我々の大きな自信につながります。

究極のステイタスであるグランディオーソの技術を踏襲し、新たに準フラグシップとして展開するC?02X、S?02も今回高いご評価をいただきました。こうして我々が培ったエソテリックのサウンドやカラーは、さまざまなカテゴリーに浸透したと思います。

── 市場での手応えはいかがでしょうか。

勝村2015年の新製品はセパレートのアンプに注力してラインナップを刷新し、一つの目標を達成できました。市場そのものは6月から軟調ですが、当社はあまり影響を受けず、アンプの売上げ実績も現時点で昨年比50%アップしています。おかげさまで今年のモデルも非常に高くご評価いただき、この勢いを年末から来年に向けていきたいと思っています。

来年はいよいよ、プリメインアンプの新製品を数機種計画しており、これでアンプのモデルチェンジが上から下まで完了します。今までやりたかったものが最高の形で出揃いますから、「アンプのエソテリック」を目指し、ディスクプレーヤーと2本の柱を構築していきたいと思います。

体験の場を整え
新たな客層にも訴求

勝村治司氏

── 定評あるディスクプレーヤーに加えて、いよいよネットワークプレーヤーが登場しますね。新たなお客様層の取り込みも期待されます。

勝村アンプのラインナップが強化された上に、ハイエンドのネットワークプレーヤーが新たに加わってきます。市場ではこの価格帯に該当する機種はあまりなく、音質的にも絶対の自信を持っていますから、これは相当に期待しています。

ハイエンドでは特に若いお客様の導入が課題になりますが、エソテリックのファンは30代、40代の方が増えています。趣味の製品ですから、音楽の魅力を求めて付加価値に投資する方は一定のレベルで満足せずに上を指向するわけで、デザイン性や音に感じていただけるところがあり、自然発生的に若い方も増えているのだと思います。

昨今ではヘッドホンでお聴きになるマニアの方々が注目されています。少しでも振り向いてくださればとは思いますが、彼らのこだわりはヘッドホンのカテゴリーであって、必ずしもオーディオ全般に興味を持っているわけではないと思います。むしろこれからはアナログの盛り上がりが追い風になると期待します。デジタルとアナログとは正反対の音ですが、それぞれに互いを刺激して市場を活性化できるのではと思います。

そういう中で我々は、販売店様と一緒に体験の環境を整えていくのが重要と思っています。我々がリリースするSACDソフトを目当てに専門店様に来ていただくといった訴求もできます。音楽マニアの方は音の質感を一生懸命追求されますから、感性が合えばオーディオ機器に関心を向けてくださる。

我々はそういう方々に対してやれることをきちんとやっていく。もっとも大事なのは製品、そして広報、営業政策、この3つが重要な要素です。お客様に知っていただくためには媒体対策も大事。こうした取り組みが、ここのところようやくスムーズに回り出した感じがします。

── 販売店との連携はどのようにされていますか。

勝村新製品を投入する時期を中心として年に2度ほど研修会や勉強会を開催していますし、工場見学なども行っています。皆様に工場でものづくりの現場をご覧になっていただくことも大きな要素で、ここまでやっているのかと驚かれ、あらためてエソテリックの底力を感じてくださいます。

当社の開発メンバーも、皆様とコミュニケーションをとらせていただく中で次の製品の参考になることも多々あります。こうして直接のやりとりができるようになるのは、非常に貴重なこと。販売店様の次世代を担う方々とのコミュニケーションも、今後ますます図っていきたいと思います。

国内、そして海外へ
地道な活動で実績を獲得

── 昨今の市場動向はどうご覧になりますか

勝村ハイエンドにはそう大きな波はありません。景気が悪化しても極端に悪くもなく、一方で景気が回復したからといって市場が極端によくなることもない。その中で我々は、エソテリックというブランドを大事に育て、製品もブランドも一緒に売る気持ちでマーケットに関わっていく。ここで量を追うなど無理をすると、危険な状態に陥ります。確実 でブレない経営を安定して行っていくことが肝要と思っています。

── 今後は海外の展開も楽しみですね。

勝村今アジアが大きなマーケットとなっており、ドイツを中心としたヨーロッパ、そしてアメリカも強く、これら3つの市場を軸にして力を入れて進めたいと思います。アメリカ、ヨーロッパでの販売は、ともに不調な時期もあったものの前年比でも大幅な伸長となっています。

エソテリックの展開を始めた当初、海外ではなかなか実績が出ませんでしたが、今となって引き合いもたくさんいただいていて、大きな励みになります。これらの地域では、媒体や販売店様対策を国内と同様に地道に行ってきました。音の良さ、エソテリックサウンドの魅力を訴求しご理解いただく活動を繰り返していますが、開拓の余地はまだまだあり、やり切れていないと思います。

もともと当社の海外営業は力をもっていますから、ハイエンドのブランドとしてのエソテリックに注力してくれれば、大きな結果につながると思います。我々はおかげさまでハイエンドオーディオに特化し、やりたいことを次々展開して参りました。こうして実績が出てくると、社内のチームワークも必然的に高まります。企画、開発、営業、そして工場が一体となり、グループとしての一体感がますます出て来ました。これまでの過程でやってきたことが社内でも浸透しています。社員一丸となって取り組み、製品のクオリティに絶対の自信をもっています。やるべきことはまだたくさんありますから、これからも気を抜かずにしっかりとやって参ります。

◆PROFILE◆

勝村治司氏 Haruji Katsumura
1951年2月3日生まれ、東京出身。73年 ティアック(株)入社。90年 名古屋営業所長、94年 東京営業所長に就任。2000年 国内営業部長に就任。04年 エソテリック(株)取締役に就任、09年 同 代表取締役社長に就任、現在に至る。

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