ヒットモデルDIG-3000のBNCプラグ仕様モデル

型名からおわかりのように、DIG-3000のBNCバージョンである。サエクはRCAピンプラグの弱点というものを熟知している。だからこそ同軸のDIG-3000やアナログラインのSL-3030には、「ツインスプリングバイト」という正確な固定保持とスムーズな抜き差しを両立させた独自の機構を採用しているわけだし、その点バヨネット方式のBNCプラグであれば完璧無類。プロフェッショナル感覚のデジタル伝送を可能とするのだ。ケーブル自体は、もちろん「空中を飛ぶ電磁波に近い伝送速度」を謳うSUPRA型同軸2層シールド構造のものだ。米国MIL規格のMIL-C-17Dをも凌ぐというハイエンド。高級な感触の金属メッシュ被覆は業界初のフレックスアラミド編組ジャケットだし、これで電磁波やノイズ対策も完璧となる。

ダイナミックにして滑らか、強靱にして繊細。このデジタル伝送はアナログの音がする。まさにアナログの熟成したサウンドを聞くような戦慄が走るのである。これがハイスピード、ハイサンプリング対応ということだろう。SACD盤の「シューマン・ロマネスク」はすごい。ウラディーミル・トロップのピアノが極上だ。何という立ち上がりの早さ、タッチの精密さだろうか。緊張感の高まりが手に取るように伝わってくる。フレーズのひとつひとつが生きものように有機的に結合し、ゆるぎのない空間を醸し出しているのだ。ジャズはホットにしてアグレッシブ。空間情報を圧倒的な鮮度で抽出する。リズムが生き生きとし音楽の感動が包み込む。まさに必要な情報を100％伝送しきっている印象である。デジタル伝送のパフォーマンスをここまで高めるBNC-3000は、さすがにサエク30周年の意欲作。感銘をもたらす1本である。

（text：林正儀）