高精度パーツにより別次元の改良を施した新フラグシップ
フラッグシップのEvidenceやConsequence U/Eを除けば、ディナウディオの実質的な最上位機がConfidenceシリーズである。2002年に発売されて以来、9年ぶりにリファインされたのがこのSignatureとMark IIで、違いは主に仕上げである。中でもC4 Signatureは、このシリーズを代表するトップモデルで、外観に変更はないがネットワークなどの見直しによって大幅な音質改善を実現している。
C4 Signatureはラインアップ中、唯一の3ウェイ機である。ただ単純な3ウェイではなく、トゥイーター、ミッドレンジ、ウーファーのそれぞれが2基ずつ使用され、上下対称に仮想同軸を形成するようにマウントされている。しかし本来の目的な仮想同軸にあるのではなく、特殊なフィルタリング技術(DDC)によって上下ユニットをいわば干渉させ、指向性をコントロールするというものだ。これによって天井や床の反射から音を守り、カラレーションを抑えることが可能である。このためユニットはデュアルで搭載されているわけだ。
トゥイーターはシルクドーム、ミッドレンジとウーファーはMSP(ケイ酸マグネシウム・ポリマー)の振動板を備える。またボイスコイルにアルミ線を使用し、通常よりも口径を大きく持たせていることもディナウディオの特徴だ。
キャビネットは特徴のあるスタイルで、ユニットは直接ではなく、MDF製のバッフルに取り付けられている。このバッフルとキャビネットの間は、ダンピング効果を持った素材で接合され、さらにサイドからガラス製のパーツで止めてある。キャビネットとの共振を防ぎ、その振動がユニットに影響しないように考慮された入念な構造である。
これらの特徴は、オリジナルから変更されていない。また外観もほとんど変わるところがなく、わずかにベースに施されたロゴから赤い下線が抜けているのが唯一の違いといえそうである。
ユニットも基本的に同じである。ただトゥイーターのコーティングは変更されているが、もともとこの部分は絶えず研究が続けられているため、これまでにも随時変化していた可能性がある。
最大のポイントはクロスオーバー・ネットワークである。おそらくこれがあったからこそリファインの決断が下せたのだろうが、パーツは一新されている。
ディナウディオのネットワークは全て1次(-6dB/oct)だが、その薄膜コンデンサーと内部配線は新たなものとなっている。また最新のセラミック抵抗と空芯コイルを採用し、コンデンサーにも高精度な部品を登用して性能を向上させた。
これだけのことに9年かかった、というより、元の完成度があまりに高すぎたため、現在のような高精度なパーツを待たなければ満足なリファインは不可能だったということだろう。
実際音を聴いてみても、小手先の変更でないことは明らかだ。なにより低域の伸び方と解像度が際立っている。ジャズの低音を聴くとよく分かるが、沈み方が楽々として質感に曇りがない。またそれに伴って中・高域も一層晴れやかに澄み、アカペラや室内楽が手に取るような実在感を示す。オーケストラやピアノは、ステージが見えるように音場がリアルだ。まるでスピーカーの役割を越えてしまったかのような、あまりに印象的な再現である。 |