優秀録音ハイレゾ音源レビュー

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Fantome

宇多田ヒカル ポップス FLAC
96kHz/24bit
レーベル:Virgin Music 配信サイト:e-onkyo music

■高橋 敦レビュー
休止期間を経てのアルバムということで、必然的に生まれるであろう「変化」を気にかけて聴き始めた。だが実際に聴いてみると僕にとっては、環境や心境の変化にも左右されず「変わらなかった」部分の方も印象的な作品だった。最初のトラック「道」のイントロのフレーズのリズム感、歌の一言目からの音節の区切り方や独特なコーラスワークなどは、10年前の僕らが聴いても宇多田ヒカルのサウンドとして違和感なく受け入れられるものだろう。続いての「俺の彼女」の「俺の」という視点の選び方からも、あの頃と同じくの彼女らしい面白味を感じる。しかしアルバム中盤「人魚」以降からはその「これまでの宇多田っぽさ」をも削ぎ落として「いまの宇多田ヒカル」を感じさせるサウンドの比率が増える印象。序盤の「宇多田っぽさ」はここへ向けて意図的に置かれたそれこそ「道」案内だったのかもしれない。とそんな感じで、解釈の余地はいくらでもある作品だ。サウンドクオリティは当然のごとく文句なし。強いて言えば、音数を厳選した上で左右を広く使っての空間表現、それによって際立つ静かさはオーディオ的にも特に見るべき、聴くべきポイントだろう。

総合点 9.2
低域の伸び9.2点 高域の伸び9.2点 セパレーション9.2点 ディテール9.2点 透明感9.3点 空気感9.2点 質感9.2点 静寂感9.3点 残響 奥行き 音像 アタック