コンパクトさと迫力の音を両立できる省スペースサラウンドシステム
文/高橋 敦  

画質の面では大きな進歩が続いている薄型テレビだが、音がそれに追いついているかというと正直厳しい。まず根本的に薄型・小型設計であるが故に、音質に直結する要素、スピーカーのキャビネット容積や口径などに限度がある。そして、5.1chサラウンド放送も増える中、テレビ単体ではそれを十分に楽しむこともできない。

そこで目が向くのが省スペースタイプのサラウンドシステム。音質向上&サラウンド再生実現の両方を、薄型テレビに見合うコンパクトさもクリアしながら満たしてくれる選択肢だ。

省スペースサラウンドシステムとは具体的には、リアスピーカーを省略しつつサラウンド音場を実現する、いわゆるフロントサラウンド環境を提供してくれるシステムのこと。リアスピーカーはサラウンド再生の要であるが、同時にその置き場所はサラウンドシステム設置でいちばんの厄介事だ。それを使わずにサラウンド再生を実現することでシステムの設置性を高めているのである。

また最近の製品はいわゆるHDMIリンクも搭載する。対応するテレビやレコーダーなどとの組み合わせでは、例えばレコーダーで録画番組を再生し始めると、自動でテレビの入力がレコーダーに切り替わり、サラウンドシステムの電源も投入されるといった具合だ。日常的な操作の使い勝手も高められているのである。

さてこのフロントサラウンド製品は、その設置様式でふたつに分類して考えることができる。まず一般的にフロントサラウンドシステムとして単品販売されているもの。左右+センター+SWなど複数のスピーカーから構成される製品、システムのすべてが一体化された製品など様々あるが、それらをテレビラックなどの適所に設置して利用する。そして最近増えているのがテレビラック一体型のシステム。前述の一般的なシステムのスピーカーなどの構成機器をテレビラックに埋め込んだ状態で製品化したものである。

(右)コンパクトな2つのスピーカーとサブウーファーがセットになったNIRO「Spherical Surround System」/(右)ヤマハ「YSP-4000」。複数の小型スピーカーユニットを使用することで音に指向性を持たせ、壁に音を反射させたることで5.1chサラウンドを実現する。

ラック型シアターは導入・設置時に悩む要素が少ない。薄型テレビとHDMI接続してCECの連動機能を利用することも可能だ。(右)パナソニック「SC-HTR310-K」/(左)ソニー「RHT-G900」

導入・設置時に悩む要素が少ないのは後者のラック一体型だ。前者は結局どこかしらにスピーカーの置き場所を考えなくてはならないが、後者はラックをドンと置くだけで設置完了。スピーカーの存在が目立たないことはインテリア的にも有利かもしれない。

しかし、現在テレビラックがすでに設置されていてそこにシステムを組み込むスペースが確保できるなら、それをラックごとラック一体型システムに入れ替えるよりも、一般的なシステムの方が導入しやすいだろう。つまり、どちらが導入しやすいかはそれぞれの環境次第だ。

もちろん設置性や利便性だけではなく、製品ごとに音質やサラウンド感の傾向も異なる。そこは各製品ごとに情報を集めたり可能であれば試聴したりといったことが必要だ。そのあたりは製品探しを楽しむつもりで見定めていこう。

いずれにせよ、テレビ単体では得られない音場の厚みと広がりは、体験すればもう戻れない魅力だ。ぜひ味わってみてほしい。

執筆者プロフィール
高橋 敦 Atsushi Takahashi
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。
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