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【連載】ガジェットTIPS

完全ワイヤレスイヤホンの「ゲームモード」、低遅延を実現できるのはなぜ?

2021/05/14 海上忍
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性別や年齢層を問わず大人気の完全ワイヤレス(TWS)イヤホン。スマートフォンで音楽を聴くだけでなく、1人でネット動画を楽しむ目的で使う人も多いそうです。しかしゲームは...TWSイヤホンを含むBluetoothイヤホンには「遅延」という問題があり、ひと筋縄ではいきません。

そこで、音の届くタイミングが重要なゲームや、セリフと口もとの動きの違和感が気になるドラマのために、「ゲームモード」や「低遅延モード」をうたうBluetoothイヤホンが増えています。その効果は大きく、遅延が気にならなくなるから不思議なもの。それにしても、40ミリ秒という低遅延設計のaptX-LLはともかく、SBCなど一般的なコーデックでも低遅延を実現できる製品があるのは不思議ですよね。

低遅延モード搭載の完全ワイヤレスイヤホンの一例、Razer「Hammerhead True Wireless Pro」

Bluetoothオーディオは、製品の設計や適用されるコーデック(音声データを圧縮/展開するソフトウェア)にもよりますが、信号の発生から到着までに200ミリ秒前後の遅れ(遅延/レイテンシ)を生じがちです。Bluetoothイヤホンでドラマを視聴すると、俳優の口もとの動きとセリフにズレを感じることがありますが、それはレイテンシが120ミリ秒以上で体感されるようになるといわれています。

低遅延をうたうBluetoothイヤホンは、搭載されている通信チップ(SoC)の働きにより、コーデック遅延(アルゴリズム遅延)と転送遅延を低減しています。それによって、特定ベンダーのSoCに依存しないSBCなどのコーデックでも60ミリ秒前後にまで遅延を減らしているのです。

ここでいうコーデック遅延とは、オリジナルの音から符号化処理を行うときに生じる遅延のこと。これをSoCの演算能力により短縮することで、遅延を低減します。もうひとつの転送遅延は、バッファサイズを小さくするなどしてBluetoothのパケットとSBCなどフレーム構造コーデックの転送ズレを抑制すること。ただし、これらの遅延を抑えようとするとSoCのパワーが必要になるため、通常モードと比べ電力消費量が増加する、つまりバッテリーのもちが悪化するというデメリットをはらんでいます。音質にも影響するため、音楽鑑賞は通常モードの利用がお勧めですよ。

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