始めよう!アナログレコード入門:RIAA/フォノイコライザーってなに?

林 正儀

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2016年04月15日


皆さんはレコードプレーヤーとアンプをつなぐとき、どの入力端子にさしますか?そう、フォノ端子というアナログレコード専用の端子にインプットするでしょう。CDやチューナーの音を聞くときに使うライン端子に、いくらレコードの信号を入れても、蚊の泣くようなちっちゃな音しか聞こえません。でもその逆にCDの音をフォノ端子に入れたら大失敗。スピーカーを壊してしまうほどの大音量に驚きますね。ここにアナログ再生の秘密があります。今回はRIAAとフォノ端子の話です。

■アナログレコードと記録再生の流れ

レコードの音溝はとても微細です。カートリッジで拾った信号は、あとで解説するように、CDのラインレベル(1V程度)の1/1,000ほどしかないのです。だったら1,000倍に増幅すればいいじゃないか!と思うでしょうが、そう単純ではないんですよ!そもそもレコードに記録する際、RIAAという特殊な補正のかかったカーブで音溝に刻んでいるのです。

■RIAAってなに?

RIAAはアナログ再生にとって避けて通ることのない規格用語ですが、CDや圧縮オーディオ世代の人には、馴染みが少ないかもしれませんね。読み方は「リア」です。そのまま「アール・アイ・エー・エー」の方が正式なのですが、まあポピュラーに「リア」と呼んでしまいましょう。

これは「Recording Industry Association of America(アメリカレコード工業会)」のことで、アナログレコードの標準化を目的として1952年に設立。54年には今日のスタンダードとなっているRIAAカーブを制定しました。当時はモノラルからようやくステレオに移行(1958年〜)する少し前で、ほかにもデッカ、コロンビアなどレコード会社によって、微妙にカーブの違う規格が乱立していたのですが、それではかけたレコードと再生のイコライザカーブが異なっていたりしていてうまくありません。そこでひとつに統合されたのです。

RIAA補正の仕組みをもう少し掘り下げてみましょう。

もともとの音楽信号は低音も高音も、フラットなバランスのはず。ところがエネルギーでいうと低域ほど強まる傾向なので、レコードの盤面に刻む(カッティング)ときにド〜ンと太鼓やベースのような低い音がくると、隣の溝までハミだしたり、トレースしきれないような大振幅の溝が彫られてしまいます。これでは長時間録音どころではありません。そこで面積の決まったディスクを有効活用するためにも、低音のレベルを思いきって下げるのです。

一方高音域には振幅が小さいために、ノイズの影響を受けやすくなります。そこで記録時にはハイ側を増強してノイズに強くし、再生時にはその逆操作をする。この考え方はテープレコーダーやFM放送のプリエンファスシス/ディエンファシス(送信時にハイ上げ、受信はハイ下げ)でも用いられていますよ。

このRIAA補正の流れを漫画風にしたのが、下の図です。

RIAA補正の流れ

低音くん、高音くんが同じ背の高さ(レベル)で、揃っているのが元の音楽信号としましょう(A)。フラットでいいバランスだなあ……。でもカッティングする時には、低音くんにぐっと小さくなってもらい、高音くんには大きく背伸びをしてもらいます。数字でいうと低音くんが−20dB、高音くんが+20dBにも匹敵します(1kHzを0dBとして)。この大胆な「ロー下げハイ上げ」の補正がRIAAカーブなのです(B)。

ここまでがレコードに記録された状態で、いよいよ再生に入ります。今度は立場が逆転! 縮こまっていた低音くんが、ぐーんと背のびをし、一方高音くんの方は小さくなってもらいましょう。これが再生イコライザーと呼ばれる「ロー上げハイ下げ」の逆RIAAカーブというわけです(C)。

(B)と(C)とは重ねあわせると互いにキャンセルするような特性なので、最後に低音くんと高音くんの背が揃って、(D)=(A)。つまりフラットな音楽信号に戻るという仕組みです。「これで元どおりだね!」とふたりが握手していますよ。

RIAAは厳密には図のような連続したカーブで、20Hzから20kHzまで、周波数ごとの細かいポイントが規格で定められています。


フォノイコライザーとフォノ端子

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