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【特別企画】“音楽家のための防音工事会社”によるオーディオ試聴会を徹底レポート

“防音工事で音が良くなった”具体例を多数紹介/高級機器でのハイレゾ聴き比べも − 「Acoustic Audio Forum」レポート

2016/01/15 編集部:小野佳希
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その工事の結果、オーナーからは「同じ機材なのに低音域が豊かに鳴るようになった」と感想をもらったとのこと。「なぜこんなに変わったのか。そのポイントは3つある」と岩元氏は説明する。

防音工事が音質向上につながったポイントは3点

そのポイントの1点目が『低音域の吸音』。「意外に思われるかもしれないが、現代の住宅は中空二重構造により、床壁天井の各部位で共鳴現象が起こる。これにより、低音域が過剰に吸音されるため、音に力強さがなく、迫力がなくなってしまう」という。

岩元氏は「防音工事をすると、各部位に質量の重い材料を使用するため、結果として共振周波数が下がる。つまり、それまで吸音されていた低音域の音もしっかりと反射するようになるため、同じスピーカーでも見間違えるような低音が得られる」と説明する。

現代の住宅は低音域で共鳴現象が起きやすく低音が吸われすぎる傾向の構造になっていると説明

上記グラフは残響時間の表で、赤が防音工事後の残響時間だが、63〜125Hzの残響時間が長くなっていることから、低音のエネルギーが減衰せず部屋に残っていることを裏付けている。

2点目のポイントは『反射音の付帯歪音』。この点について岩元氏は「先ほど述べたように、防音工事により各部位の重さが増し、剛性が高まる。オーディオ機器も高級コンポーネントは筐体の剛性を高めることを重視しているが、それと同じ考えが部屋でも言える」とコメント。「剛性を高めることで振動しづらい面ができるため、そこに当たる反射音は限りなく歪みを小さくでき、美しい響きを生み出す」と言葉を続ける。

そして3点目が『定在波』。「どんな部屋でも定在波自体は消すことはできない。かと言って吸音で処理するのは現実的ではない。よって我々は、定在波が発生する周波数を分散させるために寸法比率を調整し、定在波が偏在しないように設計することを心がけている」とし、「これら3点のポイントをきちっとおさえて防音工事することが重要だと訴え続けてきた」と言葉を続けた。

■限られた条件下でもしっかりと効果のある防音工事が可能

続いては、同社の草階氏が「ホームシアター用に作った専用室をピュアオーディオ用に作り変えた」という事例を紹介。この物件では、天井のみを作り直し、20cmほど天井高を上げることで部屋全体の寸法比率を変更したとのこと。その結果、オーナーが感じていた音響的な不満を解決できたといい、「スピーカーが別物になった、という感想をいただけた」という。

アコースティックラボ 草階氏

加えて、2階の部屋をオーディオルームとして改装したという別の物件も紹介。「2階だと、地震対策などのために法的な制限があって重い建材を満足には使えない。そんな制約の中で重い材料を使えるギリギリまで追い込んだ」とのこと。

2階だが前方の壁にレンガを用いるなど重量的な制限にもギリギリまで挑んだ

床下にケーブルを通して配線をスッキリさせる配慮も


スピーカー等の振動を部屋全体に伝えないよう、部屋の前方とリスニングエリアとの床をそれぞれ“縁を切った”状態にすることでも音質に配慮

サラウンドスピーカーはインテリアに溶け込むよう隠して設置できるように施工

さらに、別の物件では斜めに勾配のある天井へ、インテリアとしての見た目も追求しながらスピーカーを吊り下げたドルビーアトモス対応ルームを構築したことも紹介。これらのように、限られた条件下でもしっかりと効果のある防音工事ができることも紹介した。

天井中央に吊られた四角い枠にスピーカーが隠されている

また、「新築鉄骨造4階建の4階」という物件での事例も紹介。「真下と隣に賃貸で貸す住宅があるので、迷惑をかけないようにという依頼だった。そこで、真下の部屋に対してD65以上、隣に対してD75という高い遮音性能をもたせた」とし、「高遮音なだけでなく、それが音響面でも有利につながる、一石二鳥なことの好例」だと続けた。

遮音性能と音質の向上を両立させた部屋づくりが可能であることを紹介


◇ ◇ ◇


前述したように、次回の「アコースティックオーディオフォーラム」は1月29日(金)と30日(土)に開催予定で、本記事でレポートしたものと同じくスフォルツァートの最上位ネットワークプレーヤー「DSP-01」などを引き続き使用。現在、イベント公式サイトのメールフォームから参加申し込みを受け付けている。

<日時>
・1月29日(金) 19:00〜21:00
・1月30日(土) 13:00〜15:00

<会場>
同社 九段ショールーム
(千代田区九段北2-3-6 九段北二丁目ビル1F)

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