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【特別企画】「良い音」と「部屋の影響」との関係性を考える試聴イベント

“フラットな特性”は“良い音”に繋がるのか? 「アコースティックオーディオフォーラム」潜入レポート

公開日 2015/09/11 11:51
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そして「昔はそれなりの機材を揃えなければならなかったが、今はスマホのアプリなどで特性を測定できるようになっている」と、一般ユーザーでも伝送特性の計測を用意に行えることを紹介し、「では、その計測データをどう見ればいいのか。そしてそれをどう応用して、音質向上に役立てればいいいのかなどを話していきたい」と続けた。

伝送特性について解説

無料アプリでも測定が行える

そして、同社スタッフ宅やショールームでの伝送特性測定結果を紹介。ショールームは9ヶ所測って9ヶ所とも特性が違うという結果だが「特性としてはこうした結果となったが、この部屋の特徴として、どこで聴いてもあまり音の印象は変わらない。データだけ見て一喜一憂しすぎないほうがいい」と、測定結果の数値だけに固執するべきではないことも述べた。

伝送特性の例として、会場となった同社ショールームと同社スタッフ宅の測定データを紹介

ショールームでは9ヶ所でデータを測定

また、「部屋の形が決まると、そこで存在する振動数が決まってしまう」と、音の伝送特性には部屋の形が大きく関係することに言及。「部屋の形が決まってしまうと音もある程度決まってしまう。本当は部屋の形を決めるところが第一歩」だとコメントする。

オーディオルームづくりの基本

そして音楽の楽しみに大きく影響する部屋の残響音について「残響がなめらかに(人間にとって気持よく)減衰するためには、振動モードの発生が重なったり同じところに集約したりしないように、できるだけ均等に並ぶような部屋の形にする必要がある」とし、そうした部屋を作るために、伝送特性の測定データを上手に活用するのだと説明した。

音源再生デモ中には手を耳の前や後ろに動かして聴こえ方の違いを確認する参加者の姿も

鈴木氏は、今回のテーマである伝送特性にも関係のあるオーディオ機器だとしてLINNのEXAKT SYSTEMにも言及。「EXAKT SYSTEMは部屋の情報、機械の伝送特性データなどから自動補正してスピーカーまでデジタル伝送を行う」とコメントする。「スピーカーの配置や家具の配置をコンピュータでシミュレーションしてから微調整してリスニングルームを作れる時代になった」と、PCやスマホアプリで簡単に伝送特性を計測し、活用しやすい時代であることを紹介する。

ここでイベントでは、60年代に録音された戦争レクイエム(CDリッピング音源)を再生。「こういう音楽を聴いてみてもそうだが、音の奥行き感や広がり感、定位感が伝送特性で判断できるのかというとそうではない。あくまでも伝送特性のデータを活用して大まかな目安を決めていくということだ」とし、データだけに縛られるのではないという点を改めて説明。「そこから5センチ、10センチと機器を動かして音を追い込んだりしていくのもオーディオの楽しみだろう」と続けた。

また、鬼太鼓座(おんでこざ)の再生も行い、「こういう低域特性が入っている音源でも、この部屋では音が暴れずパパっと止まる。それは共振周波数が一ヶ所に集中してないからだ。いい形の部屋であれば吸音材などをあまり入れなくてもしっかりと音が定位して聴こえる」とコメント。「太鼓の音のような断続音はこうした点のチェックにも有効だ」と、オーディオ機器の性能ではなく、部屋の持つ響きのチェックのための音源活用法も紹介した。

■音響エンジニア/オーディオライターの橋爪徹氏も参加

なお、初日のイベントには音響エンジニアでオーディオライターでもある橋爪徹氏も参加。橋爪氏がサウンドプロデュースなどを務めるハイレゾ音楽制作ユニット「BEAGLE KICK」の楽曲「next to you」の再生デモも行われた。

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