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【特別企画】“音のよい部屋づくり”とは?

音量とオーディオの魅力は相関するのか? 「第18回Acoustic Audio Forum」で分かった防音のポイント

2015/05/28 編集部:小野佳希
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そして、国際規格化もされている等ラウドネス曲線に触れ、人間が感じる音量は実際の物理的なエネルギー量にそのまま比例するのではなくズレがあることを説明。「一般に、音が小さくなると低音が萎んだように聴こえると言われている。それを補うためにラウドネスコントロール機能を搭載するAV機器もあるが、せっかく高い機器を買ったのに小さな音でしか聴けないのは、スーパーカーを買ったのに20kmくらいでしか走れないようなものだ」と述べ、大音量を出すための防音を今回のテーマにした背景を語った。

周波数の変化と人間の聴覚は単純には比例していない

また、一般的な戸建住宅、マンションそれぞれについて、どのくらいの防音性能を有しているかを紹介。例えば一般的なRC造のマンションの場合、同じ家庭内の隣室へは「D-30〜35」、隣の世帯との壁は「D-45〜50」といった等級の遮音性能が一般的なレベルだが、オーディオファンが満足できる音量を楽しむには、隣室に対して「D-50」、隣世帯に対して「D-60」ほどのレベルが必要だろうと説明する。

一般住宅における遮音性能の例

オーディオにおける遮音性能と聴こえ方の関係性も紹介された

そしてこうした理論を体感するべく、実際に音出しのデモを実施。同一の楽曲を小さめから大音量まで3段階の音量で再生し、来場者それぞれが「ふだん自分で聴いているくらいの音量」と「自分が理想とする音量」を確認するという手法でのデモが行われた。

デモの様子

ふだん聴いている音量、好みの音量を参加者が記入していく試みが展開された

なお、デモにはクラシックやジャズ、和太鼓など様々なジャンルの楽曲を使用。やはり参加者からは「ふだん聴いている音量よりも大きな音で聴きたい」という反応が多くなる傾向にあったが、「やっぱり大音量で聴きたくなるジャンルがある一方、曲によっては小音量でも魅力を感じられるものがあったのではないか」と鈴木氏はコメント。

初日の回にはオーディオ評論家の村井裕弥氏も参加。アコースティックデザインシステムの公式サイトでは村井氏による本イベントのレポート記事が掲載されている

「防音工事をすることにより、高い剛性の床、壁、天井面となるが、これがしっかりとした反射音を得ることにつながる。これと同時に、部屋の寸法比を適切な比率に整えることで、クセが少なく、艶やかな響きが得られる。防音室を作ると、このような音質上のメリットも得られるわけだ」と説明する。また、「今回のテーマとはズレるが、ちゃんと部屋を整えるとリスニングポイントに左右されにくくなる。セッティングもシビアに追い込まなくてもそれなりに鳴ってくれる。部屋をちゃんと作るとそうしたメリットもある」ともコメントし、オーディオ趣味における部屋づくりの重要性を改めて説明した。

ショールーム後方の窓。実際に試聴室の外をまわって遮音性能を確認することもできた

■こだわりが詰まったスフォルツァートの試聴室

2日目の会場となったのは、オーディオ機器メーカー、スフォルツァートの試聴室。アコースティックデザインシステムが設計を手がけており、スフォルツァートの事務所および試聴室のほか、賃貸住宅として3世帯が入居中という少し変わった物件だ。

デモに使用されたシステム

入居者用の玄関口。右側に出っ張っている部分がスフォルツァートの試聴室にあたる

賃貸部分の住人に迷惑をかけないよう「オーディオを楽しむだけならここまでのレベルはいらないのではないかという、とんでもない遮音性能」(鈴木代表)を持たせており、「躯体としては一般的な木造住宅なので、皆さんの悩みの解決のヒントになるようなものがあるのではないか」とコメントする。

スフォルツァート試聴室の遮音性能

製品の内部も公開

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