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ビクタースタジオ・エンジニア名鑑:高桑 秋朝 氏

2015/04/28
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高桑 秋朝 氏

ビクタースタジオ所属レコーディングエンジニア。

新潟出身のB型。趣味は釣りと車と温泉。専門学校卒業後、1999年に入社。以来、ビクタースタジオ一筋の純粋な「ビクター」叩き上げ。生まれてから一度も怒ったことはないのでは、と思わせる程の超温和な性格。これまでにバンド系、JAZZ、クラシック、大編成劇版等、様々なセッションに参加し、その柔らかさが各所で大人気に。

2010年、第17回日本プロ音楽録音賞にて「アビッド賞」授賞、サウンドメイクでもお墨付きを獲得。現在は、群を抜いた生音取り扱いの匠さをベースに、ポップス、 Rock、アコースティック等、ジャンルを問わず幅広く活躍。マルチな方面でも突出したセンスを発揮する若きベテラン。

独身を満喫する、ビクタースタジオのミドルエンジニア。



<高桑氏からのコメント>


こううたう/柴咲コウ

WAV/FLAC 96kHz/24bit
http://hd-music.info/album.cgi/3635

この作品は、新旧さまざまな名曲を柴咲コウさんが歌ったカバーアルバムです。個性豊かなアレンジャー、エンジニアが多数参加し、サウンド面も含めとてもバラエティーに富んだアルバムだと思います。

その中で私は「桜坂」のRec&Mixを担当させて頂きました。

生楽器はW.BassとGGのみで打ち込みが中心のオケですが、谷口尚久さんによるアレンジはシンプルながら緻密に作り込まれ、非常に美しいものでした。

Mixにあたっては、柴咲さんのVocalを中心に、ビート感を出しつつ歌の邪魔をしないリズムトラックのバランス、そして高さと奥行きを感じられるような空間表現を意識して作業にあたりました。特に空間表現において使用するリバーブはとても重要ですが、今回はBricasti社のM7というアウトボードのリバーブをメインに使用しています。

昨今、プラグインのリバーブも素晴らしいものはたくさんありますが、やはり専用設計されたアウトボード機のサウンドは濃密で存在感があり、今回のMixでは重要なポイントになっています。

ハイレゾで聞いて頂く事で、空間表現含め、Mixで意図した表現をより素直に感じて頂けるのではないかと思います。

アルバム全体を通してもそれぞれの楽曲のこだわりをより感じて頂けたら幸いです。




CROSS THE STORIES / JiLL-Decoy association
CROSS THE STORIES / JiLL-Decoy association
WAV/FLAC 192kHz/24bit
アルバム¥2,160(税込)/単曲¥540(税込)

「CROSS THE STORIES / JiLL-Decoy association」は、レコーディングからトラックダウンまで192kHz/32bitで行っています。これまでの192kHzでのレコーディングというと、機材のスペック的に2ch同録、もしくはかなり少ないトラック数で録音したものが多かったように思います。

今回は、ビクタースタジオのProToolsがバージョンアップした事もあり、以前よりもマシンスペックを気にせずに、通常に近いセッティングで録音する事ができました。チューブマイクやヴィンテージ機材も多数使用していますが、その豊かな倍音も感じられるリアルなサウンドで収録できたと思います。
トラックダウン作業も、ハイスペックが故の制約はあったものの、かなり緻密に作り込んであります。

192kHzは非常に表現力豊かなので、ミックスの自由度も高く、それぞれの楽曲の個性をより際立たせる事を意識して作業にあたりました。

各楽器、ボーカルの音のリアルさはもちろん、それぞれの楽曲の世界感もより感じて頂ける作品に仕上がったと思います。是非、お楽しみ頂ければと思います。





あまちゃんLIVE〜あまちゃん スペシャルビックバンド コンサートin NHKホール〜/大友良英&「あまちゃん」スペシャルビックバンド
あまちゃんLIVE
〜あまちゃん スペシャルビックバンド コンサートin NHKホール〜
/大友良英&「あまちゃん」スペシャルビックバンド

WAV/FLAC 96kHz/24bit ¥3,240(アルバム)/¥540(単曲)
http://hd-music.info/album.cgi/685
この作品は2013年12月5日 NHKホールでのライブを収録したものです。

当時、ドラマは終了していたものの、あまちゃんブームはまだまだ冷めず、会場は非常に盛り上がり、熱気に包まれたとても良いライブでした。収録していた私も思わず感動してしまった事を覚えています。

作品にするにあたり、バンドの和気あいあいとした雰囲気、そしてライブ当日の空気感をそのままお伝えする事をコンセプトに作業にあたりました。

ライブレコーディングでは、客席に立てるマイクは非常に重要になります。今回はステージ方向からNEUMANN U87、会場天井からB&K 4006を吊り、客席後方にAKG 414をそれぞれステレオで使用しています。96kHz/24bitで収録する事で、その膨大な情報量をうまくとらえる事ができたと思います。

トラックダウン作業においてもこちらで過度な演出をする事はさけ、演奏のダイナミクス、会場の空気感をナチュラルに表現するよう心がけました。基本作業はProToolsで行っていますが、最終的にSSL6000Gに各楽器を立ち上げてミックスする事で、より柔らかく音楽的にまとめる事ができたと思います。

ハイレゾで聞いて頂く事で、その臨場感、アナログ機器を多用したこだわりの部分まで感じて頂けるのではないかと思います。

今回のライブはストーリー性もとても素晴らしいものでした。出来れば通して作品を聞いて頂き、当日の感動を共有して頂けたら幸いです。

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