HOME > レビュー > ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 − ペシェック(指揮)マーラー:交響曲第2番「復活」

ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 − ペシェック(指揮)マーラー:交響曲第2番「復活」

2015/03/30
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

ペシェック(指揮)/ マーラー:交響曲 第2番「復活」
WAV/FLAC 96kHz/24bit ¥3,240(アルバム)
http://hd-music.info/album.cgi/487



今回のセレクトは「グスタフ・マーラー:交響曲 第2番 ハ短調「復活」/リボル・ペシェック指揮、チェコ・ナショナル交響楽団」、初のクラシックのご紹介だ。

本作は、チェコの首都プラハにあるドヴォルザークホールにてダイレクトに96kHz/24bitでレコーディングされた音源を、そのまま一切の手を加えずにハイレゾマスターとした、純粋な「96kHz/24bitダイレクト・デジタルマスター」である。

クラシックのホール録音では、テイクや素材を幾つも録ることがあり、アーティストやプロデューサーの意向に添ってその素材からOKテイクをマスタリングで編集するケースがある。その際、エンジニアには複数のテイクからの正確で素早い高度なエディティングワークは勿論、楽譜を見ながらの音楽的な理解力とセンスが要求される。ビクタースタジオのエンジニアは、この高いスキルがあって初めてクラシックを手掛けられる。

本作品では、マスタリングでの編集作業は一切なく、サウンド的にも非常に完成度の高い音源が持ち込まれたとのこと。と言うと、マスタリングでの役割は何もないかと思われがちだが、そうではない。素晴らしい仕上がりであれば、今度はそれを変わることなくお届けする為に使用する機材や手順に細心の注意を払い、最終的にはケーブルの種類や長さにまでにも拘ってマスターづくりをおこなう。「良い」との判断力とそれを敢えて手を加えない潔さ、そして以降は徹底してピュアな状態で仕上げるノウハウと経験もマスタリングエンジニアの大きな力。本作ではそのことを聴いた瞬間でお分かり頂ける。音が出た瞬間に感じとれる、ホールの空気感・臨場感とストリングスの弦を擦るさままで伝わってくる圧倒的な表現力は、まさに鳥肌もの。クラシックファンのみならず、必聴の作品だ。



担当エンジニア:山崎 和重 氏


山崎 和重 氏
ビクタースタジオFLAIR所属マスタリングエンジニア。ビクタースタジオのカセットコピー室(当時)から編集室を経て、1990年よりFLAIRに所属の生え抜きのマスタリングエンジニア。

ジャンルは問わず、ポップス、ロックからアニメの劇伴、そしてクラシックと間口は広い。クラシックの複数テイクを複合した繊細なエディットから、バンドのメンバー立ち会いの記録的な長時間マスタリングと、極端な二面性を事も無げにこなす。

加えて、次世代フォーマットへの最重要人物として業界より圧倒的な支持を得る。その主戦場は“Blu-ray・DVD"。激変する著しい複雑怪奇なフォーマットにも果敢にアプローチし、瞬時に体得。卓越したスキルと、探求心・弛まぬ努力を併せ持つ。既存の2chは勿論、ハイスペックメディアやサラウンドマルチチャンネルまでその守備範囲に隙はない。映像ものではMAにまで手掛け、対応範囲を更に拡大。更に華やかさに磨きをかける独特な腕と神業のエディティング・テクニックで、常に仕上がりを頂点へと誘う。それでも持ち込まれた音源の音および生音尊重志向。

<山崎氏からのコメント>
チェコ・ナショナル交響楽団は常に演奏会と録音をセットで考えているそうです。練習・演奏会本番・そして録音と云う流れです。これにより効果的に、より効率的に録音セッションが進み、非常に完成度の高い作品が生まれます。

今作も同様の手順で録音されていますので、先ずお楽しみ頂きたいのはこの鮮度の高い演奏です。演奏会後時間を空けずに録音する(そのまま深夜に録音するケースもあるらしい)ので、指揮者もオーケストラ・メンバーも楽曲の流れを熟知していて、緊張感を保ちつつスムーズに録音セッションが進み、最良のテイクが得られます。

そして「豊かで力強く、且つ繊細」なドヴォルザーク・ホールの響きも聴きどころです。これまでにも、CDである程度は表現されていましたが、「96kHz/24bit」のこのオリジナル録音ではさらに深く、ピアニシモ等の部分でも高い解像度を誇っています。

さらに、この作品は完成度が非常に高くマスタリング時に不必要な手を加えることなくハイレゾ音源化させて頂きましたので、その「鮮度」も存分にご堪能頂けると思います。


<本作プロデューサーからのコメント>
レコーディングはヨーロッパでも屈指の名ホールとして名高いプラハ・芸術家の家ドヴォルザークホールに於いて、2010年1月に行なわれました。第1楽章の冒頭、低音弦が他の弦楽器のトレモロの下で途切れがちではあるがドラマチックな第一主題を呈示、続いてヴァイオリンが優美で柔らかい第二主題を奏し再び低音弦が出るとホルンと木管楽器による葬送行進曲へと続く様等々。各楽器の音色の絶妙なブレンドで綴られた表現によって田園的、ボヘミア的な素朴さやボヘミアの民族的なリズムを存分に生かした新鮮で洗練されたものが、そのニュアンスと奥深さに強い説得力を持たせています。これらは明らかに96kHz/24bitの効果と、名ホールとハイレゾ収録の賜物だと実感しています。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: