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【特別企画】アコースティックデザインシステムによる試聴会を直撃取材

「部屋の吸音」と「レコードの魅力」の密接な関係を体感 − 「第17回 Acoustic Audio Forum」開催レポート

公開日 2015/03/16 11:55 編集部:小野佳希
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当日はまず試聴に先立ち、部屋の響きや吸音についての基礎知識を鈴木氏が解説。外壁と内壁、屋根や天井などの間に空気層がある一般的な構造の部屋では“太鼓現象”によって音が共振を起こすことに触れ、「例えばオーディオで少し音量を上げると歪みっぽくなるのは、壁の板振動による共振・共鳴を聴くことになってしまうから。我々はスピーカーからの直接音だけでなく、扉、壁、天井からの反射音も同時に聴いている。試聴位置によっては、反射音の割合が多いときもあるので、できるだけ共振しにくい高剛性の構造を作ることが大切だ」と説明する。

一般的な家屋では太鼓のように壁が振動してしまう

また、人間の声にも20kHz以上の音が含まれていたり、楽器演奏でも倍音成分で20kHz以上の音があることなどにも言及。「CDの規格化の時点では技術的な妥協もあって20kHz以上をカットすることとなったが、人間の生活においては20kHz以上の音も意味があることが分かるだろう。特に音楽は、それがあるかないかでアルファ波の出方が違うことが脳科学で証明されている」とコメント。「筋金入りのレコード派には『CDの音なんか聴けたもんじゃない』と言う人もいるが、このあたりが理由のひとつなのではないか」と続けた。

楽器の音に20kHz以上の周波数が含まれていることを実測データで紹介

なお、改めておさらいをしておくと、CDの規格において20kHz以上をカットしたのは、人間の可聴域の高域側の限界が20kHzだとされているから。人間には聴こえないとされる音域を収録しないことによってデータ容量を圧縮し、音源の収録時間を伸ばしたわけだ。

ここでイベントでは、「人間の可聴域限界が20kHz」は本当かを確認するべく、周波数ごとのサイン波を再生するデモを実施。10kHz、13kHz、20kHzと周波数を高くしながら参加者が実際の可聴域を体現する試みも行われた。

実験では確かに来場者全員が20kHzの周波数帯を認知できなかった。しかし、同社はバイオリンなど楽器の演奏音には20kHz以上の成分も含まれているという実測データも紹介。サイン波とは違い、実際の音楽では我々は20kHz以上の帯域も含まれた音を楽しんでいるのであり、だからこそハイレゾやアナログ文化が盛り上がっているのだろうことを改めて紹介した。

バイオリンの演奏音の周波数実測データ。基音(赤いライン)以外にも様々な周波数帯域の音出ており、倍音(青いライン)のように20kHz以上の成分も含まれている

■吸音パターンによってレコードの音質はどう変わる?

レコード再生においては、「吸音材なし」「オーディオ機器背面(参加者の席の正面)の壁・左右壁面に吸音材あり」「機器背面のみ吸音」という3パターンでデモ。同じ楽曲がそれぞれの状況でどのように異なって聴こえるのかを試した。

吸音材の設置したり取り外したりしながら同一音源の聴こえ方をチェック

3パターンでデモ。一次反射音のコントロールの仕方によってどのように聴こえ方が変わるのかを確認した

デモ音源には、レナード・スラットキン指揮/セントルイス交響楽団「ボレロ」(1980年録音)、荒井由実「ひこうき雲」(1980年録音)、カーメン・マクレエ「時に楽しく」(1965年録音)、Rosset Meyer Geiger「Mannsgoggel's Ride」(2012年録音)などを使用。そのほかにも、グレゴリオ・パナグワ指揮/アトリウム・ムジケー古楽合奏団による古代ギリシャ音楽(1978年録音)、ESPERANZA SPALDING「The Peacocks」(2005年録音)など、ジャンルも年代も様々なレコードが用意された。

吸音パターンによる音質傾向の違いをマトリクス式にメモする試みも

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