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「スマートな機能」の具体例と今後の可能性

【海上忍のAV注目キーワード辞典】第9回:スマートテレビ − 「スマート」という言葉は何を指す?

公開日 2012/08/24 11:43 海上 忍
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【第9回:スマートテレビ】

いまや接頭語として大人気の「スマート」。AV機器の主役であるテレビも例に漏れず「スマートテレビ」を標榜するようになり、語感のよさも手伝い急速に浸透する勢いだ。ここでは、その抽象的な「スマートテレビ」の姿を見極めたい。

■スマートは「賢い」

スマートフォン、スマートグリッド、スマートハウス……近年、「スマート」から始まる言葉が流行りだ。ここ日本では「スマートな体型」などのように、ほっそりとした容姿を指すことが多いが、この場合は「賢い」「洗練された」という英語本来の意味で用いられる。多機能・高性能携帯電話は従来品に比べ賢い、だからスマートフォンというわけだ。

昨年あたりから耳にする機会が増えた「スマートテレビ」も、そっくりそのまま「賢いテレビ」と理解していい。こちらも従来のテレビとの相対比較における賢さであり、賢さを感じさせる機能がフィーチャーされたテレビにつけた愛称だ。

メーカーは各社各様の機能を盛り込んだ「スマートテレビ」を送り出しているが、漠然とした共通事項も存在する。業界標準規格があるわけでなし、仕様に対する拘束力はまったく存在しないが、逆に「スマート」という言葉が機能を選別している状況もある。言葉の共通性からスマートフォンと連携する機能を盛り込むことは、その最たるものだろう。

サムスンはCESやIFAなどのイベントで「SMART」を大々的にアピールしていた

■キーワードは「連携」

そのように"名乗ったもの勝ち"的状況のスマートテレビだが、前述のように漠然とした共通認識は存在する。それはこれからのテレビに求められる新機能であり、放送波も含めたフルデジタル化の次に来る機能でもある。ここでは、その主な機能をピックアップしてみよう。

・ネットワーク対応

有線/無線LANでの通信(TCP/IP)に対応し、いつでもインターネットに接続できる状態にあることは、いわばスマートテレビの大前提。ただし、メールの読み書きやWebブラウザが使えます、といったパソコン的機能ではなく、他の機器と連携したり、コンテンツをダウンロードしたり、クラウドに保存した映像/写真にアクセスしたり、といった完全にビジュアル方面にターゲットした機能に利用されることがスマートテレビ流といえる。

Wi-Fiを内蔵したパナソニックの“VIERA ZT5シリーズ”

ソニー“BRAVIA”「KDL-40EX750」の背面端子部。左下にLAN端子が確認できる

・「アプリ」への対応

任意のソフトウェア(アプリ)を動作させるための「アプリ実行環境」も、スマートテレビに求められる機能のひとつだ。すでに国内メーカーも、パナソニックは「ビエラ・コネクト」、ソニーは「アプリキャスト」などとして展開しており、今後の進展次第ではスマートテレビの重要基盤に成長する可能性がある。

ビエラ・コネクトを例に説明してみよう。パナソニックはテレビをネット接続させるためのJavaScript/XMLの処理系「Ajax-CE」を独自に規定しており、それがビエラ・コネクトのエンジン部分となるのだが(「VIERA Cast」の進化版)、そこでは3Dグラフィックスの関数群(API)までもが用意され、CPUが直接解釈できるため処理速度に優れるネイティブアプリケーションも実行可能だ。

ビエラ・コネクトのUI

・スマートフォン/タブレットとの連携

わかりやすい「スマートテレビらしさ」を演出できるのは、このカテゴリの機能だろう。ワイヤレス通信でリモコン替わりに使う、タッチパネルで入力した情報をテレビに転送する、などスマートフォンに専用アプリを用意することで連携性を強化できる。

シャープの「おしえてリモコン」アプリ。放送中のテレビ番組を、Twitterの盛り上がり度合いを見ながらそのまま選局できる

スマートフォンを表示装置の一部として使う、という方向での機能強化も今後進むはずだ。当面はアプリを介した連携が中心となるにしても、今後登場する放送波ベースのサービスやインターネットサービスにも対応していくことだろう。

たとえば、NHK技研を中心に開発が進められ、NHK技研公開 2012でも展示された放送通信連携システム「Hybridcast」(関連ニュース)のように、スマートフォン/タブレットをセカンドスクリーンと位置づけた放送サービスは、スマートテレビの未来像のひとつとも考えられる。

Hybridcastの例。動く選手の上に選手名も表示。手元のタブレットでは任意の選手だけ名前を表示するなどといった設定を行える

・レコーダー/プレーヤーとの連携

DLNAへの対応も必須といえるだろう。サーバ機能(DMS)を備えるデバイスにアクセスしてコンテンツを再生する(DMP)、アプリから指示を受けてコンテンツの再生のみ行う(DMR)など、ビデオレコーダーと連携した機能は消費者のニーズも高い。

コピー保護技術に対応するため、DTCP-IPのサポートも欠かせなくなった。これは連携するスマートフォン/タブレット側でのサポートも必須だが、DLNA/DTCP-IPの標準装備化が進めば、録画した番組を離れた位置で視聴することが容易になる。たとえば、「nasne」のようなネットワークレコーダーに番組を保存しておき、好きなときに好きな場所で楽しむ、という使い方だ。

■「テレビ」から「ディスプレイ」へ

以上の項目を眺めていくと、スマートテレビとは『「テレビ」から「ディスプレイ」への過渡期』に位置するデバイスであることが見えてくる。

ここでいう「スマート」とは、単純に高性能/高品質であることではなく、ネットワーク対応やスマートフォン/タブレットとの連携により、情報への対応が進むことを意味する。誕生以来テレビの役割は"放送波の受像器"だったが、それは数ある機能のうちのひとつになり、インターネット経由で映像を受信するなど、絵に関連したさまざまなコンテンツにアクセスすることが主な役割となるのだ。

そうなると、新たな課題が生まれてくる。従来は信号を忠実に再現することに力点が置かれていた開発が、ネットワーク配信された映像を遅滞なく表示するデバイスとして、アプリの実行環境として、DLNAサーバ/クライアントとして、ディスプレイの総合力を追求する方向へと転換を求められるだろう。その評価基準も、従来のパネル/高画質化機能一辺倒ではなく、トータルの処理能力やユーザインターフェイスの洗練度、アプリおよび対応サービスの充実といった項目が加わるに違いない。

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