新製品批評
Phile-web >> 製品批評 >> TEAC 「CDサウンド・アップグレーダー」

「CDサウンド・アップグレーダー」(¥75,000)を持つ筆者。ドイツから届いた画期的なディスク音質向上マシンだ(以降の写真はすべてクリックで拡大)

オーディオアクセサリー108号、「旬の音本舗・福田屋」のコーナーで紹介した、ドイツのCDサウンド・アップグレーダーが、英国の名門、タンノイの輸入発売元、なんとティアックから発売されることになった。問い合わせてみると、ティアックは今後アクセサリー製品の拡充を目指しているといい、今回のアクセサリーはCDプレーヤーでターンテーブルメカを特徴とするティアック独自の技術とターンテーブルを使ったアクセサリーに共通したイメージを感じたことが背景のようである。

CD盤の音質を改良する方法は幾つも製品化されてきた。スタビライザー、外周の塗布、磁気のキャンセル。不変のデジタル記録もオーディオではアナログ同様に音質に違いを発生する。光ディスクではもうやりつくしたと思っていたが、ドイツの青年が大胆な外周切削、塗布の方法を製品化した。それがCDサウンド・アップグレーダーである。 昨年、ドイツのオーディオショーで話題になっていた製品を手にすると、ベルトドライブのターンテーブルとアーム、工作機械のような構造である。アームは手動式、レバーで水平方向に動く。ここは精度の高い作りで、先端に取り付けられたカッターを動作させる。

カッターは角度を付けた鋭い刃を固定。つまみを回すとモーターが回転、スピードを調整できる。後方の大きな穴はここに掃除機のホースを装着して削りかすを吸い出すためのもの。付属品に黒のマジックペンとクリーニングブラシ。

ポイントはCD盤外周を一定の角度で切削することである。この角度に意味がある。仕上げに削った面に黒のインクを塗布する。この方法が音質を改善する理論は公表されていないが、これからするとCD盤に照射されたレーザービームの光に作用させるものと思う。

外周を斜めに削るというのは初めてだ。大胆なアイデアである。操作はターンテーブル中心のボルトを外し、ターンテーブルにCDの記録面を上にして置きプレートを乗せ、ボルトで固定する。スイッチを回すと回転速度が上がっていく。最高にした状態でアームを操作させる。アーム先端の刃は約10mmの移動でストッパーが効くので削り過ぎという失敗はないが、ゆっくり一定というのがコツ。刃があたると糸のように削りかすが出てくる。終了後、スピードを落としてインクを塗る。

本体手前部分。左下にあるスイッチを回すとターンテーブルが回転する 本体の奥側。左下は電源プラグ接続端子、右下の丸は掃除機のノズルを差し込む穴
 
ディスクのエッジをカットした後、黒のマジックでエッジを塗る。油性でも水性でもいいのだが、油性ではあとで修正ができないので、水性がオススメ 右側が処理前のディスク、左が処理後のディスク。エッジが斜めにカットされ、黒く塗られているのがおわかり頂けるはず
 
本機には、カットの練習用CDが2枚と交換用ベルト、マジック、切りクズを掃除するためのハケが付属する CDをターンテーブルにセット→エッジをカット→マジック塗布までを動画でご紹介。マジック塗布の際は回転を少し遅くするとやりやすい。(Real形式/約4.1MB)RealPlayerをお持ちでない方はこちらからダウンロードして下さい。

こうして何枚かやってみたがCDが破損するような心配はない。同じCD2枚で比較、聴きなれたCDなどでテスト。これは明確な効果が現れる。2枚で比較した「山本英次ソロピアノ/トゥーファツィオリ」はダイナミックなジャズピアノである。未処理と慎重に聴き比べると、低音の緩みが少なくなりダンピングが強化されたのがわかる。

音程の分解力、アタックの立ち上がりが向上する。こもりは減少、抜けがよくなり、ピアノはスカッと立ち上がる。低音の響きが緩く分散しないため力感はいっそう強くなった。中低域のアタックは高速にエネルギーが一気に立ち上がる。くもり、濁りが減少、純度を高めエネルギー力、スピードを増す。このCDでは悪くなった要素は感じない。他のアルバムも試す。「トーマス・スタンコン・クァルテット」(ECM)は繊細に伸びたデリケートなシンバルの粒立、高域の微妙な部分はどのようになってしまうのかを中心に試聴。このCDはSNが高く高域の情報量は多いが、線が細く中域は薄い傾向がある。処理後、シンバルの芯が確り厚く立ってきたのは驚いた。中域、高域のSN、解像度を高め一音一音の表情が明確に現れるようになっている。にじみが大きく減少。かすれがちな微妙な高域成分の表情が冴えて精度を高める。低音は引き締まる傾向。歪感が減少、アルバムは魅力を高めた。この様子では手持ちの古い録音のアルバムも蘇るのではないか。

AA誌108号に付録のCDを処理、試聴を公開実験したこともある。音場の透明度が増して各パートは明瞭になり、参加者の80%が効果を認識した。音場空間のSNを高めクラシックにも効果を発揮することがわかる。透明度、中低域の分解力を高めるため、DVDビデオのライブ音楽もののサウンドにも使ってみたい。

外形寸法:190W×140H×273D(本体のみ)/340D(突起部含む)mm 
質量:3.62kg 
電源:100V 50-60Hz  
付属品:CDエッジ塗布用フェルトペン(黒)、交換用ベルト×1、清掃用ハケ×1、トレーニング用ディスク×2