新製品批評

『グッドナイト・ムーン』の2つの視覚的対立要素に着目

 正面にセットされたディスプレーには、対立する二人の女性の姿が映し出されている。二人は、一人の男性、ルークを間に3角関係にある。ジュリア・ロバーツ演じる若い女性、イザベルはルークの現在の恋人であり、スーザン・サランドン演じる中年過ぎの女性、ジャッキーはルークの妻である。映画の邦題は『グットナイト・ムーン』。公開当時、最も旬な女優、ロバーツと、演技派女優、サランドンの共演で話題を呼んだが、ルークに対するイザベルの激しい情念と、二人の子供への愛情を貫くジャッキーの対峙は、テンションに満ちている。  このシーンで重要なのは、日常の中でのドラマチックな描写である。 現実感を失わぬ範囲で、二人の対立を際立たせることが大切だ。視覚で捉えられる対立要素は、二つある。一つは二人の女性の顔色。名の売れたファッションカメラマンを演じるロバーツの肌は、白く美しいほどいい。ガンを病み、夫に裏切られた女性を演じるサランドンの肌は、やや黒ずんでいていい。もう一つの要素は二人の背景がある。シーンの冒頭、サランドンは、一面が紅葉の庭の中に座っている。二人が対立する時も、サドンの背景は紅葉、ロバーツの背景は常緑樹の深い緑だ。それを背景にしたロバーツの白い顔は、くっきりと浮き出て、その分、画面が生み出すテンションはさらに強くなる。
 

映画の真意を表現する、満足できる調整が行えた

 私は、この映画を観る時、こうした対比を少し強調するのが好きだ。コントラストをやや強めに、肌色はロバーツの顔色の白さを厳守する。こうした調整をおこなってから観ると、このシーンの対立のドラマは、さらに強く心を打ち、やがてくる和解のシーンが、さらに感動的になるのだ。  ところが、ディスプレーによっては、私が意図したような調整が出来ぬ製品が多い。ロバーツの肌色を白く維持しようとしても、赤みが抜けきれず、色の濃さを抜いて調整しようとすると、肌の艶が失われてしまうといったディスプレーが多く、階調表現もなかなか満足に調整出来ぬことが多いのだ。  だが、私が目前にしているFUJITSUのプラズマ・ディスプレー、PDS4233J−Sの画面では、私が望む対立の描写が、くっきりと表現されていた。ロバーツの顔色は、真っ白ではないが、白にやや赤みが加わったくらい。背景とのコントラストはくっきりと表現され、しかも、日常の風景として不自然にはなっていない。紅葉の中間色もどぎつくなく、飽くまで自然な佇まいを維持している。サランドンが自分がガンであることを告白し、ロバーツが“死ぬの?”と問い返すくだりでは、私の目にじんとくる刺激が走った。満足できる調整が行えた時に、必ずといっていいほど起こる条件反射だ。


視聴は富士通ゼネラル本社で行った。PDS4233J-SとPDS4241J-Sの2台を並べ、同じソースを同時に表示。それぞれの特徴が浮き彫りになった

PDS4233J-SとPDS4241J-Sの外観とサイズは同一。パネル周りのフレームはスッキリとまとめられ、視聴時に圧迫感が無い。奥行きも85mmとスリムである

黒の表現、中間階調の表現を両立した

 PDS4233J−Sの画質プリセットモードには、〔ファインモード〕がある。映画を観る時には、このモードを起点に、映像を追い込んでいくといい。このモードでは、映画フィルムを再現する時に好ましいガンマカーブが設定されているのだ。普通、固体素子のディスプレーで映画を再生するときに問題になるのは、黒が浮き気味になること、黒に近い暗部が黒に潰れてしまったり、明るく浮き上がったりする現象である。これらは、もちろん解決しなければならない問題だが、しかし、その他にも問題はある。今回例に上げたような中間の階調での色の表現だ。PDS4233J−Sのファインモードは、その両方に対して、効果的に作動させることができる。 
 上記のシーンの次のシーンは、ジャッキーが夫、ルークに会い、自分がガンであることを子供に知らせるかどうかを相談するシーンだ。場所は夜のレストラン。暗目に照明されている粋な店内で向かい会う二人の映像は、黒浮き、黒潰れのあるディスプレーでは、正確に表出することが難しい雰囲気だ。
 だが、プラズマパネルの映像に映し出された店内の情景は、微妙な暗部のコントラストがリアルに好ましく表現されている。二人の背景にある壁や装飾は、潰れずに見えるが、はっきりとしすぎることもない。二人の顔は、適度な暗さで描かれて、感情の起伏は明瞭に読み取れる。この時の調整値は、勿論、前記のシーンのままである。私は、個人的に、このディスプレーが生み出す映像が好きである。特に、現代を描いた映画作品を、中程度の色温度で観る時の映像に惚れ込んでいる。このように現代劇に好ましい映像が得られるディスプレーは、実のところ非常に少ないのだ。
 FUJITSUには、もう一つの42型プラズマディスプレー、PDS4241J−Sがある。こちらは同社独自のALIS方式のパネルを使用したモデルで、1024×1024という高い解像度を実現している。解像度とは、画面の細部を何処まで表現出来るかという尺度で、数値が高いほど緻密な画面となる。こちらは、どちらかというと、BSハイビジョン放送、ビデオ映像への適合度が高いディスプレーだ。

 
下で紹介している天吊りユニットを使えば、写真のような設置も可能。家庭内で天吊りを行う例は稀だが、新しいスタイルとしてぜひ挑戦してみてほしい   同じく、壁掛けユニットも別売りで用意。プラズマの薄さ、軽さのメリットを一番享受できるスタイルだ

高解像度が鮮やかなPDS4241、フィルムトーンの再現が好ましいPDS4233

 PDS4241J−Sも、前記、PDS4233J−Sも、AVM(アドハンスド・ビデオ・ムーブメント)と呼ばれるビデオ・プロセッサーを搭載している。このプロセッサーでは、動き適応のプログレッシブ処理、高精度拡大/縮小フィルタ処理、拡縮追従型輪郭強調処理、デジタルAGCなど、聞いただけでも難しい信号処理の数々を行うが、分かり易く言えば、いままでは、デジタル/アナログ処理が混在し、他のパネルのために造られたデバイスを使用したりしていたのを、フルデジタル化し、同社のプラズマパネルに特化した処理をおこなうプロセッサーを作り上げたということだ。フルデジタル化した効果は、はっきりと画質に現れている。画面の鮮やかさ、クリアー差が増し、それでいながら、輪郭も画調も自然に保たれている。  PDS4241J−Sで観るBSデジタルハイビジョン放送の映像は、とても素敵である。収録場所の空気感が伝わるような緻密さ、被写体の細かい粒子までが見えるような質感、距離のある空間の遠近感のダイナミズムが、くっきりと表現されているのだ。
 映画映像に対しての適正もあるが、画質のトーン、佇まいにおいてはPDS4233J−Sには敵わない。本機が劣るのではなく、PDS4233J−Sがより好ましく対応しているのだ。これは製品の個性といっていい。1つは映画映像に特化した個性、もう1つはハイビジョンとビデオ映像に特化した個性。この2つの個性を持つことで、FUJITSUの製品構成はより強固なものになった。

42V型用オプション品一覧
品名及び機種名 特長と仕様 希望小売価格
P-42TT33-H
 

●外形寸法:W678XH215.7XD352 [mm] ●質量2.35kg

26,000円
(税別)
【壁掛けユニット】
P-42WB12-B
1ユニットで縦型・横型の両方の設置が可能

■チルト機能0〜15°(横取付)
■チルト機能0〜5°(縦取付)
■チルト機能により映り込みの軽減に対応

●外形寸法W532XH519XD15[mm] ●質量4.2kg

40,000円
(税別)
【フロアラックスタンド】
P-42FS12-S
パソコンやマウスの置き台もついた、プレゼン用に最適なスタンド


●外形寸法:W600XH1680XD600[mm] ●質量:35kg ●画面センター:1400,1600[mm] ●チルト機能:0〜5°

150,000円
(税別)
【天吊りユニット】
P-42CT11-B
背面ユニットと天井取付部のみの構成

<天井取付部>●外形寸法:W300XH250XD300[mm]●質量:4.58kg 
<背面ユニット>●外形寸法:W365XH255XD112[mm]●質量:5.9kg

※ポール部は、天吊りユニットに付属されていない。詳しくは同社営業窓口まで問い合わせを。

43、000円
(税別)
【スピーカー】
P-42SP11-H

【スピーカースタンド】
P-42ST11-H
[スピーカー]
薄型高音質のスピーカー。付属の金具にてディスプレイの横にすっきり配置できる。

●再生周波数帯域:70〜30,000Hz ●定格入力:20W ●最大入力:60W ●インピーダンス:6Ω ●方式:2ウェイ3スピーカー・バスレフタイプ ●外形寸法:W100XH640XD85[mm] ●質量:2.3kgX2

55,000円
(税別)
[スピーカースタンド]
●外形寸法W230XH102XD200[mm] ●質量:0.45kgX2
15,000円
(税別)

PDS4242J-S SPECIFICATIONS   PDS4233J-S SPECIFICATIONS
画面サイズ:42型ワイド
表示画素数:1024×1024
外部入力端子(ビデオ関連):ビデオ1(BNC)、Sビデオ1、コンポーネント1(BNC)、D4端子1
対応方式:NTSC/PAL/SECAM/PAL60/N-PAL/M-PAL/4.43NTSC
消費電力:390W(待機時2W)
外形寸法:103.5W×64.0H×8.5Dcm
質量:28.5kg
  画面サイズ:42型ワイド
表示画素数:852×480
外部入力端子(ビデオ関連):ビデオ1(BNC)、Sビデオ1、コンポーネント1(BNC)、D4端子1
対応方式:NTSC/PAL/SECAM/PAL60/N-PAL/M-PAL/4.43NTSC
消費電力:305W(待機時2W)
外形寸法:103.5W×64.0H×8.5Dcm
質量:28.5kg
■富士通ゼネラルホームページ:http://www.fujitsugeneral.co.jp
■製品の詳細:http://www.fujitsugeneral.co.jp/plasma/business/frame-busi_6101jh.html
■「PDS4241J-S」関連のPhile-webニュース【富士通ゼネラル、フルデジタルビデオプロセッサ「AVM」新搭載の50型/42型ワイドPDP】: /news/d-av/200108/13/2877.html
■「PDS4233J-S」関連のPhile-webニュース 【富士通ゼネラル、独自開発のビデオプロセッサーを搭載の42/50型プラズマディスプレイ】:/news/d-av/200111/15/3615.html


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