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 ここで、本機の映像と音の印象をまとめておこう。DVDの映像は、細部までしっかりコントラストを確保した切れの良さに特徴がある。プラズマディスプレイや投写型プロジェクターなど大画面での描写性能にもまったく不安はなく、奥行きの再現力、階調の描き分けも実にていねいで不自然なくせがない。画面全体から伝わる安定感の高さは、ジッターを徹底的に排除する堅牢なメカニズムと無縁ではなさそうだ。

 DVDビデオの音声は、低音に深みと立体感があり、安定したバランスで聴かせる。本機でデコードしたアナログ出力は、台詞の肉声感と表情の豊かさに特徴があり、エフェクト音や音楽にも独特のリアリティが感じられた。組み合わせるアンプにもよるが、本機でデコードした方が情報量や空間密度の高さの点で有利なケースも少なくないだろう。

 CDの音には、既存のDVDプレーヤーとは格段の違いがあった。S/Nがよく、音場の立体的な再現力が高いことが、一聴しただけですぐにわかるのだ。RDOT+FIR処理を適用すると、さらに音楽的な表現力に磨きがかかる。空間のアコースティックスを生かしたクラシックやジャズの録音では、自然に定位する声やソロ楽器のまわりに、温かみを帯びた空気のかたまりが浮かんでいる様子が実感できる。コンサートホールで体験する響きに近く、いやな響きがまとわりつくことがまったくない。力強いFIRフィルターモードの音と聴き比べるのも面白いだろう。

今回は本機で再生可能な全てのデジタルフォーマットを視聴した。本機の持つ安定感、豊かな音と映像の表現力を目の当たりにした筆者・山之内氏は、ハイエンドファンのための新たなユニバーサルプレーヤーの登場に喜びを隠せない様子であった



組合わせるディスプレイの種類や鑑賞するソフトに合わせ、画質を詳細に渡り調整することが可能だ

上左右は2ページに渡る画質調整項目の一覧

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音声関連の調整項目も豊富だ

 DVDオーディオの再生音は、粒立ちの良さと潤いのある響きが両立し、たいへん心地よい。マルチチャンネル録音ならではの低音の力強さ、空間スケールの大きさには、普及機とは一線を画す余裕が感じられる。この余裕は、SACDのマルチチャンネル音源でも印象に残った。特にSACDでは、低弦楽器やティンパニの開放的な低音の響き、空気がマッシブに動いている様子など、ホールで味わう感覚を追体験できるリアリティの高さに感銘を受けた。

 今回の視聴では、エソテリックの徹底した無共振&高剛性思想が、音楽だけでなく、映像の表現力にも深みを加えていることがわかった。音楽、そしてオーディオの奥の深さを知り尽くしたうえで、映像にもその深さを求める人に薦めたい製品である。