家庭へと急速に浸透を始めた、AVCHD方式のハイビジョンビデオカメラ。現在発売されているテレビの大部分ではAVCHDで撮影した映像を直接再生できず、より手軽に再生できるプレーヤーの選択肢を探している人も多いことだろう。今回はそんな悩みを解決してくれるアイテムとして、バッファローの“LinkTheater”「LT-H90WN」を紹介したい。

LT-H90WNは、LANで接続された機器内の映像や音声ファイルを再生できる、いわゆるネットワークプレーヤーだ。テレビとHDMIケーブルで接続し、ハイビジョン表示のGUIを見ながらメニューを表示して、PCのHDDに保存した動画はもちろん、USB接続のメモリカードの映像も直接読み込んで再生できる。

バッファロー“LinkTheater”「LT-H90WN」 付属のリモコン。くびれがついていて持ちやすい

ネットワーク動画プレーヤーとしての機能に着目すると、まずネットワーク機能では無線LANの最新規格であるIEEE802.11nと有線LANの両方に対応。どちらを使っても、PCに保存した動画、静止画、音楽に直接アクセスできる。また、家庭内LANを用いたAVファイル共有の業界標準規格であるDLNAに対応しているため、最近ではPCやデジタルレコーダー、HDDコンポ、デジタルカメラにまで広がりはじめた、家電中心のホームネットワークとの親和性も高い。もちろん動画はハイビジョン対応、著作権保護技術のDTCP-IPにも対応予定と、デジタル放送を録画した番組の再生に必要な条件も網羅する。

ハイビジョン対応の映像、静止画、音楽と、現在考えられるすべての機能をコンパクトな筐体に収め、付属のリモコンで簡単に操作できる製品は、LT-H90WNのほかにはないだろう。あとはどれだけ使える製品なのか、実際に機器を操作して検証してみるとしよう。

まずはLT-H90WNの目玉機能である、AVCHDビデオカメラで撮影した映像の再生を検証してみよう。

今回は、テスト用にパナソニックのHDC-SD5を用意。本機で撮影した1,920×1,080フルHDのAVCHD映像は、SDHCカードに保存した状態から、直接映像を取り出すための手段が限られているのが悩みの種。だがLT-H90WNならば、HDC-SD5からカードを取り出し、本体につなげたUSBカードリーダーに差し込むだけで用意が完了する。

パナソニックのAVCHDカムHDC-SD5を使って動画再生を検証した。通常はビデオ出力端子からケーブルをテレビに接続するが、これは非常に面倒。折原氏も頭を抱えてしまった バッファローの「LT-H90WN」があれば、カメラから取り出したSDメモリーカードをリーダーに差し込むだけで準備が完了する

再生時の操作は、本体の電源を入れ、日本語で表示されるメニューから「USB接続」を選んでフォルダを選択していくだけと、非常に簡単。USBカードリーダーを通してSDHCカードに収録してある動画に直接アクセスできるため、どのファイルを再生しているのか分かりやすいのも嬉しい。

再生を始める際の待ち時間もほとんどなく、ハイビジョン映像をすぐに表示し、早送りや巻き戻しの操作も自在に行える。映像は1080i方式で出力されるため、大画面で視聴しても高精細な映像を楽しめた。この手軽な操作性、軽快なレスポンスがあれば、AVCHDビデオカメラの専用プレーヤーとして常備したくなる。

USBからの再生はトップメニューから「USB Drive」を選ぶ あとはフォルダ階層を辿って再生したいファイルを直接選択しよう
SDHCカードのAVCHD動画を直接再生。HD画質の映像をそのまま楽しめる もちろん付属リモコンによる早送りなどの操作も可能だ

今回は動画を収録したSDHCカードとUSBカードリーダーを使って接続したが、LT-H90WNでは、たとえばPCやLANディスクなどに保存したファイルなども、ネットワークを介して再生できる。メディアを取り出しできないHDDタイプのAVCHDビデオカメラユーザーにとっても、LT-H90WNは使い勝手を大きく向上させる、強力な周辺機器であると言うことができる。

LT-H90WNでできることは、AVCHDカム映像の再生だけではない。LT-H90WNの機能を120%活用するためには、本来の機能であるネットワークプレーヤーとしての側面に着目する必要がある。

すぐに思いつく使い方がPCとの連携だ。例えば、LT-H90WNを使えばPCの音楽ライブラリにも瞬時にアクセスでき、あたかもHDDコンポのように使うことができる。PCが書斎など離れた場所にあっても、本機からPCにアクセスし、音声をアンプに接続すれば、良い音で音楽を楽しむことができる。リビングに本機を置けば、本機が家庭内のメディアのハブとして活躍するだろう。動画・静止画・映像のファイルは主要形式をほぼ網羅しており、日本語ファイル名も扱えるため、パソコンからはフォルダを指定するだけでほとんどのファイルを読み込めるはずだ。

「音楽」を選べばPCの音楽機能と連携する活用も行える ジャンル、アーティスト、アルバムなどで探す方法は直感的に使える テレビの画面で曲名リストを表示したらあとは再生するだけと操作は簡単

PCの設定の方法も簡単だ。例えば、基本的な動画や音楽や写真の共有だけであればWindows Media Player 11を使うだけでOKだし、AVCHD映像やHDV映像などLT-H90WNが対応するAVファイルの再生には、付属のサーバーソフトを使って公開するフォルダを指定したり、Windowsのファイル共有を使うこともできる。今までホームネットワークの構築を考えたことがなかった人でも、一度この便利さを体験したら、次々に様々な活用の方法が浮かんでくることだろう。

PCとの連携はWindows Media Player11を使うのが簡単。「ツール」→「オプション」→「ライブラリ」→「共有の構成」から設定を行おう 付属の「BUFFALO メディアサーバ」を使えばフォルダ単位の指定による共有もできる 専用のサーバーを使うほかにも「ネットワーク共有フォルダ」による連携も可能だ
この方法はWindowsのPCだけでなくLANHDDなども使用できる PCと同じでエクスプローラー感覚でアクセスできるようになる

LT-H90WNは、AV機器を中心としたホームネットワークとの連携でも活躍する。デジタルレコーダーでの対応が増えてきたDLNAに準拠しているためだ。

実際に接続できるDLNA対応機機器は、後日同社から正式にアナウンスがある予定だが、筆者宅で試した限りでは、ソニーのBDレコーダー「BDZ-V9」にアクセスしたところ問題なく番組リストを表示し、地上デジタル放送を録画した番組の再生を行えた。ただし、早送り・巻き戻しができないため今後の対応を望みたい。同じくDLNAサーバーとして動作するソニーのXビデオステーションとの互換性も問題なく、ネットワーク経由の録画番組再生が問題なく行える。

DLNA機器からの再生は「コンテンツを選択」からスタートする ネットワーク上のサーバーがズラリとリスト表示される BDZ-V9にアクセスするとデジタル放送を録画した番組も表示されている。あとは選ぶだけで再生できる
同様にXビデオステーションにもアクセス。家庭内LANであれば設置場所を意識せず使える 検索から録画を探して目的の番組を再生しよう

筆者の環境ではDLNA対応のデジタルレコーダーがリビングの大画面テレビ周辺に集中しているため、プライベートルームのテレビにLT-H90WNを接続し、リビングで録画した番組を見られたことに便利さを感じた。本体に無線LANを内蔵しているため、離れた場所に一台だけ設置する際にも扱いやすい。しかも通信速度が速いIEEE802.11nの採用によって、データ量の多いハイビジョン映像も問題なく伝送できる。

DLNA対応の機器は積極的に揃えようとしなくても自然と増えていくものなので、LT-H90WNのような強力なプレーヤーが一台あれば、意外な場面で活用する機会も出てくることだろう。

筆者宅では常に数台のレコーダーが稼働している。今回はBDZ-V9との連携をテストし、問題なく再生が行えた リモコンで操作を行う折原氏。ボタン操作へのレスポンスも速く、使い勝手が良いと高評価だった

本体は非常に小型なので、テレビの脇などに気軽に設置できるのも魅力だ
当初は本機のAVCHD再生機能に着目してテストを開始したが、実際に長期間使用してみると、利用できるシーンはそれだけにとどまらないことが分かってきた。AV・PCの垣根を越えて、家庭内のあらゆるシーンでハイビジョンの映像を再生する。LT-H90WNを活用すれば、そんな未来のデジタルAVネットワーク像を先取りすることができるだろう。

●無線LANインターフェース部:Draft IEEE802.11n / IEEE802.11a / IEEE802.11g / IEEE802.11b準拠 ●入出力端子:USB 2.0×2、コンポジットビデオ出力1、D4端子出力1、HDMI 1.3a端子1、ステレオRCA端子1、光デジタル端子1 ●対応動画フォーマット:MPEG2、H.264、WMV9 ●対応音声フォーマット:AAC-LC、AAC-HE、MP3(MPEG-1 Layer 1,2,3)、WMA ●対応静止画フォーマット:JPEG、BMP、PNG、GIF ●外形寸法:210W×50H×210Dmm ●質量:約1.2kg

本製品のニュースリリース
本製品の製品情報
Phile-webニュース【バッファロー、AVCHD再生対応の新「LinkTheater」‐ DTCP-IP対応、11nモデルも】

折原一也 Kazuya Orihara

埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。