英国のハイエンド・オーディオ・ブランド、MONITOR AUDIOから待望の新・Bronzeシリーズが2006年秋に登場した。ベーシックモデルながら、同社の持つ技術力を惜しみなく投入した「Bronze BR」は、入門層からコアなオーディオファンまで、幅広いユーザーが楽しめるスピーカーだ。今回は5.1chのマルチサラウンド、2chのピュアオーディオの各スタイルでBronz BRシリーズをレイアウトし、林正儀氏がテストを行った。

モニター・オーディオの中でもポピュラーな人気をもつブロンズシリーズが、第3世代のBR(ブロンズリファレンス)に、いよいよ2006年秋リニューアルされた。2.5ウェイ・フロア型の「BR6」、「BR5」を筆頭に、2ウェイ・ブックシェルフ型の「BR2」、「BR1」、これにセンタースピーカー「BRLCR」やダイポール型の「BR-FX」、サブウーファー「BRW10」を含む合計7モデルだが、シリーズ全機種にメタル系振動板を用い音色の統一をはかったのがポイントだ。

これまではペーパー系素材だったサブウーファーのコーンをC-CAM仕様のMMP2(メタルマトリクスポリマー)とし、ゴールドドームC-CAMトゥイーターのレンジも30kHzに引き上げている。ほかにもユニットからエンクロージャー、ネットワークなど綿密なチューングが施されており、BR1、BR2のバスドライブシャーシーは新設計だ。BR5、BR6についても独立したチャンバーを採用。高剛性化とあわせてユニット間の干渉を防いでいる。外づけフィートや端子の改良。英国製ならではのCOVAビニールで美しく仕上げられている。

はじめにBR6を主軸とした5.1chマルチサラウンドの音を聴いてみた。サウンドそのものが明快で、オープンになった。それに驚くほどの滑らさを備えている。ユニット間の連携がもう1ランクスムーズになったことにあわせ、空間情報が格段に向上したのだ。C-CAM トゥイーターがはつらつとした表現力を引き出し、DVDの映画や音楽、どのソースもフロントからリアまでシームレスにつながっている。部屋中を満たす感じだ。濃淡にムラのないフラットバランス。だからストレスがない、気持ちがよくリラックスできる。セリフも質感や表情がとても自然な出方で、スクリーン映像に没入できるのだ。
シリーズ共通のメタル系振動板を使ったゴールドC-CAMトゥイーターは、定格をアップさせ、周波数特性のレベルを30kHzまで向上させている
Bronz BRシリーズでは、サブウーファーにもメタル・マトリクス・ポリマーとC-CAMを貼り合わせたMMP-2を採用。全機種にメタル系振動板を搭載することで、マルチ再生時におけるサウンドキャラクターを高次元で統一させている
スピーカー「BR5」の背面端子部。プラグにはゴールドメタルターミナルを採用したほか、プレートを低位置に配置したことにより、ケーブルの振動によるノイズを回避させている
これにはバスミッドとマスドライバーにそれぞれ採用された、フェーズキャップとダストキャップを使い分けるユニットバランスのうまさが活きているのだろう。サブウーファーBRW10のパフォーマンスが見逃せない。同じ25センチの150W駆動だが、ストロークがきれいで濁りがない。MMP2ユニットらしいタイトな低音再生は痛快で、ポートを丸型から縦のスリットに変えたのも効いたようだ。映画『Mr.&Mrs.スミス』のダンスシーンでの伴奏音楽やダイナミックな砲撃音を見事な効果で聴かせた。サスペンス系作品の忍び込むようなサラウンド感も上々。DVDの音楽ソースとの相性も良く、ハービー・ハンコックのジャズピアノが等身大のスケールと繊細なタッチ感で再現された。
キャビネットは本物の木の仕上げに近い、最高ランクのCOVAビニールを採用した贅沢な仕上げを施している。カラーバリエーションはチェリー、ウォールナット、ブラックの3色を揃える

今度はステレオ再生のサウンドを確認してみることにした。まずはフロア型のBR5でステレオ再生環境を組む。シングルウーファーらしい軽やかな再現だ。サウンドは澄んで美しい。もともとモニター・オーディオはリッチで雄大な低音が持ち味ではあったが、膨らみ過ぎるところも若干あったように感じるが、今回はその印象がなく、タイト&クリーンなサウンドだ。ストロークが活発であり、ベース音域のキレと分解能が向上している。ウッドベースはぐんとふんばりが効いて、音階の違いも正確に描きわけた。コンサートピアノは音色が豊かでキラキラとした絢爛豪華さも聴きどころだ。厚く響くオーケストラとの空間融合、そしてバランスの良さはダブルのウーファーをもつBR6を彷彿とさせる。本機はフロア型の良さを味わう手頃なモデルであり、スペース性やコストパフォーマンス度も抜群。さらに魅力を増したスピーカーである。

続いてブックシェルフ型のBR1を試聴する。本機は背面ポートのバスレフ型で、これも嬉しくなるほどの再現力だ。ニュートラルでプレーンな音調は今シリーズの特徴だが、それに加え音楽に血が通い、生気がはつらつとしている。C-CAMトゥイーターがヌケの良さとつやかやな表現力を引き出し、ダイアナ・クラールをはじめ女性ボーカルは雰囲気たっぷりだ。もう一つの良さが、ギターや管などのソロ楽器のタイトルを試聴した際にあらわれた。ピタっときまる定位や響きの鮮度が好ましいのだ。ジャズや管弦楽も、あまり大音量を求めなければ、熱くエネルギッシュなところや、このサイズとは思えない広々としたステレオイメージが得られる。スペース性も文句なしだ。

新しいBronze BRシリーズの印象をまとめると、サブウーファーが大きなグレードアップを実現したことで、よりいっそうマルチ環境が組みやすくなったように感じた。今回はBR6、BR2を用いて試聴をおこなったが、ユーザーごとに試聴環境のスペースや予算の都合にあわせて、BR5やBR1を選択するのも良いだろう。ステレオ再生の試聴でも私の体験をお伝えしたように、どちらも優れた再生能力と使い勝手の良さを備えるスピーカーだ。例えばフロントにBR5を置き、リアをBR1で構成しても全く役不足を感じさせないはずだ。さらに背後をすっきりさせたければ、薄型ダイポールのBR-FXを壁付けで設置するという手もあるのだ。ぜひそれぞれに自由な組み合わせを選んで、モニター・オーディオの新しいBronze BRシリーズの魅力を体験して欲しい。

■筆者プロフィール
林 正儀 Masanori Hayashi


福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術 系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホー ムシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題 をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。
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