DVDプロセッサーは高級AVアンプでお馴染みのシーラスロジックCS98000だ。デュアル32ビット精度にて入力ソースを5.1chに正確にデコードしたのち、改めてアナログデバイスの32ビット/シャークを用いた4×4のBOSE流信号処理を施す。「フォー・バイ・フォー」は、25Wの4アンプで4基のスピーカーをドライブするという意味である。このとき設定もすべてオートで行われる。

「ストレートデコードのまま出せば、ドルビーデジタルやDTSの5.1chが出力されます。そのあとわざわざポストプロセシングして余分にお金かけてやっているのが、2つのスピーカーだけで完結させ、後ろにスピーカーを置かないための技術なわけです」。なるほど贅沢である。膨大な処理である。厳密に決められたスピーカーのアコースティックコントロールを、様々なパラメータを駆使しながら瞬時瞬時に行うという。モノやステレオソースでも常に4本が鳴っており、巧みなベクトル合成で音を定位させている。これは位相をいじって虚像をつくるバーチャルとは、まるで異なる高度な次元だ。13センチのウーファーユニット＋35Wアンプをもつベースモジュールへの音場情報もここで生成される。

さらに私が知りたいのが、BOSE自慢の聴覚・音響心理学がどう具体的に3・2・1に応用されたのかである。「企業秘密です」と微笑む大河原氏。難解さを覚悟でじっと聞き耳を立てる私……。左右の耳に到達する音のレベルや時間差で、人が音源を知覚するのは常識だが、これらを含めてBOSEでは、一般には知られていない7つ以上の要素を解析ずみだというから驚く。

「そのひとつが音の慣性です」。前からものすごい勢いで音が飛んでくると、そのまま後ろへひっぱられるような心理作用が働くのだという。ゆっくり近づけて耳元で止めた場合と、加速をつけた場合とでどういう違いを感じるかといった実験が、博士級の研究員によって日夜続けられているというから、BOSEはやはり凄い。