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【特別企画】進化するアレイ・テクノロジー

“ノイズ・ポンプ”はアナログにも効く!グラウンドアレイ&パワーアレイを加えるごとに変化が深まる

2021/09/16 井上千岳
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英国のケーブルブランド、CHORD COMPANYから登場した新アクセサリー“ノイズ・ポンプ”。空き端子に挿すだけで機器内部に「発生」「侵入」「蓄積」したノイズを直接吸収するというもの。ラインアップは機器対策用の「グラウンドアレイ」と、これをベースに電源対策用に設計した「パワーアレイ」の2シリーズ。今回は、この2つの効果をアナログ再生で体験してみよう。

■高周波に特化した素子だけでノイズを吸収

英国CHORD COMPANYの「グラウンドアレイ」と「パワーアレイ」については、自宅でも使用していてその威力はよく分かっている。ではこれをアナログ・レコードに使ってみたらどうなるだろうか。どういう効果がどの段階で現れてくるのか、そこを少し詳しく試してみることにしたい。そういうわけで、輸入元であるアンダンテラルゴ社の試聴室に寄せて頂くことになった。

CHORD COMPANYの「PowerARAY」(132,000円/税込/左)は2ピン仕様と3ピン仕様をラインナップ。「GroundARAY」(96,800円/税込/右)は、写真のRCA、USB-A、BNC、LAN(RJ-45)のほか、HDMIやXLRのオス/メス仕様と計7種類をラインナップ

最近この種の空き端子に挿すノイズフィルターが多い。しかしCHORD COMPANYのものは原理も構造もまったく別だ。重要なところなので少し説明しておきたい。

ケーブルでは接点などインピーダンスが急変する場所で信号が跳ね返る、反射という現象が起きる。オーディオ帯域ではそれほど問題にされないが、高周波になるほど生じやすくなるため影響が大きい。デジタル・ケーブルで特性インピーダンスが重視されるのはこのためである。

CHORD COMPANYが着目したのはこの点である。高周波ほど反射が生じやすい性質を逆用して、反射波を別のラインに誘導し、吸収したうえで熱として発散させるというものである。

CHORD COMPANYの独自技術「アレイテクノロジー」のイメージ図。音楽信号の通らないアレイ線を追加することで、音楽信号の本来持つ情報量を伝送することができるとしている

この技術はアレイ・テクノロジーと呼ばれ、CHORD MUSICをはじめとする各ケーブルに使用されて大きな成果を挙げてきた。そのテクノロジーをさらに進めて、ノイズだけを吸い上げるいわば “ノイズ・ポンプ” として開発されたのが「グラウンドアレイ」である。グラウンドライン上に担当帯域の異なる5個の素子を装備し、効率よく高周波ノイズを吸収しようという構成だ。電源も何も使っていないのに、びっくりするほどエネルギーが向上するのに驚いたものである。しかも装着するのはどの端子でもよく、デジタル信号にも有効なので活用範囲が広い。

これを電源に応用したのが「パワーアレイ」で、こちらは電源ラインとグラウンドの双方に素子を搭載しているのがグラウンドアレイとの違いになっている。壁や電源ボックスの空きコンセントに挿して使用する。

いずれもコイルやコンデンサーなどを使用せず、高周波に特化した素子だけでノイズを吸収する。また信号ラインにはまったく触れることがないため、音への着色も生じない。この点も大きな特徴と言っていい。

■フォノEQ/プリ/パワーアンプと挿入箇所を増やしテスト

これまでCDで聴いてきた結果では、エネルギーの向上が著しく、それに連れて一音一音がくっきりと鮮明になる。信号に絡んでいたノイズ成分が、きれいに洗い落とされた感触である。ではアナログではどうだろうか、というところで試聴に移りたい。

アンダンテラルゴの試聴室にて“ノイズ・ポンプ”の効果をアナログ再生で体験。「グラウンドアレイ」はLINNのフォノイコライザー、UPHORIKの空き端子に装着

まずフル装備で各機器に挿した状態から、一度全て抜いて聴いてみた。当然と言えば当然だが、力もレンジ感もおとなしくなった印象だ。システムの音が悪いということではなく、その落差があまりに大きいのである。

そこでまずフォノイコライザーに、グラウンドアレイL/R2本を装着する。変化は大体予想していたところだが、やはり立ち上がりがくっきりしてダイナミズムの幅が広がる。力感が高まって、表情の彫りの深さも表現の大きさも増すのである。

バロックは鮮明で解像度も上がっているが、ピアノでは骨格の力強さやタッチの瞬発力がひと際冴えている。オーケストラも楽器どうしの分離がよく、照明が明るさを取り戻したように感じるのである。

ところでこれはフォノEQでの話である。微弱な信号を増幅・補正するだけのソース源で、これだけエネルギーが変わるものだろうか。ちょっと不思議な気がしたのも事実である。

そこで次にプリアンプにも、同じくL/R2本挿してみた。ここは明らかに信号の増幅箇所だし、パワーアンプのドライブという意味でも要の場所である。

それを反映して変化は強力である。これは凄い。編成の小さなバロックでさえ、起伏の大きさの違いがよくわかる。それにスピードが速く、歯切れが大変いいのだ。弦楽アンサンブルもそうだが、独奏フルートの立ち上がりが倍ぐらい細かくなった気がする。ピアノはもちろんぐっとダイナミックでフォルテの厚みと力強さが素晴らしく、一音一音が深く切れ込んで手応えがまるで違う印象である。

オーケストラのダイナミズムも倍加したように強烈で、音楽全体が生命力に溢れている印象だ。やはりプリアンプはシステムの切所(肝)なのである。

パワーアンプはどうか。この変わり方はプリアンプと同じで、それに幅と厚みを加えた感触。同質のもので補完した印象で、これで鳴り方は完全に充実する。

■「パワーアレイ」の追加で、音場の奥行きがさらに深まる

そして最後は電源である。パワーアレイ2個を電源ボックスに差し込んでもらう。ここではまた景色が変わって見える。音場の奥行きが深まり、遠近が明快になるのだ。アナログでこういう再現は難しいが、バロックの広がりやピアノのピント、オーケストラの距離感や位置感などどれも一段ずつ磨きがかかっている。こういう風に変わるものなのか、と非常に納得のゆく思いがしたのだった。

「パワーアレイ」はフィルターを取り除いた電源タップでその効果を確認した

エネルギーと解像度、そして最後に空間性。1本加える毎に次々に変化が深まる面白さを、ぜひ多くのユーザーにも体験していただきたいものである。

(提供:アンダンテラルゴ)


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本記事は『季刊・analog vol.71』からの転載です

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