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【特別企画】845ならではの持ち味と魅力を引き出すモデル

300B真空管をドライブ段に搭載。JUNONEブランド第2弾プリメイン「JUNONE 845S」を聴く

公開日 2021/07/09 06:30 小原由夫
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トライオード社のフラグシップモデルとして、ラインナップを形成するJUNONEブランド第2弾となるプリメインアンプ「JUNONE 845S」。2014年に発売された左右独立モノラル構成の全段バランス構成としたプリアンプ「REFERENCE ONE」から6年ぶりに登場した本機は、ドライブ段に銘球300Bを採用した回路構成で、終段の大型直熱三極管845を強力にドライブする。JUNONEブランドらしく、使用パーツなどは本機専用のものを採用するなど、同社のフラグシップモデルに相応しく細部に至るまでこだわった設計がなされている。

真空管プリメインアンプ「JUNONE 845S」:¥968,000(税込)

JUNONEブランド待望のプリメインが登場

オーソドックスな構成ながらも、意匠面、さらにはサウンドで個性を発揮する管球アンプメーカーのトライオード。この度その傍系ブランド『JUNONE』から、プリメインアンプ「JUNONE 845S」がリリースされた。ブランド第1弾は2014年に発売されたツインモノラル構成のプリアンプだったが、基幹パーツの供給停止によって生産継続が困難となり、仕切り直しのニューモデルとなる。

本機はその名称からも分かるように、出力管に大型送信三極管845をシングル出力としたステレオ・プリメインアンプだ。しかも注目すべき点は、“真空管のキング”として人気の三極管300B(PSVANE製)をドライバー段に採用し、純クラスAアンプ動作としていることだ。トライオードとしては、845を用いた製品は第6世代となり、その素性を充分に把握している由、オール三極管構成ならではのリッチで瑞々しく、それでいてダイナミックなサウンドを目指したという。

「改めてイチから作りたいという思いで、使用パーツも大幅に刷新した。300Bの鳴りの良さを十二分に活かせる設計ができた」と語るのは、トライオード社長で、本機の設計者でもある山撫一氏だ。

回路は固定バイアス方式。定格出力は22W×2だが、実力はさらに数ワット上回るというから頼もしい。845に対して1kVの高電圧を印加する上で、トライオードでは既存の真空管ソケットでは心許ないと以前から感じていたらしい。そこで今回、思い切って845専用にソケットをオリジナル開発。ピン部分をテーパー状とすることで抜けにくい構造としている点が目新しい。しかも金メッキ接点だ。

バイアス確認用のメーターが正面にあるので、つねに動作状況が確認できる。左右の切り換えは、左側にあるトグルスイッチで対応できる

出力トランスはオリエントコアを採用した、同社にとっては手慣れた仕様といっていいもの。筐体内部は、手配線に加え、合理化を図れる部分には積極的にプリント回路基板を採用している。また、本体前面にバイアスメーターを装備。同じく前面に備わったバイアスセレクターで真空管を選んだ後、シャーシ天面のバイアス調整ボリュームで簡単に最適ドライブに調整できる。300Bや845のハムバランサーボリュームも天面に備えている。

ボリュームコントロールやミューティングは、付属のリモコンでも調整可能。入力セレクターとボリュームをバイパスしてパワーアンプとしても使えるメイン・イン入力端子を備える(オン/オフ切り換えつき)。付属電源ケーブルは、ディップ・フォーミング無酸素銅を採用して音質を吟味したトライオード・オリジナル品である。

『TRIODE』ブランドでは、赤いトランスカバーを採用するなど、管球アンプの既成イメージを打破しようと斬新なカラーリングを積極アピールしてきたが、より高級路線を打ち出すこのJUNONEブランドでは、オーソドックスなブラックのカラーリングを採用した。とはいえ古臭い印象とは決別するべく、高級車の塗装と同じ7回塗りの光沢ブラック仕上げとしている点がブランドのこだわりといえる。

熟練工による手配線とプリント基板を採用した本機の内部。カップリングコンデンサーには独ムンドルフ製のM-CAPなど高品質なものが採用されている。左上にマウントされているのは、2つのチョークトランス

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