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【特別企画】TEACの「TN-400BT」で遊ぼう!

完全ワイヤレスでレコードを聴く! Bluetooth搭載アナログプレーヤーでレコード再生に挑戦

2021/06/26 工藤寛顕
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■Bluetooth搭載スピーカーとヘッドホンでレコードを聴いてみよう!

古き良き音楽メディアが再び脚光を浴びる昨今、デジタルネイティブ世代であっても、アナログレコードに興味を持つ人が増えている。当時を知る人々は懐かしみながら、そうでなければ新鮮さを伴って、「この令和の時代だからこそ」と言える魅力がレコードにはまだまだ詰まっている。

だいせんせいこと工藤寛顕さんがレコード再生に初挑戦!

往年の名曲だけでなく、最新の楽曲をあえてレコードでリリースするというケースも珍しくない。もはやレコードは話題性や記念的なコレクターズアイテムに留まらず、改めて“主流”に食い込む音楽メディアのひとつとなっているのだ。

……とは書いたものの、もちろんコレクターズアイテム的な価値も根強く高い。特に限定生産されるような新譜のレコードは「再生環境がないのに思わず買ってしまった」なんて人も少なくないはずだ。グッズとして保存しておくだけでも良いが、せっかくなら聴いてみたい。でも、レコードなんてよくわからないしなあ。そんな悩みを抱えているのではないだろうか。

何を隠そう、筆者である僕もその1人だ。先走ってレコードを購入することこそなかったものの、再生環境がないが故に諦めてきたアルバムも数知れず。というより、これまでの人生において、そもそもレコードに触れる機会がほとんどなかったのだ。

というわけで、今回はレコード再生に初挑戦! アナログプレーヤーには、Bluetoothトランスミッターを搭載するTEACの「TN-400BT」を用意。Bluetoothスピーカーやイヤホン、ヘッドホンを利用し、現代の音楽環境でも導入しやすいような、シンプルなレコード再生プランをご提案したい(なお、同ブランドからはより安価な「TN-280BT」(オープン、実勢2.3万)というモデルも用意されている)。

TEACのアナログプレーヤー「TN-400BT」(価格はオープン、市場実売価格は57,200円前後/税込)。aptX対応のBluetoothトランスミッターを搭載しており、手持ちのBluetoothイヤホンやスピーカーと組み合わせて楽しめる

TN-400BTは上述の通りBluetooth機能を搭載しており、レコードの再生をワイヤレスで楽しめるのが特徴だ。本体側面にあるBluetoothボタンを長押しすることで、近くにあるペアリングモードのBluetooth製品を自動でペアリングしてくれる。一度に複数の機器を扱う場合には注意が必要だが、ペアリング操作は極めてスムーズ。ふだんスマートフォンやデジタル音楽プレーヤーに接続する際と同様に、簡単に再生することができた。ただし、TN-400BTにはボリューム調整機能が搭載されていないため、単体で音量調整ができない再生機器(一部の完全ワイヤレスイヤホンなど)を使う場合は要注意だ

プレーヤー側面のPAIRINGボタンの位置をチェック

接続したいデバイス側もペアリングモードにして、数秒待てば接続完了!

ペアリングの準備が整ったら、さっそくレコードを再生してみよう。なお、今回は試聴用として宇多田ヒカル「One Last Kiss」のLP盤を用意した。

■想像以上にクリアなサウンドに驚き。アナログ特有の手触りも確認

まずは王道にスピーカーリスニングということで、AIRPULSE「A100 BT5.0」をペアリング。ハイエンドなワイヤレスアクティブスピーカーとして幅広い支持を得る同製品だが、レコードプレーヤー(しかもBluetooth接続)との相性はどうだろう?

AIRPULSEのアクティブスピーカー「A100 BT5.0」(オープン、市場実売価格は108,900円前後/税込)

TN-400BTのダストカバーを開き、ターンテーブルのフェルトマットの上にレコードをそっとのせる。レコードの指定通りに回転数(今回は33 1/3)を合わせ、回転つまみを「START」にセットすると、レコードがゆっくりと回転し始める。トーンアームを持ち上げ、レコードの外周部にゆっくりと針を落とすと「ポツッ」というポップノイズが響く。面白かったのは、このノイズで、Bluetooth接続による遅延(レイテンシー)を感じたことだ。アナログ再生による電気信号がデジタルで処理されるまでのわずかな時間は、まるで機械同士のジェネレーション・ギャップのようだ。

指掛をつまみ、レコード盤の上にそっとカートリッジを下ろす

ポエムのような余談はさておき、音質のレビューに移ろう。第一印象としてまず驚いたのは、想像以上にクリアなサウンドに対してだった。レコードの再生は原理的にどうしてもノイズを拾ってしまうが、新品のレコード盤であることも手伝ってか、それが思いのほか少ない。打ち込み系の音も結構パキッと鳴っており、プレーヤーを隠されたらアナログだとわからないほど。しかし、デジタルオーディオのそれと比べると、やはりどこか柔らかな感触を覚える。トーンアームの低域共振など、デジタルデータには存在しない音までエンコーディングされていることがその一因だろうか。

また「ノイズが少ない」と書いたものの、当然ながら全くのゼロというわけではない。時折拾うプチノイズが聴こえるたびに、アナログサウンド特有の手触りを再確認できる。それは決して不快なものではなく、むしろ趣きを感じ、心地よいのだ。こうした小さな要素の積み重ねがBluetooth上に乗ることで、Hi-Fi志向たる近年のデジタルオーディオの文脈にはないような、温かみのある味わいを生み出しているのだろう。

低域を中心とした迫力ある再生が楽しめるJBL「FLIP 5」に切り替えて再生してみる。アウトドアユースも想定されている製品だけに、据え置きのスピーカーと比べるとかなりコンパクトながら、骨太でパワフルなサウンドが印象的だった。バッテリーを内蔵するポータブルスピーカーなので、プレーヤーからすっかり離れた場所に置いて再生することもできる。レコード再生でありながら、その場を離れられるという再生環境は、極めて新鮮に映る。

JBLのポータブルアクティブスピーカー「FLIP5」(オープン、市場実売価格10,860円前後/税込)

■イヤホンやヘッドホンではレコードの音が「ダイレクト」に耳に届く

こうした試聴体験は、イヤホンやヘッドホンになるとことさら顕著だ。Noble Audio「FALCON 2」やDENON「AH-GC30」を試してみると、目の前で回転しているレコードから、耳元のデジタルデバイスまでワイヤレスで音が届いているというちぐはぐな違和感が楽しい。もちろんユニークに留まるだけでなく、その音質はワイヤレスであることを考慮しても素晴らしいものだ。ふだんスマートフォンなどから音楽を再生するのと同じような感覚にも関わらず、上述のようなアナログらしい耳当たりの滑らかなサウンドが楽しめる。もちろんポータブルスピーカー同様、再生しながらその場を離れられるという利便性も現代的だ。

DENONのワイヤレスヘッドホン「AH-GC30」(オープン、市場実売価格23,000円前後/税込)

背景に聴こえるプチノイズなども、イヤホンやヘッドホンを使うことで、よりダイレクトに届く。近年ではこうしたノイズは楽曲制作における意図的なSEとして耳にすることが多いが、これが今この瞬間に生まれている音であるだけに、演出されたノイズとは全く違った印象だ。

特に興味深かったのが、AH-GC30のアクティブノイズキャンセリング機能を使った再生だ。外的な騒音をすべてキャンセルした上で、あえてアナログのサウンドを鳴らすというのはなんとも不思議で、かつ段違いの没入感。まるでレコードプレーヤーの中に入って音を聴いているようで、針がレコードをなぞる感覚に集中できる。何より、ノイキャンを効かせてレコードを聴く……というレアな体験は一聴の価値アリだ。

本来は正反対の存在であるはずのレコードとポータブルオーディオにより成立する、新旧融合的なサウンドは、ポータブルオーディオ全盛の世代のみならず、むしろ据え置きのオーディオにしか触れたことがないという方にも体感してほしいと感じた。

トーンアームを元の位置に戻し、カートリッジの針に保護キャップを装着する。ターンテーブルからレコードを持ち上げ、盤面に触れないようにそっとジャケットへ戻す……。タッチひとつで音楽アプリを終了させるのとはわけが違うような手間のかかる作業も、再生を終えた今となってはどこか愛おしく思える。

カートリッジの針先は繊細で、ちょっとした刺激ですぐに折れたり曲がったりしてしまう。再生が終了したら、カートリッジは必ず「針カバー」を!

オーディオの利便性が著しく向上し続けるこの時代に「あえて」を唱えるレコード再生の魅力は理解こそしていたものの、ようやく真の意味で実感できたのかもしれない。また、「現代の音楽環境でも導入しやすい」という理由を掲げて持ち込んだBluetooth機器だったが、単純な利便性以外の、音楽体験としての新たな魅力を発見できたのも嬉しいところだ。

登場から一世紀を超え、今なお幅広く愛され続けるアナログレコード。敷居が低くなっている今こそ、ぜひはじめの一歩を踏み出してみてはどうだろう。

(提供:ティアック)

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