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新トランスポートメカニズム、ディスクリートDACを搭載

“Grandioso”の威信をかけた弩級セパレートプレーヤー。エソテリック「Grandioso P1X/D1X」を聴く

2019/11/06 藤岡 誠
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新トランスポートメカニズム「VRDS-ATLAS」とディスクリートDAC「Master Sound Discrete DAC」を搭載した、エソテリックのフラグシップ・デジタルセパレートプレーヤー「Grandioso P1X/D1X」。 “Grandiosoシリーズ” の威信をかけた最先端モデルの圧巻のパフォーマンスを、徹底的にレポートしたい。

SACD/CDトランスポート「Grandioso P1X」¥3,500,000(税抜・写真右)/D/Aコンバーター「Grandioso D1X」¥3,500,000(ペア/税抜・写真左)


新型メカニズムを開発し搭載。ディスクリートDACも新開発

ESOTERIC(エソテリック)は、いまや押しも押されもせぬ日本のハイエンドオーディオメーカー/ブランドである。タンノイやアバンギャルドを代表とする有名な海外メーカーの輸入代理業務も展開しており、さらに、独自のコンセプトに基づくSACD/CDソフトにも進出。海外での評価も高い。

周知の通り、高級型/最高級型に徹したモデルは各種あるが、デジタルプレーヤーにおける製品開発能力は世界トップランクといっても過言ではなく、他社の技術者に「凄まじいほどの開発力が羨ましい」と言わしめているほどだ。中でも“Grandioso(グランディオーソ)”と名づけたフラグシップシリーズは、技術者にとっては夢の実現でもあり、結果としてオーディオファイルの垂涎の的となっている。因みに「Grandioso」とは「壮大に、堂々とした」という意味の音楽用語である。

そして驚くべきは、最近になってこれまで最高峰だったセパレート型SACD/CDプレーヤー「Grandioso P1」(280万円・税抜)+「Grandioso D1」(140万円・税抜)に対して、新型モデルが登場したことだ。果たして新モデルはいかなるものなのか? その注目すべきポイントなどについて触れよう。

新型機として登場したモデルは、「Grandioso P1X」(350万円・税抜)+「Grandioso D1X」(ペア/350万円・税抜)である。合計価格は旧型よりも上昇し、700万円である。まさに驚愕としかいいようがない。

驚愕は価格だけではない。Grandioso P1Xのドライブメカニズム(トランスポート)の新規開発や、Grandioso D1XのディスクリートDACといった素晴らしいアプローチにも触れたい。これから分かりやすく紹介するが、一層の詳細などは同社のHP、カタログなどをチェックしてほしい。

いずれにせよ、概要などを入念に確認した上で試聴すれば、エソテリックのGrandioso P1X+Grandioso D1Xが、新世代へ向けた最高級モデルとしてのプレゼンスを十二分に持っていることが理解できるはずだ。


「P1X」重量級となった新メカニズム。信頼性は“超”がつく出来栄え

Grandioso P1Xは、電源部が独立筐体となったSACD/CDトランスポート。そしてGrandioso D1XはD/Aコンバーターで、モノブロック構成だから2台1組。「凝り過ぎだ」という声も聞こえてくるが、だからこそ夢とロマンがあるわけで、デジタルプレーヤーに究極を求めて止まない人達の心を揺さぶるわけだ。

Grandioso P1X

P1Xは、新規開発された画期的ドライブメカニズムを搭載する。それがエソテリック独自のVRDS(Vibration-Free Rigid Disc-Clamping System)で、本機のそれには「VRDS-ATLAS(アトラス)」という名が冠せられている。今後、エソテリックのドライブメカニズムの誇りとなって存在して行くことになるだろう。私見だが「将来このVRDS‐ATLASを超えるドライブメカニズムが現れることは考えにくい」とさえ思うほどだ。

旧型とはディスクの支持・回転構造が異なり、回転の精度や安定度が向上。上部のブリッジは20mm厚(1.8kg)、両サイドは12mm厚の鋼鉄製という具合に途轍もないほど強固。トレイは8mm厚でアルミニウムの削り出しだ。その動作は静粛でスムーズである。

VRDSメカニズム史上最高の剛性と重量を誇る「VRDS-ATLAS」。SS400スティール製のサイドパネルと大型ブリッジによりあらゆる振動を減衰。ターンテーブルはジュラルミン、スピンドル軸受けも新設計で摩擦や回転ノイズを極限まで抑制する

新/旧のドライブメカニズムを手に持って比べると、本機のそれはズッシリと重く、超高剛性で超精密。もちろん信頼性は如何にも“超”がつくほどの出来栄えだ。初期モデルから知っている私からすれば、エソテリックの誕生以来、改良され続けてきたVRDSが遂にここまできたか、という観がある。

電源部はSACD/CDプレーヤーとはとても思えない凝りに凝った内容だ。4個のトロイダルコア型トランスを搭載し、各回路へクリーンでパワフルな電源を供給する。整流回路には38個、合計1,400,000μFもの良質なコンデンサーが使われている。このコンデンサーについては後述するが、回路的には低帰還DC電圧安定回路を構成し、開放感に溢れるサウンドを目指したという。言うまでもなく、新ドライブメカニズムVRDS‐ATLASのポテンシャルを考慮した電源側からのアプローチといえよう。

デジタル出力はRCA×1とXLR×2、そしてこれから紹介するモノブロックD/AコンバーターGrandioso D1Xとの接続用にHDMI端子のES‐LINK5を装備している。なお、旧型のそれよりもグンと洗練されたリモコンはP1Xに付属する。

4つの独立したトロイダル電源トランスは、サーボ/ドライブメカ駆動/デジタル出力/クロックの各回路に電源を供給

背面部。XLR端子はDual AES出力時のみ2つ使用するので1系統となる。別筐体の電源部とは左右別に2本の専用DCケーブルで接続

次ページ新モデル「Grandioso P1X/D1X」を旧モデルと比較試聴

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