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DSD“リマスタリング”の効果は絶大! KORGのNutube搭載DAC「Nu 1」はマニア心くすぐるオーディオ機器だ

2018/12/19 土方久明
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先鋭的なデジタルオーディオ再生に興味を持つオーディオファイルであれば、KORG社の発売する一連のオーディオプロダクトには一目置いている方も多いはずだ。もちろん筆者もその一人である。

KORGはシンセサイザーなどの電子楽器で知られるが、近年、そこで培った技術力を応用したデジタルオーディオ機器メーカーとしての地位も確立している。特筆したいのは、他のオーディオメーカーとは少し違う、先進的かつ独特のアプローチでオーディオに関わってきたその姿勢だ。

たとえば、DSD(正式名称:DSD Stream file)黎明期から、同社が積極的にDSDにコミットしていたことをご存知の方も多いだろう。そんなKORGがついにハイエンド領域に入るような位置づけのUSB-DA/ADコンバーター「Nu 1」を発表したのだ。

「Nu I」

このNu 1は、KORGが長年注力してきた技術・機能がまさに “てんこ盛り” の1台となっている。DSDを知り尽くしたKORGが作り上げたNu 1は、実際どれだけの実力を備えているのか? そのサウンドを確かめてみたい。


新世代真空管「Nutube」搭載、マニア心をくすぐられるオーディオ機器

Nu 1はD/Aコンバーターの他に、アナログ音源をデジタル化するA/Dコンバーターを備えた、オーディオインターフェイスであり、さらに、アナログ入力やMM/MCカートリッジに対応したフォノイコライザーアンプまで備えたプリアンプ機能も有している。

そして、新世代真空管Nutube(ニューチューブ)を搭載していることが注目点だ。本真空管は、ノリタケ伊勢電子とKORGが共同開発した真空管で、アノード・グリッド・ファラメントの三極管構造により、真空管サウンドの大きな魅力である艶やかな倍音表現と心地よいサウンドを実現しながも、大幅な小型化と大幅な省電力化を達成した。さらに信頼度が高く寿命も長い、革新的な真空管なのである。

そして、筆者が注目するのは、KORGが持つDSDの技術を生かした、様々な音質調整機能だ。たとえばフォノイコライザーは、イコライジング処理時にソース音源の持つ音を余すことなく引き出す「DSDフォノ・イコライザー」を搭載。さらにDSD黎明期より積極的なコミットを図ってきた、オノ セイゲン氏プロデュースの「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」を利用できる。

本機能を平たく説明するなら、Nu 1に入力されるすべてのPCM信号をリアルタイムでDSD変換し、かつ様々なパラメーターを適用することで、積極的に音色、音調をいじることができるユニークかつ効果的な技術なのだ。

またNu 1を見ると、まずシャーシの美しさに惹かれるはずだ。シルバーのフロントパネルに装着されたボリュームノブの上部が美しく窪んでおり、そのノブの周りとパワーボタンからLEDの淡い光が漏れる。同社のD/Aコンバーターといえば、DAC-10Rが人気を博しているが、本機のデザインはハイエンド製品と並べても引けをとらない更なる美観を備えている。また、フロントパネルには6.3mm標準ステレオジャックと、バランス対応の4ピンXLRコネクターのヘッドホンジャックが備わる。詳しくは後述するが、Nu 1はヘッドホンアンプの性能もとても高く感心した。

本体背面部。RCAアンバランス出力に加え、XLRバランス出力を装備する

同社のトップモデルらしく内部構成もかなり充実している。音の要となるDACチップには、旭化成エレクトロニクスの「AK4490」を採用。特筆したいのは電源部で、同社のDS-DACシリーズはUSBバス・パワー電源によって駆動されていたが、Nu 1は電源回路を新設計し、アナログ回路用には磁束漏れが少なく効率が良いとされるトロイダル・トランスを搭載した。これにはマニア心をくすぐられる。

原音を忠実に再現する実力の高さ、Nutubeの効果は絶大

ここからは、Nu 1がもつD/Aコンバーターとしての再生能力をハイレゾ音源で確認して、さらに本機にYouTubeを含む様々なソースを入力して、「S.O.N.I.C.リマスタリング・テクノロジー」の音質的な効果を徹底的にレビューする。

まずD/Aコンバーターの能力を確認してみよう。専用ドライバーと操作ソフト「AudioGate」をインストールしたMacBookProをUSBケーブルでNu 1に接続し、そのバランスアナログ出力をアキュフェーズのパワーアンプ「M-6200」につなぎ、B&W「802 D3」を駆動する環境を構築した。

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