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“到達点”のその先に実現した進化とは?

Hi-Fi領域の音質を手中にしたミドル級AVアンプ。デノン「AVR-X2500H」レビュー

2018/07/04 岩井喬
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デノンの最新ミドルクラスAVアンプ「AVR-X2500H」をレビュー。10万円以下の価格ながら、上位モデルの技術を継承してとことん音質にこだわった本機の実力を、オーディオ&ビジュアル評論家の岩井喬氏が検証した。

「AVR-X2500H」¥90,000(税抜)

高い完成度を誇る従来モデルから、音質を“一歩踏み込んで”進化させた

デノンのオブジェクトオーディオ対応AVアンプも、この春で第4世代を数えるまで熟成を重ねた。7.2ch対応のミドルクラス機「AVR-X2500H」は、D&Mグループ共通のネットワークオーディオ技術「HEOSテクノロジー」を初搭載した前モデル「AVR-X2400H」から、フロントパネルデザインをリニューアル。さらにトップスピーカーなしの2ch・5.1ch・7.1chなどの環境でも疑似的にイマーシブオーディオを楽しめるDTS Virtual:Xの採用、MM対応フォノ入力の装備など、新たに採用された機能性も少なくない。

一方で最大185W/1ch駆動、定格出力95W×7の7ch同一構成のディスクリート・パワーアンプやドルビーアトモス、DTS:Xへの対応(最大5.1.2ch)も引き続き継承している。電源部は10,000μF×2の大容量カスタムコンデンサーを上位モデル「AVR-X4400H」と同じ12,000μF×2へと増強。駆動力を必要とするインピーダンス4Ωクラスのスピーカーへの対応や、マルチチャンネルでの大音量再生においても、これまで以上に余裕のある電源供給能力を持たせた。

AVR-X2500Hの筐体内部

筐体構造においても、重量を持つ部材を高剛性シャーシのフット直近に設けることで内外部からの不要振動を排除する、ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクションを取り入れるが、その重要なフットにも旗艦モデル「AVR-X8500H」と同じ高密度ものを採用。フットの質量は従来の約2倍、内部に共振防止リブを設けた構造で、振動の影響の排除と音質面での品質向上に繋げている。

DACチップはAKM製32bit対応チップ「AK4458VN」を引き続き採用するが、DAC段のポストフィルター周辺回路の手直しを行うなど、細部にわたってサウンドチューニングを実施。前モデルの段階で既に手を入れるところがないほど完成されていた構成をもう一度見直すということでは、設計陣の苦労がしのばれるわけであるが、実際にサウンドを聴くとその甲斐があったと納得できる進化を遂げている。

AVR-X2500Hの背面端子部


ステレオ再生ではハイレゾの解像度を素直に引き出しS/Nも良好

視聴は音元出版の試聴室で行った。スピーカーにはエラック「240 BEライン」(「FS247BE」×2、「BS243BE」×4、「CC241BE」、「SUB2060D」)による7.1ch環境を構築。BD再生機はOPPO「UDP-205」を用いた。ステレオ再生のチェックはフロントUSB端子に差し込んだUSBメモリー内の音楽ファイルを使用した(試聴音源の詳細は記事末に明記した)。

なお、AVR-X2500Hの対応レゾリューションも192kHz/24bit PCM、および5.6MHz DSD(DSDファイルはPCMに変換再生)までとAVR-X2400Hから変わりはない。

まずはこのステレオ再生を試してみたが、ハイレゾならではの解像度の高さを素直に感じられる、切れ味のある高S/Nなサウンドを聴くことができる。見通しの良いスッキリとした音場で、分離良く浮き立つ音像もリアル。密度が高く、かつスムーズな音運びは従来モデルでも実感できていたが、より繊細で表現力の幅が深まった印象だ。

まずはクラシック音源(96kHz/24bit)を再生すると、管弦楽器の旋律がハキハキとして締まりよく、高域の倍音も豊かで、うるおいとキレ味を両立する。奥行きも深く、音場の見通しもスッキリとして解像度の高さが際立つ。低域は引き締まっていて弾力があり、密度感も確保。艶のあるハーモニーがホールに満たされる、豊潤な響きを堪能できた。

ジャズはオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)を聴いたが、音場の透明度が高く、ここでも優れたS/Nを実感させてくれる。ピアノはブライトかつクリーンなアタック感を見せる。ハーモニクスもほぐれていて、スネアブラシの響きも鮮明だ。ウッドベースの弦はアタックをスマートに描くが、胴鳴りは抑揚までナチュラルに描く。音像は立体的で、空間表現にも優れている。

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