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<山本敦のAV進化論 第159回>

Bluetoothに“第3のハイレゾ級規格”「HWA」現る! LDACやaptX HDと何が違うのか

2018/05/30 山本 敦
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この秋以降に注目を集めそうなBluetoothオーディオの高音質化技術「HWA」を紹介したい。

HWAは「High-Res Wireless Audio」の略。LDACやaptX HDのように、BluetoothのA2DPオーディオコーデック技術の範疇でハイレゾ再生に迫る高音質再生を実現するために、スマホや通信デバイスのエキスパートであるファーウェイが発表した新技術だ。


HWAは今年の3月27日に「Huawei P20 Pro」のグローバルモデルと同時に海外で発表された。台湾のHiFiオーディオ向けICも得意とする半導体メーカーであるSAVITECHのオーディオコーデック「LHDC(Low latency and High-Definition audio Codec)」をベースにして、両社が共同で技術を開発しているようだ。

HWAは日本でも発表されたばかりで、ファーウェイの最新鋭スマホ「Huawei P20 Pro」「Huawei P20 Lite」から搭載が始まる。規格の標準化・推進のため旗を振るHWAフォーラムのウェブサイトで、現在明らかにされている情報を中心にまとめながら、特徴を紹介していこう。

サイト上ではHWAの技術的なアドバンテージのひとつとして、一般的なオーディオコーデックであるSBCと比べて約3倍にあたる約900kbpsの転送ビットレートを実現していることに焦点が当てられている。これはソニーが開発したBluetoothベースのハイレゾ対応オーディオ伝送技術「LDAC」の約990kbpsに近い数値だ。

SBCとLHDC=HWAの技術的なアドバンテージの比較。96kHz/24biまでのオーディオソースを最大900kbpsのビットレートで高品位に転送できることを特徴にうたっている

またLDACと同様、最大96kHz/24bitまでの情報量を維持したまま、Bluetoothのワイヤレス伝送の仕組みを使ってハイレゾ相当の音楽再生ができるという。

HWAの規格は3つの認証グレード(ダイアモンド/プラチナ/ゴールド)に分かれており、それぞれの段階ごとに、再生できるハイレゾ音源の上限や音質に差が設けられている。またHWA対応のオーディオ機器はSAVITECHによるハードウェア、またはソフトウェアによって提供されるLHDCのコーデックを実装することが求められる。フォーラムが定める規定をクリアした製品がHWAのロゴを取得し、パッケージに表記できるとされている。

対象となる製品分野は、スマホ・タブレットなどを含む「モバイル」に「PC」、ヘッドホン・イヤホンなど「ポータブルオーディオ」と「Hi-Fiオーディオ」だ。現在HWAフォーラムのサイト上では新しい規格を支持するメンバーとして、オンキヨーにパイオニア、オーディオテクニカやAstell&Kern、ゼンハイザーなど、ポータブルオーディオファンにも馴染みの深い名前が挙がっている。

HWAのテクノロジーはオーディオファンにお馴染みの日本のブランドも数多く支持を表明している

HWAフォーラムのサイトにある「対応機器」リストには、本稿執筆時点でファーウェイのスマートフォンが並んでいる。日本では6月に発売されるKDDIの「Huawei P20 Lite/HWV32」とドコモの「Huawei P20 Pro/HW-01K」が含まれていることに注目したい。今回筆者はドコモから6月下旬に発売される「Huawei P20 Pro」をいち早く入手できたので、HWAの技術がどのようなかたちで実装されているのか確かめてみた。

日本ではNTTドコモから発売されることが決まった「Huawei P20 Pro」

設定から「開発者向けオプション」を開き、Bluetoothオーディオコーデック関連の項目をチェックしてみると、確かに選択肢の一覧に「HWA」が並んでいる。「BluetoothオーディオHWA再生音質」は “ベストエフォート” のほか、「音質重視/900kbps」「バランス重視/500・560kbps」「接続品質重視/400kbps」の3段階から選べるようになりそうだ。

設定の開発者向けオプションを開くとHWAまわりの設定項目も並んでいる

A2DPオーディオコーデックにHWAが並ぶ。P20 Proの場合、aptX HDやLDACも抜かりなくサポートしている

またこれとは別に「BluetoothオーディオHWA遅延」という設定項目も並んでおり、開くと「遅延レベル」が3段階から設定できる。シビアなリップシンクを必要とする動画再生の際には、音質と遅延レベルの設定をうまく掛け合わせることで快適な視聴環境にチューニングできそうだ。

HWAの再生品質は転送ビットレートが異なる3段階から選べる

レイテンシーのレベルも3段階から選択可能だ

ちなみに「Huawei P20 Pro」は発表以来、ライカと共同で開発した先進的なカメラ機能に注目が集まっているが、オーディオ再生も力のこもった本格的な “ハイレゾスマホ” だ。アナログイヤホンジャックを搭載していない端末だが、パッケージにはUSB接続のイヤホンやUSB Type-Cからアナログイヤホンジャックへの変換アダプターも同梱されている。

アナログイヤホンジャックを搭載していないため、イヤホンリスニングはUSB Type-C端子を使うことになる。商品のパッケージには変換アダプターだけでなくUSBイヤホンが付いてくるのでお得感がある

Hi-Silicon社製のハイスペックSoC「Kirin 970」が機敏なオペレーションを実現。AI専用プロセッサーにより、カメラまわりの高度な処理を、デバイス単体で素速くこなせるのも本機の特徴だ。プラットフォームにAndroid 8.0を採用する本機では、aptX HDとLDAC両方の高音質コーデックもサポートできている。

P20 ProはaptX HD/LDACに対応するイヤホン・ヘッドホンとペアリングして高品位なワイヤレスオーディオ再生が楽しめる。今後は加えてHWA対応のオーディオ機器にもつないで楽しめるようになる、楽しみなスマホだ

いまのところ、まだHWAによる送り出しに対応する “受け手” のワイヤレスヘッドホン・イヤホンやスピーカーが発売されていないので、その音質まで確認することはできなかった。対応する製品が登場したらすぐに本連載でもご紹介したいと思う。

(山本 敦)

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