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バッテリー持続時間も30時間に

ワイヤレスNCヘッドホンの銘機が進化、B&O PLAY「Beoplay H8i」レビュー

公開日 2018/03/20 10:00 山本 敦
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ブランド初のアクティブ・ノイズキャンセリング機能付Bluetoothヘッドホンとして、2015年に誕生した「Beoplay H8」が、約3年ぶりに「Beoplay H8i」としてアップデートされた。型番に足された「i」の文字には、「individual」「independent」「innovative」など、一人ひとりのユーザーの期待に寄り添う、革新性豊かなヘッドホンであることを強調する意味合いが込められている。

B&O PLAYはブランドの誕生から、最先端のテクノロジーを意識させることなく、“音楽を衣服のように自然な感覚で身にまとえるような心地良さ”をユーザーにアピールしてきた。最新モデルの「H8i」でもまた、ユーザーやファンから得たフィードバックを開発に活かし、一皮むけたサウンドと使い勝手のレベルアップを図っている。

「Beoplay H8i」

40mm径のダイナミック型ドライバーは、H8からそのまま継承。AAC/SBC対応のBluetoothによるワイヤレスリスニングのほか、付属ケーブルによるワイヤード接続にも対応する。フラットバランスで、原音のありのままの魅力を伝えるサウンドをベースに、リスニング環境やその日の気分に合わせ、専用スマホアプリで音を自由にカスタマイズできる機能も健在だ。

アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)機能は、両側ハウジングの内・外に高感度なマイクユニットを内蔵するハイブリッド方式。リスニング環境周囲に漂うノイズだけを効果的に消音する。ANC機能は左側ハウジングのレバースイッチを使ってオン・オフが切り替えられるだけでなく、新たに、一時的に外音が取り込める「トランスペアレンシーモード」を追加した。スイッチを耳の後ろ側に向かって倒すとモードがオンになり、音楽再生が一時停止する。これを使えば、駅や空港のアナウンスも聞き逃さないし、会話もできる。再び同じスイッチを操作すると元のリスニングモードに戻る。

左側ハウジングに備えられたスイッチで、ANC機能とトランスパレンシーモードの切り替えができる

H8では本体の右側イヤーカップにタッチセンサーリモコンを搭載していたが、H8iではシンプルなボタンタイプのリモコンに切り替わった。一方でヘッドホンの着脱が音楽再生と一時停止に連動する「インテリジェンスセンサー」のように、人がヘッドホンで音楽を聴く時の振る舞いとスムーズに繋がるユーザーインターフェースは、Bang & Olufsenブランドから受け継ぐ貴重な資産だ。

操作系はタッチセンサーによるものからボタンタイプに変更

H8iでは新たな内蔵バッテリーで、H8の約2倍となる約30時間の連続リスニングができる。充電ケーブルの端子はUSB Type-Cとした。最近は同端子を採用したAndroidスマホも増えているので、充電用ケーブルがシェアできるのは嬉しい点だ。

今回はiPhone Xにペアリングして、Spotifyの音源を中心に聴いた。サウンドのインプレッションを総括すると、中高域はシルキーで滑らか。グラマラスで温かみあふれる低音を特長としている。H8よりも音の輪郭線がより太く描かれるようになった。そしてH8の持ち味だった豊かなバイタリティはしっかりと継承されている。

オンイヤースタイルのヘッドホンなので、もともとパッシブな遮音性能は優れているが、アクティブ・ノイズキャンセリング機能をオンにすると、格別に高い消音効果が得られる。通勤時間帯の混雑した電車の中で試してみると、音楽再生を始めなくても周囲の喧噪が聞こえなくなるほどだった。ラムスキンレザーの外皮を使った柔らかなイヤーパッドを採用しているので、長時間身に着けてもストレスがないほどフィット感はマイルド。音漏れは感じられない。

ラムスキンレザーを用いた柔らかなイヤーパッドで長時間使用しても快適な装着感

アルミ製のハウジング部や本革のヘッドバンドなど、高品質な素材で美しいデザインを実現する

ライブの空気感が濃密に漂うステージに、女性ボーカルの凛とした音像が浮かび上がる。地を這うようなベースの熱いグルーヴと、タイトなドラムスのビートの躍動感。音の分離が明瞭で、バンドを構成する楽器の音色とフレーズが鮮やかに浮かび上がる。スピード感も旺盛だ。ボーカルのしなやかさや、金管楽器のハイトーンを艶やかに描くキャラクターはH8によく似ている。引き締まったタイトな低域をグングンと前に押し出してくるところが、H8iの新しい魅力と言えそうだ。

ジャズピアノとエレキギターのセッションを聴くと、渦巻くような熱気が伝わってくる。メロディを奏でる楽器の音色がとても分厚く、音像が近くまで押し迫ってくる。特に中低音の恵まれた瞬発力に聴き惚れてしまった。リズムの躍動感が演奏の場所と時間を超えて、一切間引かれることなく耳に飛び込んでくるようだ。ノイズキャンセリング機能の効果が高いので、アウトドアで聴いていても演奏者のピリピリとした緊張、肌を刺激するようなリアリティが伝わってくる。

持ち運び時にはイヤーカップ部をフラットにすることも可能

クラシックピアノの独奏も華やかなイメージが広がる。高音域の立ち上がりが鋭く、メロディの肉付きがとても良い。むやみな色づけを感じることはないのだが、不思議と体の底から精気がみなぎってくるような感覚が絶えなかった。

銘機・Beoplay H8をベースに、サウンドについては、新たな方向へ舵を切ろうとしている印象を受けた。音楽リスニングのトレンドが目まぐるしく変わる時代に、B&O PLAYが踏み出した変革への第一歩なのかもしれない。H8を愛用するユーザーもぜひ聴いておきたい、“別モノ”のヘッドホンだ。

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