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【特別企画】超低位相ノイズOCXO搭載の10MHzクロックジェネレーター

MUTECの新クロックジェネレーター「REF10」 システム別組み合わせレビュー!

2017/10/13 角田郁雄
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デジタルファイル再生をさらなる高音質に追い込むためにいま注目を集めているのが、クロックジェネレーターである。独MUTECは、デジタル信号処理における高い技術を背景に、放送局やレコーディングスタジオでも活用されるさまざまなデジタル機器を開発してきた。そんな同社の技術の粋が投入された最新のクロックジェネレーター「REF10」(関連ニュース)。クロック発信器に位相近傍ノイズの少ないOCXOを搭載し、今年のミュンヘン・ハイエンドショウで世界初公開されたこのモデルが、ついに日本でも発売が決定した。自宅で同社の「MC-3+USB」を愛用する角田郁雄氏が、MC-3+USBと組み合わせたREF10のポテンシャルをレビューする。



◆多彩な機能でCDもハイレゾ再生にも効果抜群のMC-3+USB

ハイレゾミュージックが普及を始めると同時に、最新の32bit型DACチップなどが登場した。その使い方も、ブランド独自のテクノロジーを投入することにより、小型DACといえども驚くほどの性能と音質を示してくれる。私はその性能や音の良さをさらに引き出したいと、いろいろなケーブルなどのアイテムにチャレンジしていた。

こうしたなか、ドイツのプロ用クロックジェネレーターやサンプリングレートコンバーターなどを手がけるMUTECのMC-3+USBというクロックジェネレーター/DDコンバーターに巡りあった。その効果に惚れ込み、今年購入した。

MUTECの多機能クロックMC-3+USB(¥OPEN、市場実売価格¥148,000前後)

本機の特徴を大きく分けると、
(1) クロックジェネレーター
(2) リクロック
(3) フォーマットコンバーター機能

の3つがあげられる。

それぞれについて詳しく説明すると、
(1) 32kHzから24.5760MHzまでの高精度ワードクロックを発信するクロックジェネレーター。

(2) ワードクロック入力のないCDトランスポートとDAC間に、同軸・光接続、AES/EBU接続で設置すると、CDトランスポートから伝送されたクロックは本機の生成する高精度クロックに叩き直され、同期し、DACへこの高精度クロックとデータが伝送される。これを一般的には「リクロック」と呼んでいる。

(3) USB入力から伝送されたハイレゾデータを、この高精度クロックに同期させ、同軸/光出力、AES/EBU出力で、DACへハイレゾデータを伝送できる(フォーマットコンバーター機能)
ということになる。

◆MC-3+USBのコア技術 DDS回路による精度の高いサンプリング周波数
MC-3+USBのコア技術は、1GHzという高いマスター・クロックを使用し、これをPLL回路を使わず、DDS回路により一気に目的とする精度の高いサンプリング周波数を生成することだ。同時に不要な高調波である近傍位相ノイズを除去する仕組みだ。

近年は、クロックの近傍位相ノイズが、ジッターを増加させる要因のひとつとされているが、実際にUSB DACの前段やCDトランスポートとDAC間に接続すると、音の透明度、空間性が高まり、よりリアルな奏者や歌い手が空間に描写される。とりわけ弱音の再現性が高まるので、静寂感も深まるが、微細な音も浮き上がり、その微細な音は楽器や声に加わり、倍音をより豊かにする。いまではこれらの効果に魅了され、世界的にも本機の愛用者が増えているとのことである。

◆驚異のノイズフロアを実現する10MHzマスタークロック

こうしたなかで、かねてから噂されていた、10MHzリファレンス・マスタークロック「REF10」が発売されることになった。本機を自宅で使用することができたので、レポートする。

今年のミュンヘン・ハイエンドで発表された最新クロックジェネレーターREF10(¥OPEN、市場実売価格¥375,000前後)

まず、外観は「MC-3+USB」と幅は同じで、高さは2倍。奥行きは30cmで、比較的コンパクト・サイズである。REF10の大きな特徴は、MUTECが理想とする近傍位相ノイズが極小の10MHz水晶発振器「OCXO」をドイツでカスタムメイドしたことである。OCXOは、水晶発振器のケースの中に恒温槽(オーブン)を持ち、その内部の水晶発振器の温度を一定に保つことができる。同社では、さらに高精度な周波数安定度と極小の近傍位相ノイズ特性を実現している。

実際の測定では10MHzから1Hz離れた範囲で、どこから位相ノイズが現れるかを測定する。資料では、本機のアナログ電源で-116dB以下という素晴らしい特性を達していることが確認できた。

◆完全独立の大型OCXOを搭載、8系統のクロック出力を持つ

内部を観察すると、リア付近に縦23mm、横30mm、高さ15mmほどの大型OCXOが配置され、その他の制御回路などからは完全にアイソレートされている。クロック出力は8系統あり、ドライバー素子で出力される仕組みである。AC電源入力部には、いままで見たことがないほどの大型ノイズフィルターを使用。内部のアナログ電源は、この水晶発振器を理想的に動作するように設計されている。

大型トロイダル・トランスをフロントに設置し、低ESRの3300μF/25Vの平滑コンデンサーを16個を使用。2系統のノイズを最小限に低減した電源を、水晶発振器と制御用に供給している。電磁波などの外来ノイズを徹底排除するために、フロント以外は電磁波に一番強いスチールを筐体に使用している。

使用上で好感をもった点は、フロントの「アウトプット・セレクト」スイッチで使用するBNC出力だけを選べることだ。選択しないと10MHzは出力されない。しかも、50Ω出力は2系統あり、75Ω出力は6系統ある。これは、クロックジェネレーターの入力インピーダンスが世界的に統一されておらず、50と75Ωの製品が混在しているからである。ちなみにMC-3+USBは75Ω入力である。

REF10の内部写真。手前側がフロント、奥側がリアで、フロントに大型トランスを配置、コンデンサーの奥の銀色のボックスがOCXOとなる

◆自宅のオーディオシステムに導入し、そのポテンシャルを検証



実際にMYTEK DIGITALの「STEREO 192 DSD DAC」にMC-3+USBとREF10を加え、ハイレゾのUSB再生を行った。MC-3+USBだけでも、音の透明度と弱音の再現性が高まり、空間にリアルな奏者や歌い手が高解像度で描写されたが、さらに微細な音が加わり、生々しい演奏の様子が音場に展開した。以前にも増して、ノイズに隠れていた微細な信号が浮き彫りにされ、さらに解像度が増した思いがする。



私はハイレゾも好きであるが、30年以上の歴史を誇るCDの再生にも力を入れている。そこで、今は愛用のメトロノームのCDトランスポート「Kalista Reference SE」とコードのDAC「Dave」の間にMC3+USBを使用し、CDの高解像度再生を行っている。そこに、REF10を加えると、以前にも増してCDがハイレゾになったかのような、倍音豊かでリアリティに富んだ音質へと昇華した。これは結構、凄い効果である。前述のように解像度がさらに高まり、空間性と演奏の臨場感を鮮明にする。

◆DACの変換特性を向上し、空間再現性の高い表現に貢献する

違いを極端に表現すると、ハイレゾもCD再生もREF10を使わない場合、音像はスリム。音の輪郭が明瞭で、空間に隙間が多く感じる。REF10を使うと微細な響きが増えるので、音に柔らかみを感じ、音像は大きくなる。従って、切り替えるとREF10なしの方が空間性があるように錯覚するかもしれない。しかし実際は、DACの変換特性がさらに発揮され、情報量も多く、空間再現性も高まっているのである。弱音から強音までのダイナミックレンジが拡張された感じがつかみとれるのである。もはや、後戻りできないほどの変化である。

私のようにセパレート方式のCDプレーヤーを使い、CDとハイレゾの両面を極めたい方も多いはずだ。その目標を達成するために、MC-3+USBとREF10は最適なアプローチになることであろう。ちなみにクロックジェネレーターは、通電時間が長いほど、エージング期間が長いほど、周波数精度や安定度が向上し、その実力を発揮する。その経過もまた、楽しいものである。50/75Ωの同軸クロックケーブル(デジタルケーブル)選びでは、線材の材質よりも、50/75Ωの正確なインピーダンス特性が大切。リーズナブルな価格のプロ用ケーブルで始めても良いであろう。また、できる限り1m以内のケーブルを使用することも大切である。

(特別企画 協力:ヒビノインターサウンド)

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