HOME > レビュー > 鈴木裕が体験するPAW Picoの「おさんぽDSD」― ウォーキングやジョギングでも楽しめるハイクオリティな音

スポーツ用途にもHi-Fi志向にも

鈴木裕が体験するPAW Picoの「おさんぽDSD」― ウォーキングやジョギングでも楽しめるハイクオリティな音

2017/10/12 鈴木 裕
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
ウォーキングやジョギングでも「ポータブル」なPAW Pico

ポータブルオーディオプレーヤーはその名の通り「持ち運べる音楽プレーヤー」ではあるが、ウォーキングやジョギングにも適した軽さ/小ささのものは意外と少ない。その要素を備えてようやく登場した製品がLotooの「PAW Pico」だ。

PAW Pico(¥23,000/税別)

32GBのメモリー容量を持ち、DSDの音源まで聴けてしまう。その上、GPSを搭載していてジョギング等に使えば、その運動時間や移動距離、歩数、消費カロリーといったことまで音声で教えてくれる。BPMのメタデータを持っている楽曲だったら、自分の好きなBPMに変更することもできる。しかも音の良さは、このサイズ、この値段をいい意味で裏切ってくれるのだから、「こういうのを待っていた」という人にはチャームポイント満載のモデルだ。

そんな製品が生まれた秘密を最初に書いておこう。Lotooの母体であるInfomedia社。スイスの名門ブランドのODMを手がけるなどの技術力と実績を持っている会社だが、このCEOであるチー・シャオ氏は、過去PHILE WEBに掲載したインタビュー(関連記事)でこんなことを語っている。

「PAW Picoを開発する出発点は、私自身が『こういうものがあればいいのに』とエンジニアチームに話をしたことです」

「私も走ったり自転車に乗ったりとスポーツをするのですが、その際にもLotooの製品を使っています。実際にスポーツをしながら音楽を聴く人がどのような機能を求めるのかということも、おそらく誰よりも分かっているつもりです」

「正直なことを申し上げると、PAW Picoは『スポーツをする方のために設計しました』と言いたいくらいです。実際に運動している人でなければ作れない製品であると思います」

こうした方針に基づいたからこその軽さであり、小ささだ。キットには腕に装着するマジックテープのベルトも付属しているが、実際に使ってみると本体は大変軽い。たとえばジャージやTシャツの裾や襟首に付属のバッククリップだけで留めても、一般的なジョギングであればまず落ちることはないだろう。インターバルトレーニングなど、全力疾走を練習の中に取り入れている人であればさすがに心もとないかもしれないが。

PAW Picoを持つ筆者。サイズ感はご覧の通り

しかも直ちに補足しなければいけないのは、部屋で音楽と向き合うように使って、きちんとしたクオリティの音質を持っている点だ。シャオ氏の「スポーツをする方のために設計しましたと言いたいくらいです」というのは本音だと思うが、同時に音質目当てに買っても裏切られることはない。また、電車移動時に使ってもこの軽さ、コンパクトさは大きな魅力ではないだろうか。

■PAW Picoのデザインと操作系を知る

PAW Picoの概要を抑えておこう。PAW Picoは2017年4月の「春のヘッドホン祭2017」で発表された。日本発売まで5カ月近くかかったのは日本対応が入念だったからかもしれない。Sportモード時のアナウンスや一般使用時にモードボタンを押した時の「残り電力パーセント、77」といったアナウンスを女性の日本語で教えてくれるのに対応させたり、専用スマホアプリとの通信にBluetoothを使うため、総務省の技術適合証明を取るのに時間がかかったのだろう。

DSDと渋いゴールドの文字が入っている面を自分に向けて実測すると、幅45mm×奥行き41mm×厚み13mm(バッククリップをつけると45W×42H×19Dmm)、そして重量は14.4g(同じくバッククリップをつけると19.5g)。内部は基板1枚の裏表にLSIなどのパーツが装着され、パッテリーはリチウムイオンの300mA。バッテリーは特別なものではなく、容量も少なめだが使い方に技術的な特徴があり、10時間もの再生時間を可能にしている。

PAW Picoの分解図

その特徴のひとつは、DACデバイスとして消費電力が少ないTI社製のTLV320AIC3105を採用している点だ。またちょっと驚くのは、さまざまな処理とを行うDSPとして、同ブランドの最上位モデルであるPAW Goldと共通のチップ、アナログ・デバイセズ社製Blackfinを採用している点。ちなみに、DSD音源はこのBlackfinでPCMに変換されてからTIチップに入るという流れになっている。

表裏にビッシリと密度濃く部品を実装している

基本的なことを書くと、音源データのサンプリング周波数が上がるということはゼロイチの2進法、つまり電気をオン/オフする回数が増え、それは基本的には電気を食い、発熱につながっていく。

この基本に対して、DACデバイスを開発しているメーカーもLotooのような存在も効率化を進め、省電力性能を向上。長時間再生を可能にしている。また、電気を食わないことがコンパクトなボディの中でのローノイズ化にもつながっている。これは現在、この分野で求められている技術のひとつだ。それでいて、PCM 192kHz/24bit、DSD 5.6MHz まで対応させている。

次ページ外でテンポよく、内でしっかりと聴き取る

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク