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従来フラグシップ AK380との差もチェック

【レビュー】Astell&KernのフラグシップDAP「SP1000」 ー カッパー&ステンレスを比較試聴

公開日 2017/08/30 14:19 岩井 喬
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まずAK380では高域の爽やかさが好印象であるものの、音像は全般的に薄くシャープな表現となり、アタック感を主体とした軽やかな傾向となった。低域の密度も薄く、中高域が全体的に支配しているようだ。

続いてSP1000ステンレスではベースの安定感が増し、リズム隊もずしりと沈み込んでグルーヴに力強さが伴ってきた。中高域の響きも自然で音離れよく、制動性に優れた開放的なサウンドに進化。ボーカルはスマートであるが、口元のニュアンスはウェットで動きもスムーズに感じられる。音像のボディの厚みもナチュラルに描き、存分にヘッドホンもドライブしている印象を得ることができた。

ステンレスとカッパーで、明確な音質のちがいが聴き分けられた

この点はSP1000カッパーについても同様で、バランスの良い落ち着いたサウンドを味わうことができる。より流麗で潤いに満ちた伸びやかな傾向となり、モニターヘッドホンでありながらも、滑らかで弾力豊かなリスニング系統の音質を持つ。

ハイインピーダンス機だと厳しい側面もあるが、基本的にポータブル用途として持ち出せるヘッドホンの多くは問題なく駆動できるだろう。



SP1000は音質面でもAK380から大きく進化を遂げたことが一連の試聴で明確となったが、ステンレス仕様はモニター調でストイックな付帯感のない音である一方、SP1000カッパーはフラッグシップの名に恥じない解像度を実現しながら、耳あたり良く伸びやかな、バランス志向のサウンドを実現している。“ステンレス仕様ではハードすぎる”というリスナーにとって、カッパー仕様のウェルバランスな音はこの上ない極上のものとなり得るだろう。

そしてステンレス仕様のSP1000は、色づけないリアル志向の音を求めるリスナーにとって、ほかに選択肢がない孤高のハイエンドDAPといえる。この2つの個性を持つSP1000はさらなる高みを目指す方にとって理想のパフォーマンスを提供してくれる、最上の再生環境といえるだろう。

(岩井喬)

■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源
・The Cars『Heartbeat City』〜You Might Think(192kHz/24bit)
・フォリナー『プロヴォカトゥール』〜イエスタディ(192kHz/24bit)


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