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従来フラグシップ AK380との差もチェック

【レビュー】Astell&KernのフラグシップDAP「SP1000」 ー カッパー&ステンレスを比較試聴

2017/08/30 岩井 喬
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新フラグシップ「SP1000」のステンレス/カッパーを比較試聴

Astell&Kernの新たなフラッグシップDAP「A&Ultima SP1000」。そのパフォーマンスの高さ、音質の良さに多くのリスナーが驚いたことだろう。先行してステンレスボディの“Stainless Steel”(以下、ステンレス)が発売され、さらに8月に入り、もうひとつの選択肢であるカッパー(銅)ボディの“Copper”(以下、カッパー)が発売を開始。どちらを選ぶか迷っているという方もいるのではないか。

「A&ultima SP1000」Stainless Steel(左)と Copper(右)。直販サイト価格はいずれも499,980円(税込)

そこで今回はこの2つのSP1000の聴き較べを行いつつ、従来のフラッグシップ「AK380」からどのようにサウンドが進化しているのかも比較。新世代のフラッグシップDAPの実力をより深く検証してみたい。

SP1000はAK380と同く、384kHz/32bit PCMおよび11.2MHz DSDネイティブ再生に対応している。一方、AK380がAKM製DACチップ「AK4490」を左右独立で各々1基、合計2基用いるデュアル構成なのに対して、SP1000は最新世代のフラッグシップモデル「AK4497」のデュアル構成に刷新された。

SP1000は、ステンレス製ボディモデルとカッパー製ボディモデルの2種類がラインナップされているが、これもAK380のジェラルミン製ボディから大きな改善となった。この金属ボディの違いについてはAK380やそれ以前のフラッグシップ機「AK240」の限定モデルでボディ素材の違いが音質に大きな変化をもたらすことを証明しており、マニアにとっては嬉しい展開だ。なお、SP1000のステンレス仕様とカッパー仕様ではカッパー仕様の方が1gほど重くなる。

今回聴き比べた3モデル。1番左はAK380

ほかにもAK380からの進化点は多い。サイズアップに伴いアンプ部も強化されており、バランス駆動時の出力も向上した。現在のところSP1000には、AK380をはじめとするAK300シリーズで使うことができた外部アンプユニット「AK380 AMP」に該当するオプションユニットは用意されておらず、Astell&KernとしてもSP1000単体でヘッドホン駆動も可能なほどのパワーを持つと認識しているようだ。さらにデジタル部のリニューアルとの相乗効果もあり、S/Nや歪率も改善され、よりハイレートなハイレゾ音源の再現性が高まっている。

チェックのリファレンスに用いた「AK T8iE MkII」

試聴にはAstell&Kernとbeyerdynamicとのコラボモデル「AK T8iE MkII」を使用。2.5mm・4極バランス仕様ケーブルとの交換も行い、バランス駆動時のサウンドもチェックした。

まずは従来のフラグシップ「AK380」をチェック

まずはAK380のアンバランス接続を聴くと、密度よくパワフルなサウンドで、ボーカルも張りよくシャープだ。オーケストラの旋律も潤いよく、ホールトーンのふくよかさも程よい。ポップスのリズム隊は今でこそ若干切れの甘さを感じるものの、輪郭のクリアさ、シンバルなどの高域に特徴のある楽器の音色は輝きよく表現。アナログシンセも厚みよく重ねてしっとりと描く。11.2MHz音源では音像が近めに感じられるが、声の質感は肉付きよくナチュラルで、ピアノの打感も密度濃く、かっちりとした響きの硬さも両立。リヴァーブの響きも深くのびやかだ。

「SP1000」Stainless Steel(左)とAK380(右)

AK380をバランス駆動に切り替えると、音像の締まりが向上。リリースの音離れの良さ、自然な艶感も得られるようになり、アンバランス駆動よりも格段のサウンド改善を実感する。落ち着きよく爽やかな傾向で、オーケストラの音場は抜け良く丁寧に描写する。ポップスのキックドラムもずしんと沈み込み、アンバランス接続よりリッチな傾向となった。

いずれにしても基本軸はニュートラルであり、プロフェッショナルモニターを意識したサウンド作りの一端を垣間見ることができる。

「SP1000」ステンレスを聴く ー 忠実再現を極め、AK380をはるかに凌駕

次にSP1000ステンレスをチェックする、まずはアンバランス駆動だが、AK380のバランス駆動時と比べても音像の締まりがよく、丁寧でスムーズなサウンドだ。S/Nも高くリアルで追随性の良い傾向である。余韻の収束も早く、密度と制動性の高さが際立つ。ニュアンスの細やかさ、アタックの切れ味の素早さといった点も格段に進歩しており、クリアで鮮明な音を味わえる。

ホーンセクションの密度と浮き上がりの自然さも申し分なく、リアルで立体的な空間が展開。リリースの階調性も微細で、残響成分がにじみなく清々しい。

次ページSP1000とAK380を比較してわかった進化のポイント

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