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銘機の系譜から分析する

【レビュー】ディナウディオの40周年記念スピーカー「Special Forty」ー 無色透明を極めた再現性

公開日 2017/08/03 11:06 井上千岳
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トゥイーターの改良点は、ユニットの背面部分にある。振動板の背圧を抜くために特殊な形状の導通路を設け、リアチェンバーに大量の空気を送り込む。またリアチェンバー自体にも、これまで以上の吸音材を充填している。

Special Fortyのソフトドーム・トゥイーター。技術的には、新Contourからさらに進化しているという

またボイスコイルの下側にも、圧力を放出するための通気孔が開けられている。エアポケットをなくし背圧を均一化するものである。

Esotar2のカップ(底蓋)はアルミ製だが、本機ではプラスチック製となっている。この点は異なるが、エアフローという点ではこちらの方が優れているというのが開発者の見解である。これが後で利いてくる。

開発陣が“過去最高”と胸を張る新ウーファーを搭載。エアフローにも注力

ウーファーはおなじみの17cmのMPS(ケイ酸マグネシウム・ポリマー)コーンで、全くの新規設計。開発者は“過去最高のウーファー”だと言うのだが、それはともかくここでもエアフローには細かく神経を使っている。

この振動板は一体成型で、中央部はドーム状になっているが継ぎはぎしているわけではない。ボイスコイルはやはりピュアアルミで、これもディナウディオがいち早く実用化した構成である。軽量なのでボイスコイルの径を大きく取ることができ、強力なドライブ力が確保できる。

開発陣が“過去最高”と胸を張る新ウーファーを搭載。ボイスコイルやユニットを支えるバスケットのエアフローを従来から改善したという

今回の特徴は、そのボイスコイルを巻くボビンにグラスファイバーを採用したこと。これまではカプトンが多かった。そしてコイルの下側、ボビンの側面にいくつも穴が開いている。タンバリンのような形だ。軽量化ということもあるのだろうが、同時に空気の流通を図って放熱効果の拡大と背圧の低減を行ったものである。また磁気回路を支えるフレームはアルミ・ダイキャストで、エアフロー・バスケットといってやはり背面の気流を逃がす構造だ。いずれもトゥイーターと同じく、エアフローに入念な配慮を行った設計であることがわかる。

ちなみに、エンクロージャーは奥側に向かうにつれて幅が少しずつ狭くなっている

マグネットには、ネオジウムとフェライトのハイブリッド型を採用している。ハイブリッドといっても合金ではなく、2つのマグネットが2段に重なった構造である。強力なネオジウムの磁力をフェライトが柔らかく受け止めて磁界を整えるのだという。ボイスコイルがぴったりその中に収まり、振動板が止まるべき場所にぴたっと止めることができる。制動ということである。このため振動板下部のダンパーにも新たな設計が施され、制動力の強化に貢献している。

位相回転のない自然なクロスオーバーを実現

以上2つのユニットが全く新しい設計であることを述べたが、両者の再生帯域を見ると面白いことがわかる。ウーファーは上が4kHzまで、トゥイーターは下が1kHzまで、いずれも平坦に再生できるという。つまり1kHzから4kHzという広い範囲に亘って、オーバーラップしているわけである。この範囲はほぼ中域の主要な部分と言ってよく、ここが広くオーバーラップしているということはクロスオーバーが非常に楽になるということである。

実際にはウーファーとトゥイーターを2kHzでクロスオーバーさせているが、これは1kHzの2倍、4kHzの2分の1で、つまりどちらからも1オクターブというちょうどいい場所になる。カーブは6dB/octつまり1次のフィルターで、位相回転もなく自然なクロスオーバーを形成することが可能である。

端子はシングルワイヤ接続。「40 Anniversary」の文字も

背面部。背面の上方にバスレフポートを備える

ユニットの話ばかりになったが、本機ではそれがほぼ全てと言っていい。なおキャビネットの仕上げは2色。レッドとグレーのハイグロス・バーチだが、粗い木目が生きたいままでにないデザインである。

さて試聴に移ることにしたい。

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