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プリ部や独自のNFB回路を刷新

【レビュー】ラックスマンのAB級プリメイン「L-507uXII」 ー ロングセラー機のさらなる進化を探る

公開日 2017/07/24 12:55 井上千岳
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ピアノは無理な引っかかりがなく、滑らかに出てくる印象だ。押しつけがましさのない自然さが、以前よりもいっそう推進されたように感じる。きめ細かな表情やタッチの繊細な変化など、S/Nのよさが利いている。ソースの音楽の変化に合わせて、あるがままに信号を送りだしているといった風情がある。

室内楽は粘りのある古楽器特有の音色が、鮮やかに引き出される、それが単にいい音というだけではなく、4丁の楽器すべてをぐっと掴んで強力に制御しているように見える。その音色も強弱も、自在にコントロールしている。だから表現が多彩で変化に富み、彫りが深い。そしてアンサンブルの響きがいいのだ。艶やかさが潤いに満ちて、弦楽器らしい生な感覚に富んでいる。濁りのないことの証左でもある。

オーケストラも静かな鳴り方だ。音自体は起伏に富んでダイナミックだが、暴れがないのと周囲のノイズがないことでそう感じるのである。弦楽器は金管楽器の音色を鮮烈に描き出し、木管の弱音でも明瞭な輪郭が存在感を引き出す、楽器間の位置感も正確で、緻密な再現である。

ジャズは静寂な中に躍動が感じられる高品位な出方だ。ピアノは比較的端正だが、ドラムやウッドベースは深いところまでピッチが伸びにじみがない。そしてトロンボーンが張りと輝きのある音色を、縦横に響かせている。



こうして聴いてくると、今回のリファインではスピーカーを滑らかに動かすドライブ力がさらに深まっているように思われる。力任せではなく、無理のないスムーズな動きがそのまま音になった印象である。力の余裕がその支えになっていると言っていいのかもしれない。

(井上千岳)

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