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プリ部や独自のNFB回路を刷新

【レビュー】ラックスマンのAB級プリメイン「L-507uXII」 ー ロングセラー機のさらなる進化を探る

2017/07/24 井上千岳
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低インピーダンス化を徹底してドライブ力をさらに向上

出力の大きさ自体は以前と違いはないが、実質的な駆動力には変化がある。スピーカー出力は低抵抗の大型リレーをパラレルにして構成されているが、これは従来どおりだ。しかし、端子への配線をダイレクトにすることで、ここでのインピーダンスを低減している。このため出力インピーダンスが減少し、ダンピングファクターがこれまでの205から、260へと大幅に向上した。これによってスピーカーに対する制動力が高まり、同じ出力ではあってもドライブ力が増したわけである。

試聴では、モニターオーディオのGold 300と組み合わせて試聴を行った

インピーダンスという点では、前から行われてきたことではあるがビーライン・コンストラクションが見逃せない。“ビーライン”というのはミツバチの収蜜行動の経路のことで、最短距離で最適な経路を採るのだという。これになぞらえて、入力からスピーカー出力までの経路を最適最短化する構造のことをこう呼んでいる。

具体的には信号処理をリアセクションで行い、フロント側のノブ等の操作はコマンダー機能とする構成になっている。この構造はかなり以前から採用されているが、細かな部分はそれぞれのモデルによって変わるはずだから、本機でも機能や内部構造に合わせて最適化が行われていると考えていい。そしてこの点も、出力の低インピーダンス化につながっているとみることができる。

回路基板にはラウンドパターンを採用している。基板上の信号の流れをスムーズにして、わずかでもロスや歪みを排除する発想である。また内部配線には、非メッキ処理の芯線にスパイラルラップ・シールドを施した独自のOFC線を採用している。なお、順序が前後したがプリアンプ部のセレクターには、C−900fにも搭載されたセレクター・スイッチICを使用し、クロストークとセパレーションの改善を可能とした。

構造面では、ループレス・シャーシ構造を踏襲している。アース電流がシャーシに流れるのを防ぎ、アース・インピーダンスの上昇を抑える設計である。また底部には鋳鉄製レッグを装着して振動を抑制。電源ケーブルは、ラックスマン独自の標準品JPA-10000が付属している。アナログに対しては、MM/MC対応のフォノイコライザーを内蔵。またヘッドホン端子も装備する。

高S/Nかつハイスピード。音楽の躍動と静寂の対比を描き出してくれる

L-507uXIIの試聴については、モニターオーディオのフロア型スピーカーシステム「Gold 300」と組み合わせて行った。

ナチュラルで全くくせのない音調と、スピーカーのユニットをがっしりと把握する駆動力の高さが特に際立っている。音調は磨きに磨かれた印象で、S/Nが高くハイスピードでレスポンスも高低両端まで伸びている。それはこれまでの音をさらに純化し強化したものと言っていいが、大きく進化したのはそれをスピーカーに伝えて思い通りの鳴らし方をするドライブ力の強さといえるだろう。それが再現力を大幅に進化させているように感じるのだ。

次ページ変化に富んだ多彩な表現を緻密に描き出す再現性を備える

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