伝統と革新が共存する3ウェイ機

【製品批評】ヤマハの旗艦スピーカー「NS-5000」ー オーディオ的にも音楽的にも完璧な表現力

石原俊
2017年07月11日
製品批評


スピーカーシステム
YAMAHA
NS-5000
\750,000(1台・税抜)
※専用スピーカースタンド「SPS-5000」(¥75,000/1台・税抜)




長いスピーカーの歴史を持つヤマハには、「NS-10」に代表される2ウェイおよびトールボーイ型と、「NS-1000」に代表される大規模な3ウェイのフロア型という2種類の伝統がある。現時点でのフラッグシップモデル「NS-5000」(関連ニュース)は、明らかに後者を受け継ぐものだ。

1974年から1997年まで製造され、ひとつの時代を築き上げた銘機NS-1000は、当時新素材として脚光を浴びていたベリリウムを振動板に採用し、我が国のオーディオ技術の象徴でもあった。おそらくNS-5000の開発チームは、NS-1000を超えるようなスピーカーを作ろうと意気込んだのだろう。

20年近くのブランクから勘や経験を失っていた開発チームは、いわば「スピーカーを科学する」手法で開発を行った。サウンドコンセプトは「音色・音速の統一」。マルチウェイのスピーカーにおいて実現するのは至難の業だったが、彼らは東洋紡が開発したZYLON(ザイロン)という科学繊維に目をつけた。熱気球やレーシングスーツに使用されるこの繊維は、ベリリウムに近似した音速とポリプロピレンに近似した内部損失を併せ持つ。開発チームは全ドライバーの振動板を、ZYLONにモネル合金を蒸着した素材で統一することで、みごと達成したのである。

ZYLONで作られたウーファー(左)とミッドレンジ(右)

共振の防止についても新技術が開発された。従来技術の消音パイプよりも消音効果が高いという「クラインの壺」的なバックチャンバーや、ウーファー部に施された7本の補強桟、フロントバッフル裏に仕込まれた横木、さらにはサイドバッフル裏側のJ字型消音パイプなど。これらによって吸音材の使用を最小限に抑えることができた。

塗装はヤマハお家芸のピアノフィニッシュ。リアバッフルには風切音の少ないツイステッド・フレア型バスレフポート。シングルワイヤリング専用の入力端子は大型で使いやすい。

さて、そのサウンドだが、オーディオ的にはSN比が高くワイドレンジだ。解像度は非常に高く、音場は非常にクリアで、ディテールをマスキングするような要素は皆無である。

しかしながら、そこには通常スピーカーの音色に乗るはずの、木や紙や金属といった「素材の味」がない。かといって無味無臭という訳ではなく、何かしらの味はある。私はこれを、ドライバーユニットの音色と音速を揃え、共振を排除した結果前面に出てきた「3ウェイ・スピーカーの味」ではないかと思う。

ジャズを聴いてみると、基本的にはエネルギー感とクリアネスが高度に両立しているのだが、同じディスクを聴いてもこれまでとは違う感慨が得られる。ディテールの再現性があまりにも高いせいかもしれない。不思議な聴き味だ。

ボーカルはいかにも大型3ウェイ機らしいゴージャスさで、フレージングの伸びや声のハリ・コシは極上である。ただし色気を演出するようなことはない。

クラシックは完璧であった。特に素晴らしいのはダイナミクス表現で、演奏のスケール感が手に取るように分かる。これは数百万円のハイエンド機にもなかなかできないことだ。

(石原俊)

Specifications
●形式:3ウェイ・ブックシェルフ、バスレフ型 ●再生周波数:26Hz−40kHz ●許容入力:200W ●出力音圧:88dB/m/2.83V ●インピーダンス:6Ω/(最少3.5Ω)●クロスオーバー周波数:750Hz/4.5kHz ●振動板:ZYLON
●ボイスコイル:真四角銅線 ●トゥイーター:3cmフェライト非防磁●ミッドレンジ:8pフェライト非防磁 ●ウーファー:30cmフェライト非防磁 ●フィルター特性:トゥイーター=−18dB/oct、ミッドレンジ=−12dB/oc(t Low)/−6dB/oc(t High)、ウーファー=−6dB/oct
●入力:バナナプラグ対応ネジ式 ●サイズ:395W×690H×381Dmm、395W×690H×422Dmm(突起含む)●質量:35kg ●付属品:プロテクター(トゥイーター、ミッドレンジ、ウーファー用各1)、ポートプラグ ●取り扱い:(株)ヤマハミュージックジャパン



※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」162号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから