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JET+ミッドウーファーと新開発のユニットを搭載

【製品批評】ELAC「CONCENTRO」 ー エラックの未来を予感させる90周年記念スピーカー

2017/07/05 山之内 正
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製品批評


スピーカーシステム
ELAC
CONCENTRO
¥8,600,000(ペア・税抜)



エラックは創業90周年を迎え、2つの重要な記念モデルを昨年2016年のミュンヘンのイベント(HIGHEND 2016)で発表した。フラッグシップスピーカー「Concentro」とターンテーブル「Miracord 90」である。エラックがここまで規模の大きいハイエンドスピーカーを導入するのは今回が初めてということもあり、かなり思い切ったアプローチが目を引く。注目度の高さで他を引き離す存在と言っていいだろう。

写真からはサイズが分かりにくいかもしれないが、高さ約170pの大柄な筐体である。フロントに同軸型のVX‐JETとミッドウーファー、左右に25p口径のウーファー2個を背中合わせに2組搭載。いずれも本機のために新たに開発されたドライバーユニットである。

JETとミッドレンジを同軸構造としたVX-JETユニットも進化。新たにLLD(Long LinearDriver)をミッドレンジパートにも採用。振動板は新設計のアルミ・パルプ・ハイブリッドクリスタルコーンで、外径140mm / 内径70 mmと、500LINEよりさらに大型化。JETトゥイーター周りのアルミダイキャスト・バッフルフレームは、ラウンドカーブを採用し、放射特性を改善

キャビネットは曲面を巧みに組み合わせた形状で、横から見るとほぼ楕円を構成、底部はそれだけで25sに及ぶ堅固なアルミブロック製ベースに連結され、140sを超える本体を支える。あらゆる面が曲面を構成することで反射や回折を抑えるとともに、微妙なカーブと傾斜で定在波を巧みに抑えていることにも注目したい。

楕円形のキャビネットはどこにもエッジを持たず、3次元のカーブを持ったバッフルで構成。各ユニット間の周波数共振を一切排除している

天井が低めの部屋で実機を見ると、Concentroのサイズはやはり大きく、それなりの存在感がある。ただし、最近はフラグシップモデルが大型化する傾向が目立つなか、168pという本機の高さは威圧感を感じさせるほどではなく、特に正面からは側面のウーファーが見えないこともあり、スリムな印象すら受ける。一方、横から見ると奥行きが意外に深く、量感は半端ではない。角度によってここまで印象が変わるスピーカーは珍しい。

再生音の特徴も外見から受ける印象に近い。大きな音像が面で広がるかと思いきや、音の重心は意外なほど引き締まっていて、左右中央に浮かぶヴォーカルのステレオイメージはむしろコンパクトに感じるほどだ。

ウーファーを側面に配置しているのでベースが遅れたりアタックが緩むことも心配したが、テンポの速いジャズのベースラインがクリアに浮かび上がり、余計な心配であったことに気付く。

各楽器の音像を大きめにとらえたピアノトリオの録音もあえて聴いてみると、ピアノやベースは録音の意図通りに大きめのイメージだが、音の重心はアンカーで固定したように微動だにせず、特にピアノの低音は重量物で支えたような安定感がある。一方、ドラムスはシンバルの立ち上がりがシャープで定位もピンポイント、イメージの緩みや揺らぎは一切なく、ベースやピアノとの対比が鮮やかだ。

エラックはスピーカー開発で膨大な技術を蓄積してきた。JETトゥイーターはその革新となる技術だが、ConcentroはJET以外にも多くの革新的技術を導入し、確実な成果を上げている。記念モデルには既存技術の集大成という側面もあるが、本機はそこにとどまらず、今後の展開が楽しみな新しいアプローチも投入されている。今後エラックが進む方向を予感させる未来志向のフラグシップスピーカーとして注目したい。

(山之内 正)

Specifications
●形式:4ウェイ(バスレフ型)●ユニット:VX-JET×1、220mm AS-XRコーン×1、250mm ASコーン×4●能率:90dB(@2.83V/m)●周波数特性:18Hz〜50,000Hz●クロスオーバー周波数:120Hz/360Hz/2700Hz●定格インピーダンス:4Ω●推奨アンプインピーダンス:4〜8Ω●入力:400W●最大入力:600W●推奨アンプ入力:80W〜600W●バスレフポート:120mm×350mm(楕円形)×2●サイズ:460W×1680H×610Dmm●質量:140kg(本体)/25kg(ベース部)※本体とベース部は分離不可●取り扱い:(株)ユキム



※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」163号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから

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