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サウンドと機能性をさらに強化

マランツ「NR1608」レビュー。さらに高まった「リビングのメディアセンター」の実力とは?

2017/06/26 大橋伸太郎
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■躍動的で立体感豊かなサラウンド再生

試聴は音元出版の視聴室で行った。マランツはエントリーモデルから最上位機SR7010に代表される一体型、フラグシップAVプリアンプにまで一貫した音質設定がある。一言で言うと、緻密でよく解れるきめこまかい音場再生だ。パワーの裏付けがある高級機の場合、それがサラウンド再生の表現上における静と動を兼ね備えた密度感豊かなダイナミズムになる。

しかし、パワーに制約のあるエントリー機の場合、上品だが若干おとなしく感じる場合があった。今回のNR1608はイメージチェンジを図り成功した製品といえる。なぜかといえば、従来の優等生的なバランスから、鮮鋭感主体の明るく切れ込む躍動感のあるサラウンド音場に変貌を遂げたからだ。

音元出版の試聴室に設置したNR1608

国民的ヒット作「シン・ゴジラ」本作のサラウンド音声は、イレギュラーなDTS-HD Master Audio 3.1ch。NR1608でダイレクト再生してみると、フロントセクション(L、C、R)再生は面で推してくる音圧があって水平方向の広がりも豊かだ。DSPの素性に優れ、ディレクターズインテンションを忠実に再現するため映画の狙いが伝わってくる。セリフはやや帯域が足りないが、これは音声収録の仕様によるものだ。

Neural:Xでサラウンド化してみると、音場が拡張するとともに解れて空間が広々とする。その中に砲撃や着弾音、10式戦車の走行の轟音等アクション描写のSEがクリアかつ鮮明に描き込まれる。今回はハイト/トップスピーカーを使わなかったので高さ表現が物足りないが、本機のNeural:Xのアップグレード効果は高い。

次に、ドゥニ・ヴィルヌーブの『ボーダーライン』でドルビーアトモス再生を試みた。ただし今回は、トップスピーカーなしのグラウンドレベル7.1chとなる。冒頭のアジト突入シーンは、ボリューム80/100まで上げ大音量再生を試したが、爆発シーンの瞬発力に余裕さえ残し楽々こなしてみせた。本作は過激なアクション描写が多いが、本機は歪みが増すこともなく常に明瞭さを保ってくれる。センタースピーカーからセリフが聴き手に向かってビュンと飛んでくるので、英語のセリフの口跡が聞き取りやすい。これはAudyssey MultEQを搭載する本機の強みだ。

この美点は続けて再生した日本映画「駆込み女と駆出し男」(ドルビーTrueHD)の日本語セリフでも発揮された。やや中高域が勝るが、男女俳優の口跡が鮮明で片言を聞き漏らさないため、字幕がない映画でもストーリー展開をこぼさずに鑑賞できる。リビングで薄型テレビと、という商品企画が行き届いていることがわかる。

コンサートライブBDを再生してみよう。『トニー・ベネット&レディガガ チーク・トゥ・チーク ライブ』のステレオPCM24bitは中高域が勝り、やや腰高で低域の支えが物足りなく感じる。しかし、DTS-HD Master Audio 5.0chに変えるとこれが改善。中高域の突出が消え、明美だがふくらみのあるリッチでウォームな音色になった。オケからのボーカルの浮かび上がり方が立体的でセクシーで、バックからの距離感も出て楽しく聴ける。オケ、バンドの音色に色彩感と艶があり、マランツらしく美しいサウンドだ。

サラウンド効果も良好で、客席の拍手が平板にならず重層的に沸き起こる。本作は5.0chだが、これをダイレクトからNeural:Xにアップグレードするとオーディエンスの拍手が聴き手をふくよかに包み込み、ライブが行われたリンカーンセンターの客席にいるかのような体験ができる。ホームシアター=エンターテインメント性のよくわかっているアンプだ。

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